ひとり言

議会の密室体質かいま見せる

 

瀬戸内タイムス より  


 合併住民投票条例案は、わずか一票差で否決された。住民投票をめぐって賛成、反対の意見は、いずれにも一理があり、議員一人ひとりがそれぞれの判断を下した結果であるから、その結果は尊重されるべきものであるだろう。
 ただし、その過程において、決して見逃すことができないことが一つあった。それは住民投票条例案の採決をめぐって無記名投票を求める動議が出されたことだ。合併のスケジュールはもちろん市民に大きな影響を与える、極めて重要な条例案の採決について、議員一人ひとりがどのような判断を下したのか、市民に分からない方法を採ろうという感覚は、とうてい理解できない。まさに、議会の密室体質の一端をかいま見せた。
 しかも、無記名投票の動議提出に当たり、合併問題はもちろん事あるごとに情報公開を求めてきた四浦順一郎議員(日本共産党)が賛成議員に加わったのには、いささか驚かされた。
 合併問題について、議員にそれぞれの考え方があるのは当然である。議員は自らの考え方に従って公開の場で堂々と意見を述べ、その意思表示が市民にも分かるようオープンな形の投票方法を採るべきではないか。自らの「情報公開」はせず、市執行部だけに情報公開を求めることができるのであろうか。
 結局、採決の結果、9対8で記名投票となったが、こちらも一票差。密室体質は議会の一部ではなく、かなりの数の議員に及んでいることを浮き彫りにしている。
 ところで、10月4日を目標に新市誕生を目ざす末岡市長にとって、住民投票条例案の否決は、まさに”薄氷の否決”といえる。一票差で否決されたものの、条例案に8人の議員が賛成した意味は重い。
 他市の合併例では、枠組みなどをめぐって町が二分し、感情的な対立が深まるという不幸なケースがしばしば見られる。光市の舵取り役である市長には、「全国の範」と自画自賛するだけではなく、両輪の一つである議会の大方の理解を得ることにも努め、できるだけ多くの賛同を得る努力を怠らないよう望みたい。