東西南北―Sing Nawang Kangin Kauh―東も西もわからない

バリ人の方角感覚はスゴイ。道をたずねても、南に行ってから西に曲がって…というふうに必ず方角で答えてくる。以前ベモ(乗り合いバス)に乗った時、運転手さんが、乗客に向かって「カウハン(西へ)!」と言うと、そこに座っていた女子中学生たちは西側へつめ、私の座るスペースを空けてくれた。また、お店で品物を選ぶ時も「その東側のもの」という風な言い方をする。

バリにいるとよく「どこへ行くの?」と声をかけられる。最初のころは律儀に行き先を答えていたのだが、どうもそれはただの挨拶代わりだということに気づいてからは、「クル・キジョ(どこ行くの)?」ときかれると、ちょっと気取って「グロダン(南へ)!」と言うことにしている。

バリ人は見知らぬ土地へ行き、方角が分からなくなると、とても不安になるそうだ。「シン・ナワン・カンギン・カウ」(東も西もわからない)日本語で言えば「右も左もわからない」というところか。バリの友人が日本に来た時も、寝る前に「どっちが北?」としきりと方角を気にしていた。頭は北か東(聖なる方角、北は山側、東は日が昇る方角)でないといけないないらしい。でも、日本では北枕といって北はよくないんだけどなー。それに、日本からだとバリは南だから、アグン山も南にあるということになるんだけど、いいのかなー?!

バリの北側の地方では、北と南が逆になるそうだ。つまり、バリの南側では:Kaja=北、Kelod=南、Kangin=東、Kauh=西。北側では:Kaja=南、Kelod=北、Kangin=東、Kauh=西。Kangin/Kauhは日が昇る/沈む方角だが、Kaja/Kelodについては、北・南という絶対的な方角を示すことばを使うより、山側/海側という風に訳したほうが分かりやすいのかもしれない。

バリで方角を確かめたい時は、各家のサンガー(家寺)の場所を確認してください。サンガーはカジョ・カンギン(山側東)の方角にあります。

アグン山