定例会

1、室積海岸について

 5月26日、光市の主催で海岸研究の第一人者である、なぎさ総合研究室長の宇多高明先生を招き、現地見学会、「なぎさ」研修会が開かれ、約200名の参加のもと、午前午後に分け延べ6時間にわたり、説明や意見交換が行われました。もちろん、私は全てに参加いたしましたが、住民の皆さんと専門の先生と同じテーブルで意見交換が出来たことは、大きな成果を得られたと大変感謝しています。
 宇多先生の豊富な知識と経験をベースとした分かりやすい話、そして何よりも先生の波と砂に対する熱意を強く感じ、今後への期待が高まりました。まず研修会の集約として、以下2点について質問していきたいと思います。

@なぎさ研修会を終えて、宇多先生の出された具体案に対する現状認識は
 「市民は、昔のようなゆるやかで段差のない砂浜を取り戻したい。そして、自然環境を残しつつ、近隣の住民の安全を確保したい。」という強い要望の実現策を求めています。
 それに対して、先生は、「過去の技術では解明できなかったが、現在では必要なデータが揃えば完璧にコンピュータで砂の移動を計算でき、技術的に自然に近い砂浜を取り戻すことが可能である。同時に侵食した場所に入れた砂は、水深4m以上の沖へ流れて行くことはなく、風向きで西ノ浜か戸仲へと横に移動するだけである。」と言われました。
 さらに、その具体案として3つの案を示されました。その中で、波の影響をうけ砂浜が自然な形になりたがっている状態の海岸線を予測し、これに平行して島田川の砂を入れ砂浜を広くするとともに、戸仲漁港の突堤を沖に延長する方法が、構造物を必要とせず一番良い方法であると示されました。
 この先生の提案に対して、どう考えておられますか、ご所見をお伺いいたします。
 また、先生からは、解決策は1年もあれば見出せるが、具体的な取り組みには、予算も必要であるし、国・県はもとより、市民や関係者の合意形成が必要であると指摘され、そのためにも市長の強い熱意と行動力に期待していると締め括られました。
 私は、地域住民の切実な願いを叶え、この貴重な白砂青松の海岸を次の世代へと引き継いでいくため、今こそ、末岡市長のリーダーシップが必要だと考えますが、末岡市長の決意と市民の皆さんへのメッセージをお聞かせ願います。

<市長答弁>
 それでは、磯部議員のお尋ねの1番目、室積海岸についてお答え申し上げます。まず、私の決意でありますが、「必ずやり遂げたい。何が何でもこの海岸を守り、地域の皆さんの安全を守り、次の世代に白砂青松のふるさとの原風景を悠久資源として、まいりたい。」これが私の決意であります。しかし、しかしであります。私ひとりでは何もできません。市はもとより、地域住民、漁業者、企業そして議会など、このまちに暮らす全ての人々の理解と協力が必要であります。財政状況が極めて厳しい中で、国・県のバックアップはもちろんのこと、専門家からの的確な指導、これらのうち、どれ一つ欠けても実現が難しい大きな課題だと考えております。
 白砂青松の室積・虹ヶ浜海岸をはじめとするすばらしい自然海岸は、先人達のたゆまぬ努力により、守り育てられたものでありまして、市民とともに育まれたかけがえの無い市民共通の財産であります。こうした自然環境を次世代に伝えていくため、本市では、平成18年3月、「自然敬愛都市宣言」を行い、自然を愛し創造していく心を育み、自然敬愛の精神を一人ひとりが心に刻み、ともに考え、ともに実施するまちづくりを行なうことといたしました。
 お尋ねの室積海岸につきましても、常日頃から清掃や草刈などの環境美化活動、さらには、末の植栽など、地域住民の皆さんのご協力により守り育ててきたものでありますが、海岸の浸食という自然の猛威にさらされ、背後地に暮らす方々の不安は、計り知れないものがあります。このため、本市では、自然環境を守りながら侵食を抑えていくため、長年にわたって養浜事業をおこなってきたところであります。
 しかしながら、近年、侵食被害は拡大を続けていたことから、この度、抜本的対策を検討するため、新たな取り組みに着手することといたしました。
 その第一弾といたしまして、議員からご紹介いただきましたように、5月26日に海岸工学では日本の第一人者であります、財団法人土木研究センターなぎさ総合研究室の宇多高明先生を講師としてお招きし、室積海岸の現地見学会と室積公民館において「なぎさ」研修会を開催したところであります。
 この研修会は、室積海岸の現状、なぎさのしくみ・砂が動くメカニズムを理解していただきますとともに、一人でも多くの皆様がともに考え、解決策を見出すために開催いたしたものであります。
 当日は、現地見学会、研修会とも約200人という、多くの市民の皆様や議員の皆様にご出席をいただき、宇田先生のこれまでの豊富なご経験と高いご見識から、熱意をもったわかりやすい説明により、「なぎさのしくみ」を学習することができ、また市民の皆様の室積海岸に対する熱い思いを感じたところでございますし、解決への大きな糸口がつかめたものと考えております。
 改めまして、講師としてお招きした宇田先生をはじめ、参加されました皆様方に対しまして、この場をお借りし、心よりお礼を申し上げます。
 先生からは、具体的な対策案として、まず第1案として、養浜によるサンドリサイクル案、第2案として、突堤を設置し、あわせて養浜を行なう案、第3案として、安定汀線に平行に養浜を行なう案の3つが紹介されましたが、これらの案の中で、第3案である、構築物を必要としない自然な汀線に戻し保全する工法が、最もこの光市に適合したものであると提言されたところであります。
 私といたしましても、自然海浜を守るためには、第3案が最良ではなかろうかと感じたところでありますが、今後の具体的調査の状況や、市民や関係者の意見等を伺いながら、市民の皆様のご賛同を得て判断してまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、冒頭にも申し上げましたが、この対策を進めるにあたっては、地域の皆様の合意をいただくことはもちろんのこと、国・県、さらには、専門機関との連携のもと、時を逸することなく関係者の合意や財源問題など、一つひとつの課題を解決しながら取り組んでまいる所存であります。
 このかけがえのない自然海浜を守りながら、一日も早い室積海岸の侵食対策の解決に向けて、不断の努力を傾注してまいる所存であります。
 以上、私からは、室積海岸の保全に対する想いと決意を申し述べさせていただきました。
 なお、詳細に付きましては、担当参与より回答させますが、議員各位をはじめ、市民の皆様方にも、これまで以上のご支援とご協力をいただきますよう重ねてお願い申し上げ、私のお答えといたします。


