016 誇り高き演奏

西洋のどこか、広場。霧雨がふっている。人がえりを立てて行き交うなか、どこからかヴァイオリンの音が聞こえてくる。音のする方へ歩いていくと、遠くに小柄なおじいさんがヴァイオリンを弾いているのがみえる。短い白髪で、細かいあたたかみのある織り地のスーツを着ている。ひとはほとんど無視して通り過ぎているが、たまに立ち止まって聞く人もいる。「こんな雨の中で・・・」と思いながら近づいていく。彼は無心に弾いている。そのとき気がついた。彼はぼおっと明るい光につつまれている。驚いたことにそこだけ雨がよけて降っている。なんて品のある演奏だろう。(2011.11.27)


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