014 広島と原爆の思い出

幼い日、母のおばの家へ行くことになって、初めて乗った広島の路面電車。室内の造りが木であった印象が強く残っている。

窓を背に皆ならんで座るのだが、わたしの左となりに被爆した男性が座っていた。右の頬にはケロイドが残り、とても珍しくて顔を上げてじっと見つめたのを覚えている。恐ろしいとか気持ち悪いという印象はなかったが、気にした母が何度もわたしの顔を真正面に向けなおした。男性はわたしの顔をちらりと見て少し笑った。子どもに向けられた優しさの笑顔であった。

母が言うには、あとで男性は席を移ったそうだ。彼はどんな気持であったろうか。


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