ガムラン GAMELAN

ガムランは、東南アジアの各地、特にインドネシアを中心に発達した、伝統的な打楽器の合奏音楽、またはその楽器の総称で、主な楽器は、旋律打楽器(木琴や鉄琴のように、一定の音階に基づいて調律された打楽器)です。

なかでもジャワ島中部の王宮で宮廷音楽として栄えてきたジャワ・ガムランと、バリ島で宗教音楽として栄えてきたバリ・ガムランは、20世紀以降、ヨーロッパから全世界へ広まり、さまざまな国で聴かれ、また演奏されるようになりました。

ガムランのほとんどの楽器が、叩けば音が出るという打楽器であること、また、大勢の人間が互いにコミュニケーションをとりながら音の中で遊ぶことができる音楽として、教育の素材としても注目されています。

ただ鑑賞するだけではなく、自分でやってみることのできる音楽、しかも追求すればするほど奥の深い、高い芸術性も備えた音楽なのです。

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バリ・ガムラン GAMELAN BALI

バリ人のほとんどが、バリ・ヒンドゥー教(インドのヒンドゥー教とバリにもともとある土着宗教が混ざり合ってできたもの)を篤く信仰しており、そのさまざまな儀礼、冠婚葬祭において必ずガムランが演奏されます。

バリのガムランの最少単位は2人/台です。2人で1つの旋律を作ったり、わざとピッチをずらしてある同じ音を叩くことにより、うなりが生じます。目に見える形で指揮者は存在しませんので、お互いに親密なコミュニケーションをとりながら合奏 します。

バリのガムラン奏者は、ほとんどの場合、別に職業を持っています。それぞれの村に楽団があり、日頃は公民館や自治会館のような場所に楽器が置いてあり、夜になると地域の人々が集まって練習します。

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ゴング・クビャール GONG KEBYAR

バリのガムランには新旧合わせて20種類以上もの演奏形態が存在するといわれていますが、現在バリで聴くことのできる最も一般的なガムランが、このゴング・クビャールです。

これは20世紀初めに発祥した新しい演奏形態ですが、またたく間にバリ全土に広まりました。20~30人/台で演奏する合奏音楽で、踊りをはじめさまざまな芸能の伴奏に使われます。低音部から高音部までの楽器がそろい、その振動部分に青銅や竹が用いられるため「青銅と竹のオーケストラ」などと表されます。

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グンデル・ワヤン  GENDER WAYANG

2台または4台の小編成で演奏され、ワヤン・クリ(Wayang Kulit=影絵芝居)の伴奏に使われます。この演奏形態は16世紀以前からバリに存在していたと考えられ、この楽器の音自体が神聖視されています。

ワヤンには大きく分けてワヤン・プトゥン(Wayang Peteng=夜のワヤン)とワヤン・グドッグ(Wayang Gedog=昼のワヤン)があり、クリル(kelir=スクリーン)を使わない昼のワヤンは人間ではなく神に見せるものとしてより宗教性の高いものとなります。

また、ポトン・ギギ(potong gigi=犬歯を削り動物から人間になるという意味の成人式)を始め、さまざまな儀式でその場を清める音楽として演奏されます。

お葬式のバデ(bade=輿)の上でもグンデルが演奏されます。

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バラガンジュール BALAGANJUR

お葬式をはじめ、儀礼に向かう行列で演奏される、西洋風に言えばマーチング・バンド。本来は行列の伴奏音楽ではなく、シンバルや銅鑼をにぎやかに打ち鳴らして悪霊を呼び出し供物を捧げるための音楽、或いはその逆に悪霊を追い払うための音楽とも言われていますが、近年では演奏自体を楽しむようになり、毎年コンクールなども行われています。

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ケチャ KECAK

オランダ統治(17世紀~)以前に、ボナ(Bona)という村で、サンヒャン(Sanghyang)という舞踊の伴奏として、声だけでガムランを奏でたのが始まりだと言われています。サンヒャンは、伝染病、凶作、災害等の起こった時に、その解決策を神に問うために行われる儀式舞踊です。

その演奏形態は他の村々にも広まりましたが、1930年代、ブドゥル(Bedulu)村で、当時バリに暮らしていたドイツ人画家、ヴァルター・シュピース(Walter Spies)の助言により、儀式から離れた観光芸能として、インドの古代叙事詩ラマヤナ(Ramayana)の物語を採り入れ、車座の男たちの中心で、踊り手が演技を行う舞踊劇が成立しました。現在バリで演じられるケチャのほとんどはこのラマヤナ舞踊劇です。

チャ、チャ、チャ(cak cak cak)という、猿あるいは蛙の鳴き声を真似たといわれる声からケチャと呼ばれるようになりました。