A今年度の調査・研究と今後の計画案について
 今年度3517万4千円の室積海岸保全の予算があげられていますが、研修会の成果を参考に、残された今年度の調査・研究についてはどう進めていかれるのでしょうか。さらに、次年度以降の計画案等もあわせて、具体的な方向をお示し下さい。

<答弁>
 それでは、ご質問の1番目の2点目、今年度の調査・研究と今後の計画案についてお答えを申し上げます。
 5月26日の室積海岸の現地見学会と「なぎさ」研修会では、ただ今、市長がお答えいたしましたように、海岸工学の第一人者である宇多高明先生を講師としてお迎えし、多くの市民や関係者の皆様の参加のもと活発な意見交換が行われるなど、市としても大きな成果があったと考えております。
かけがえのない財産であります、白砂青松の室積海岸の保全対策につきまして、市民をはじめとする参加者の関心や期待が、いかに高いかを示したもので、宇多先生をはじめ、参加されました皆様方に対しまして、厚くお礼を申し上げます。
 さて、議員お尋ねの今年度の室積海岸の調査・研究でございますが、市としましては、これまで実施してきました業務委託等の測量成果や写真、波浪観測や漁港及び海岸の利用状況など、資料の収集整理を行うとともに、室積海岸の整備予定区間、延長800mの測量調査設計業務と整備予定区間外の延長1,900mを加えた総延長2,700mの深浅測量及び必要箇所の底質調査を行い、自然条件特性の把握や汀線の位置確認等により対策案を検討整理するといった業務を、事業費2千6百万円で行なうこととしております。
 業務の実施にあたりましては、今回の研修での提案を踏まえ、地元はもとより国・県とも十分に協議をしてまいりたいと考えております。
 なお、委託先については、構造物を必要としない海岸整備計画をスムーズに進めるため、国の専門機関も含め、光市の考え方に最も適合するところを現在検討しているところでございます。
 また、侵食を受けた延長650mの松原地区につきましては、事業費9百万円で、海開きまでに、専門家の指導のもと、戸仲地区に堆積している砂2,500m3を投入し保全することとしております。
 施工方法につきましては、砂の勾配を一部緩くするなど、砂流出の影響が少なくなる工夫もしてみたいと考えております。
 次に、次年度以降の計画案を含めた具体的な方向につきましては、今年度の測量調査業務の中で、計画案の方向性が示されるものと考えておりますが、事業の早期実現に向け、委員会や協議会等の設置も検討するなど、地域の関係者の方々との十分な協議を行ってまいりたいと考えております。
 いずれにいたしましても、室積海岸の美しい自然環境と景観を保全しつつ、経済的で効果的な整備手法の確立に向けて、市民の皆様や関係機関との協議・調整を図りながら事業の推進にあたりたいと考えておりますので、ご理解賜りますよう宜しくお願い申し上げます。

<再質>
 砂が取られて見えている杭は、砂の流出防止には効果がないと研修会で伺ったが、今後の養浜工事のとき、どうしていくのか。さらに、配管がむき出しになっている状況も、景観の視点から改善していただきたい。

<答弁>
 今回の養浜工事は、宇田先生の助言により砂の勾配を緩やかにしていく。杭はある程度の効果があることから、そのままにした状態で工事に入り、配管等は、景観に考慮したものとしていきたい。

<要望>
 今年も台風がいつ来るかわからない状況の中で、近隣住民の安全・安心を最大限に配慮し、早い取り組みをお願いしたい。もちろん、みなさんの合意で構造物をつくらず、日本一のなぎさが保全できるような宇田先生の提案が実現できることを、心から願う。