こう志会・市民クラブ
行政視察報告
平成16年7月1日〜3日
 
 
 
  
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
               長崎県三井楽町高浜ビーチ(第7回渚サミット会場)
 
長崎県大村市
 1.「おおむら夢ファーム シュシュ」
 2.シルバーパワーアップ事業
 
長崎県三井楽町
 第7回全国渚サミット
 
「おおむら夢ファーム シュシュ」について
農業法人 有限会社 シュシュ設立の目的
農業者の高齢化や減少により耕作放棄地も増える中で地域農業の活性化を図るために「おおむら夢ファームシュシュ」を建設、この施設を拠点として地域の農産物の生産、製造加工、販売のいわゆる6次産業の確立を目指すと共に、都市住民との交流を図り、地城農業の振興や農業後継者の育成に努める。
 
施設の概要
総事業費5億円
(うち2億2000万円が国庫補助金)
敷地9900u 平成10年度造成
総合交流ターミナル
・補助事業であるので日本の事業所で施行することを要求されたが、低価格(坪50万円)を実現するために、カナダ産米松使用し、建設はカナダ人技術者により施行。
・アイス工房−地元の農産物を使ったアイスクリーム、シャーベットの製造、加工、       販売
・パン工房−地粉のパンはもちろん、シュシュオリジナルの手作りのパンの製造、
      加工、販売
・体験教室−ウインナー、フラワーアレンジ、いちご大福、バター教室
*産物直売所「新鮮組」
・地元の専業農家が、今が旬の農産物(野菜、果物、花卉)、鮎、大村湾の魚、又、手作りの加工晶(お菓子類、惣菜、肉類等)が勢ぞろいの生産者の顔が見える直売所
ぶどう畑のれすとらん
ガラス温室の中に、ぶどうが、たわわに実る下で食事が出来る地元の農産物を食材とした郷土料理のれすとらん、特に地元産の和牛、豚肉のバーベキューはシュシュならではのこだわり
*収穫体験施設 (いちご狩り)
12月下旬より5月下旬まで対応
 
平成10年11年度地域農業基盤確立農業構造改善事業活用
 
*構成員
・地域専業農家 8戸
うち 1名が代表取締役(常勤)
   1名が専務取締役(週2回出勤)
   6名は取締役  (役員会のみ出席)
 
シュシュのあゆみ
昭和40年代初め 農業の近代化で機械化が浸透し始める
昭和40年代 野菜施設のビニール栽培、カーネーションガラス温室栽培、巨峰栽培、
       イチゴハウス栽培、観光ぶどう園等開始
昭和49年   矢上牟田(皆同町)の水田基盤整備、立福寺カーネーション団地できる
昭和50年代   水田基盤整備開始
昭和60年代   観光農業振興会、無人市発足
平成7年     農業農村活性化協議会(農協内組織)発足
平成8年     直売所「新鮮組」開始
平成8年     機械利用組合、無人ヘリコプター防除開始
平成9年     加工施設「旧シュシュ」オープン
平成10年     有限会社「かりんとう」設立
平成12年4月1日 農業交流拠点施設「おおむら夢ファームシュシュ」オープン
平成15年8月1日 有限会社「シュシュ」に名称変更
 
営業概要
売上高 
・直売所 2億1500万円
・レストラン・アイス・パン等 2億8000万円
・人件費比率 約25%
イベント 
結婚式年間10組程度 法事や仕出しも引き受ける
レストラン
直営で料理を提供しているが、大村牛にこだわっているために採算ベースにのりにくい。また旅行社とタイアップしたいがマージンが大きく、採算ベースにのらない。
 
資本金1500万円
 
雇用人数
パート込み58名(正社員11名)
 
来店人数
・年間40万人(レジを通過した人数)
   平 日 大村市内
   祝祭日 長崎市内(80%)
・駐車場が狭いことが悩みである。来店者の長時間滞在は望まず、回転型を目指している。これが周辺の施設との共存を促進している。
 
