定例会

2、安全で快適な生活を支える海岸事業の推進 

 毎年のように襲う台風による甚大な被害で、今年も私達の宝である海岸が大きく壊されてしまいました。長年続いている侵食に対する対策も、いたちごっことしか言いようのない補修でしかなく、高潮対策も完璧とはいえない状況の中、本当に安心して暮らせる、本格的な長期的な対策が叫ばれています。高潮、侵食、防風林の保全育成等の事業を今後どのように考えておられるのか、2点にわたりご所見をお伺いします。

@防災対策事業の現状
 山口県の海岸高潮対策事業として、平成6年から虹ヶ浜海岸において、海浜を保全しつつ高潮対策を講ずる方法として調査が始まり、その後透水性自然海浜工法を行った事業が行われていました。それは当時、現状の景観を変えることなく、自然のままの砂浜が生かされ、しかも防災機能もあるという画期的な工法として期待されていました。
しかし、数年前に失敗に終わりこの事業は中止されてしまいました。その後、これに代わる対策といえるような事業は、現在どのように進んでいるのでしょうか。

A長期的な海岸事業計画
 安全で、美しく、いきいきした海岸を目指して昭和31年に海岸法が制定され、自然災害から海岸を防護することを目的として海岸整備が行われてきました。その後、海岸に対する意識の向上、多様な海岸利用の要請に対応するため、平成11年の一部改正では、従来の海岸の防護に加え、自然環境や利用に配慮し、調和のとれた海岸整備を進めていくこととなりました。防災機能の強化とゆとりと潤いのある海岸整備を目指して全国各地で、海岸保全の意味からも様々な取り組みが行われております。
古くからの取り組みとしてこれまでは、階段式護岸・離岸提・突堤等の工法が取られていましたが、景観の阻害等の理由で今の時代に合わないという意見も多く、現在ではそれに代わる様々な取り組みが行われています。
近年では砂浜、護岸といった複数の施設によって面的に防護する面的防護方式、人口リーフ(礁)、消波性能が高く、堆砂効果と集魚性に優れた漁礁効果を十分に発揮し、新たな沿岸域の創出が図られている有脚式離岸提を取り入れているところもあります。
従来の海岸の防護のみならず、自然環境に配慮した海浜の復元や保全、また利用面からも調和のとれた海岸保全を進め、みんなの財産として次世代へ継承するため、海岸整備に積極的に取り組んでいくことが急務であると考えます。今後どのような取り組みを考えておられるのかお聞かせ下さい。


答弁
2番目、「安全で快適な生活を支える海岸事業の推進について」の1点目、防災対策事業の現状について、お答え申し上げます。
虹ケ浜海岸の高潮対策事業は、地区住民の生命と財産を守ると共に、光市のかけがえのない白砂青松の海岸を守るため、議員仰せのように、平成年6度から山口県において透水性自然海浜工法により、平成10年度までに、約120メートルを試験工区として実施しましたが、その後この工法を中止しております。
この工法は、自然景観を損なうことのない高潮対策事業として開発されたもので、透水層により、波の遡上による高潮の低減効果が期待でき、堤防の高さを低く押さえられること、海岸浸食を防止できること、また堤防の維持は現地の海浜植物で安定が図られ、海岸の景観を保全できること、などの理由により、この工法選定したものでございます。
しかしながら、平成11年の台風18号による防災基準の見直しに伴い、想定される最大時の高潮に対して、被害を防ぐことが難しいこと、また、虹ケ浜海岸は予想以上に、この工法に馴染みにくい泥の層が多いこと、などの理由によりこの工法を中止し、再度新たに、当海岸に相応しい工法を検討し、実施しようとするものでございます。
新たな工法は、現在の海浜の景観と利用に配慮し、白砂青松の風致の維持が保たれるよう考えられたもので、昔からの海岸に見られるような、竹柵を模した防護柵などの設置により、防災対策を行う計画でございます。
いずれにいたしましても、当海岸の景観に配慮した高潮対策は、早い時期での完成が望まれておりますことから、事業主体の山口県周南港湾管理事務所と調整を図りながら、事業の促進を図って参りたいと考えております。


次に2点目、長期的な海岸事業計画について、建設部所管についてお答えいたします。
議員仰せのように、海岸背後地の多くの人命や財産を津波、高潮、波浪などの災害から守るため、昭和31年に海岸法が施行され、海岸の防護が速やかに確保されるよう、海岸線に直立堤防や消波工などを設置する整備が行われてきました。
しかしながら、台風による高潮や地震に伴う津波などの災害、海洋性レクリェーションに対する需要の増大、広域的に進む海岸の浸食、また、自然環境に対する意識の向上などの背景により、平成11年に法改正が行われております。
主な改正点は、「災害からの海岸の防護」に加えて、「海岸環境の整備と保全」、「海岸における公衆の適正な利用」が追加されるとともに、地域の意見を反映した海岸整備の計画制度が創設され、海岸保全基本計画が平成14年に山口県において策定されております。
この基本計画では、「沿岸域は地域の個性や文化を育んできていることなどから、豊かな自然、社会、生活環境等の特性を活かした、地域とともに歩む海岸保全のための海岸づくりを目指す」、と明記されております。
議員仰せのように、白砂青松の室積・虹ケ浜両海岸は、市民の日常生活の中で、安らぎと潤いを与えるかけがえのない財産であり、これらを次世代に良好な状態で維持・継承する必要があります。また、一方では高潮などから住民の生命や財産を守る施設も必要でありますことから、山口県の基本計画に沿いながら、今後海岸の保全や対策などについて、山口県及び関係所管と協議を行い、事業の推進に努めてまいりたいと考えております。

(経済部所管分)
2番の2点目の「長期的な海岸事業計画」のうち経済部所管分についてお答え申し上げます。
 室積・虹ヶ浜海岸は、「日本の白砂青松100選」「森林浴の森日本100選」「日本の渚100選」に選定されており、議員の言われますように、自然環境に配慮した海浜の復元や保全に努めていかなければならないと考えております。
 自然環境に配慮した海岸保全ということで、平成13年度に光漁港区域を中心とした海岸保全基本計画策定の調査業務を実施し、対策工法や整備手法について、水産庁の水産工学研究所の指導を受けております。
 これによりますと、工法的に3案に大別されますが、その内容で第1案は、盛土による工法で浜勾配を1:7とした自然勾配とし、海岸背後地に1.9メートルの盛土をするために用地を多く必要とし、用地買収が必要となります。第2案は、砂止め潜堤と盛砂工法であり、用地は必要としませんが、大規模な養浜を行うこととなり又、定期的な砂の補充が必要となります。第3案は、砂止め潜堤と擬木柵ならびに盛砂を併用した工法であります。用地は必要としませんが、高潮に対して擬木柵で対応するため管理が簡単ではありますが、海岸への進入路等の問題が生じてまいります。  
いずれの工法も、自然環境に配慮しますと、用地買収や大規模な養浜など課題が多くあることから、基本的には現在の景観を最大限保持し、構造物の設置は極力避け、自然海岸の持つ、優れた消波機能の有効利用を考慮した方法での整備を進めてまいりたいと考えております。長期的には侵食対策も視野に入れた取り組みを実施している先進地事例の調査や関係機関とも協議研究してまいりたいと考えております。当面は、現地の流用砂を侵食された部分に養浜し、背後地の保全に努めてまいりたいと考えておりますので、ご理解をお願いいたします。