定例会

1、光市立病院について

@新しい取り組みの効果

   今、我が国の厳しい経済環境の中、医療界は規制緩和、医療費の高騰による抑制問題、介護保険の導入などにより揺れ動いています。医療の最前線にいる方は、この動きをどのように受け止め、行動すべきか、保険制度改革に対する不透明感が拭えないことと思います。さらには、自分が受けている治療や検査、薬の内容を知りたいという声が高まってきています。「医者まかせ」の医療から「患者本位」の医療が求められ、カルテの開示問題、医療過誤裁判の増加は避けられません。このような状況のもとでは医療現場の方は、どう対処すべきかを常に考えていかなければならない時代が来ています。

   では、一体どんな医療がよい医療なのでしょうか。医療では、提供側と受ける側の間には大きな情報格差のあることが特色です。非常に専門性の高い知識と技術が必要な医療において、患者との間の情報格差をゼロにすることの不可能は承知しますが、情報格差を縮める努力は続けられねばなりません。努力を怠ってパターナリズムを維持しつづけてきた結果が、今日の医療不信を招いた一因であり、医療の一面での進歩を遅らせた原因にもなっています。これからは患者が病院の質を評価し、選ぶ時代になっています。病院の質の向上を図り、選ばれる病院となるべく今まで以上の努力が必要です。

   そういう中で、以前から市立病院の医療体制づくり等、様々な角度から質問してまいりましたが、昨年から実施しておられる新しい取り組みに対する現状をお聞かせください。

答弁:議員仰せのとおり医療を取り巻く環境は、医療制度改革の先行き不透明な面もあって、病院運営はどこも困難を極めていると言っても過言ではありません。

   こうした中にあって、当院では「市民の命と健康を守り、地域の中核病院としての使命を果たす」ことを大前提とし、当院の基本理念である「市民に選ばれる魅力ある病院づくり」を目指して鋭意努力しているところであります。

   さて、昨年から実施している新しい取り組みに対する現状でございますが、医療における患者さんとの情報格差の是正については、日常の診療行為を通じて努力をしておりますが、更に、距離を縮める必要もあることから、「心の救急箱」といった投書箱を設置、あるいは、院内で活動されているボランティアの皆さんとの意見交換会の実施といったことを通じ、ご意見、ご要望をお聞きし、また病院の考え方もお示しし、ご理解を得るとともに、可能なものは即実施し、その他は研究、検討課題として組織対応しているところであります。

   こうしたサービスの向上を目的ともののほか、最大のテーマでもある医療事故防止の観点から、院内におけるヒヤリ・ハット事例の情報を集約し、分析、対応策を実行する。
また、部門別の収支決算の分析,検討をすることにより、経営の健全化を図るなど、これらの三つのテーマに絞り、昨年から若い職員を中心に、ワーキンググループを組織化し取り組んでいるところであります。発足から1年も経過していないこともあって、枠組みが終わった程度であり、現状フイ‐ドバックに努力中で、効果の程が計算できるまでに至って降りません。ご理解を賜りたいと存じます。

A緩和医療の取り組み

   「パリアティブ・ケア(緩和的医療)」とは、治癒を目的とした治療に反応しなくなった患者様に対して行われる、積極的で全体的な医療・看護です。痛みや痛み以外の諸症状のコントロール、心理的苦痛の除去を目的として、医師、看護婦、薬剤師、カウンセラーが協同してカンファレンスを行いながらケアするものです。これから非常に注目される問題だと思いますが、光市立病院でも緩和的医療について勉強会等、様々な分野で検討しているとお聞きしましたが、詳しくお聞かせください。

答弁:最近、わが国では緩和医療への関心が特に高まってきています。その理由として、医療情報の普及、高齢化社会の進展、脳死、臓器移植議論等の影響も少なからず作用しているのではないかといわれています。死の看取りは1960年代までは特別な注目を集めることはありませんでした。しかし、近年のガンの増加をはじめとする疾病構造の変化、生命維持技術の進歩に伴って、痛みを伴う末期状態や治る見込みのない植物状態における末期医療のあり方に関する問題が起こっております。

  また、地域においても、周南地区にホスピス、緩和ケア病棟の設置を呼びかける市民運動が展開されております。こうした医療需要や状況を踏まえ、当院としても自治体病院の使命を果たすために,どうすべきかといった観点から院内の会議において研究・検討を進めているところでございます。その中では、ハードウェアの整備については、病室等の基準というものがあり、それをクリアするために多額の経費を要することや全体の病床数を変更する必要のあることから一朝一夕に解決するまでには至りませんが、現状の中で、末期患者に対する身体的・精神的な苦痛を緩和しながら、精神的面を中心に患者のケアを行い、残された人生の生活の質を重視する医療に力を注ぐということにしております。その際、当院のスタッフだけでは限界もあり、ボランティアの方々との連携下により充実したケアができないものか目下検討しているところでございます。


B医薬分業のその後
 
医療の高度化とともに機能分化が進み、現在の医療には様々な専門分野があります。それぞれの専門家がチームワークを組み、協力し合うことでよりよい医療の提供が図られています。医薬分業も、医師と薬剤師が協力して薬をより安全に使っていただくための制度です。
医薬分業のメリットとして、以前にもお話しましたが、
  1.病院側としては薬の在庫負担が軽くなる。
  2.薬の安全性から考えると、2重チェックできる。
  3.薬の待ち時間が短縮される。
デメリット
  1.患者負担が増える
  2.二度手間である
ということが上げられます。

   しかしながら、本来の医薬分業から、一部では、営利目的の医薬分業になりつつある状況を耳にすると、国がすすめている本来の意味が、なくなる恐れがあります。今、日本薬剤師会は会員のつくった門前会営薬局を、面分業の妨げになるとして自ら否定し、今後解消していく方針を決定し、更に、会営でない大型門前薬局も適正な分業を妨げるとして、法的に規制するよう厚生省に要求しています。また、すでに新規にはつくられなくなってきてるという情報もあります。

   これからの医薬分業は、患者サイドに立ったものであり、営利を目的としたものであってはならないのです。また、私は一番大切なことは、地域のまちづくりとして、地域に根付いた薬局対応であり、地域の連携を取れる医薬分業であるべきだと考えます。そうでない動きがあるのであれば、医薬分業を進めるべきではありません。健全な地域の薬局が連携を取りながらすすめていく医薬分業になることが一番望ましいのです。

   医薬分業については、病院サイドばかりでなく、受け入れる薬局サイドとの様々な障害等があろうかと思いますが、あくまでも患者さん主体の医薬分業でなければなりません。今後間違った方向へ進まないよう、厳しい対応をしてくださいますよう強く要望しておきます。