経営陣の思い
最初の取り組み
10年後の福重地区を考えると、今行動を起こさなければ将来はない。またボランティア活動では長続きしない。さらに一人の行動はたかがしれており、地区全体での取り組みが必要且つ不可欠であり、基本的視点は収益を伴った地区おこし運動である。それには「人づくり」が中心であるべきである。
 
現況
本事業の役員としての収入は微々たるもので、専業農家としての収入で生活をしている。
 
将来への展望
現時点では、シュシュ全体の利益を構成員に還元することは考えていない。むしろ構成員の一人一人が、二次産業、三次産業の担い手として、シュシュを活用しながら利益を確保することの方が望ましい。
 
自治体との関係
・立ち上げ時の書類作成支援
・土地造成に関する補助
・お客の紹介
・おみやげの購入
・その他多くの便宜を図っている
 
感想
人づくりの重要性が身にしみた
 
 
 
シルバーパワーアップ事業(高齢者のための筋力回復トレーニング)
1.事業の目的と位置づけ
筋力は60歳を過ぎると劇的に低下し、すばやい動作もできにくくなるため、そのことが転倒事故や閉じこもりの原因となり、要介護化を進める引き金となっている。その対策として近年大きな注目を集めているのが高齢者の筋力トレーニングであり、年齢に応じた筋力トレーニングを継続することは、要介護化の予防に大きな効果があると言われている。
本事業は、介護保険の第1号被保険者を対象に、大村市体育文化センター内のトレーニングルーム及び大村市屋内プールの利用料を減免し、年齢や身体状況に応じたメニューを準備して、それにより要介護化を予防するとともに、介護予防や健康管理に対する市民の意識の向上を図ることを目的とする。
(解説)
大村市では本事業を即効性のある介護予防策として位置づけている。高齢者支援センターとの連携により、引きこもりがちな高齢者についても、出来るだけ外に出ることを奨励し、その一つの目的地としてトレーニングセンターあるいはプールを設定している。これらの「足」の確保については福祉バスの運行を視野に入れている。
2.事業効果等
本事業の実施に伴い、次に掲げる効果を期待するものとする。
(1)高齢者の要援護状態の出現率を抑える効果が期待できる。それにより・介護給付費の抑制効果、ひいては介護保険料や一般会計からの繰出金の引き下げ効果が期待できる。
(2)総合健康診査の受診率の向上を図るとともに、市民の介護予防や健康管理に対する意識を高めることができる。
(3)現段階において比較的介護保険の恩恵を受けていないとされる自立状態の第1号被保険者に対し、保険料の還元を行い、保険料納付に対する抵抗感を緩和する。
(4)トレーニングルームの利用率が低い時間帯を活用することにより・利用料の増収を図る。
(5)この事業の成果を検証することにより、将来的には、各公民館等の施設を利用した地域型の「シルバーパワーアップ事業」の展開や、第2号被保険者(40歳から64歳まで)の「パワーアップ事業」の実施等も検討するものとする。
 
3.事業の対象者
この事業の対象者は、大村市介護保険事業における第1号被保険者のうち、介護認定で自立と判定されたもの及びこれと同程度の身体状況にあると市長が認めたものとする。
ただし、事前に市(主管:健康増進課)が別途実施する総合健康診査の受診を促すものとする。
*参考
自立者12,721人(H14.9.30推計)
1日当たり20人〜30人の利用見込み。
(解説)
介護認定で要支援や介護度1等の軽度認定者について、筋力アップにより介護度を下げるような取り組みはしないのかとの問には「介護認定を受けた高齢者については、介護保険より厚い保障があるが、自立者にはそれがない。そこに自立高齢者の不満がある。そこでその不満解消の1方策として、また同時に自立者が介護認定者にならない方策のいわば一石二鳥を狙ったもの」との回答があった。
事実、事業開始から2年が経過した現在、登録者から介護認定された方はいないとのことである。
ちなみに現在の登録者数は約500名であるが、目標としては1300名くらいである。これ以上の登録者には施設等が対応できないそうである。
 
4,実施場所及び実施時期
(1)実施場所…大村市体育文化センタートレーニングルーム及び大村市屋内プール
 
(2)開始時期・96平成14年6月1日
*プールを利用した水中トレーニングは平成15年6月1日
 
5.事業実施に関する協議等
この事業を計画及び実施するに際しては、財団法人大村市振興公社と事前協議を十分に行い、事業の実施方法等について全面的な理解と協力を得ることとする。
(解説)
事業実施について、予算は50万円であるが、センター、プール利用等の負担を勘案すると年間約600万円かかる経費を一般会計から拠出は出来ない。そこで所管の教育委員会との協議を重ね、利用料の減免を実現した。教育委員会の減免に対する収入減の不満については、事業そのものが新たな収入源であり、また利用料減免によって利用率が上昇し、収入減にはならないことを納得して貰ったという。
 
6,実施方法等
(1)利用者負担
介護保険の第1号被保険者(65歳以上)で事前に登録された会員に対し、大村市体育文化センター・トレーニングルームの利用料(300円/1回)及び屋内プール利用料(400円/1回)を減免し、両施設とも利用1回につき100円とする。…(通常利用者と同じく振興公社へ支払)
また、利用登録に際して受診を促す健康総合検診の費用(1,000円程度)は利用者の負担とする。
(2)実施時間帯(トレーニングルームの開館日)
現在の施設利用状況を勘案し、事業の実施時間帯は、トレーニングルームの利用率が低い時問帯である午前12時から午後3時までを「シルバータイム」として設定するが、それ以外の時間帯の利用についても登録者の利用料は減免することとする。
 
(3)トレーニングメニュー
振興公社が委託する指導員により、新規会員のビギナーコースや家庭でできる筋力トレーニング講座等の高齢者向けメニューを実施する。
(解説)
実際のトレーニングについては、インストラクターの存在が大きいという。十分訓練を受けたインストラクターは、市民の信頼も大きく、また健康管理については市の保健婦等との連携を密にして事故の起こらないような対策も採っている。
 
(4)利用の制限
過去6ヶ月以上介護保険料を滞納している者は原則的に利用を不可とする。ただし、滞納に対する市の指導を受け、本人がそれに従った場合は利用を認めることができるものとする。
(5)登録(会員証)の有効期限
会員証の有効期間は登録開始後1年問とし、有効期間が満了した場合は会員登録(更新)申請を行うものとし、その際には、事前に総合健康診査の受診を促すものとする。
 
(6)健康相談事業等の実施
利用者の健康状態を維持管理させるため、月1回程度の嘱託医等による健康相談や講習会を開催する。
 
7,利用手続き
@会員登録申請書を高齢福祉課の窓口へ提出する。その際は総合健康診査の受診を促す。
A申請者の介護保険料納付状況を確認し、会員証を発行する。
*新規会員については、利用者説明会(シーハット登録講習会)受講後の利用開始となる。
B利用に際しては会員証を提示し、血圧・体重等を測定のうえ、コンピュータが指定する利用者の身体状態に応じたメニューに沿って筋力トレーニングを行う。
 
8.その他参考事項
※この事業は、介護保険法第175条及び大村市介護保険条例第10条の規定に基づき保健福祉事業として実施するものであり、第1号被保険者の介護保険料のみを財源としている。毎年度の年間事業費として500千円を予定しているため、第1号被保険者の保険料基準額(第3段階)を年額35円(月額3円)程度引き上げることとなるが、この事業の実施により、要支援者換算で4名以上、要介護1換算で2名以上減ることになれば、このことによる保険料の引き下げ効果が引き上げ分を上回ることとなる。
(ア)要支援・要介護者1人当たり保険料充当額(年問)126,180円〜923,508円
(イ)要支援・要介護者1人当たり一般会計繰出金充当額(年間)92,784円〜679,056円
(参考)
介護保険法
第175条市町村は、要介護被保険者を現に介護する者等(以下この条において「介護者等」という。)に対する介護方法の指導その他の介護者等の支援のために必要な事業、被保険者が要介護状態となることを予防するために必要な事業、指定居宅サービス及び指定居宅介護支援の事業並びに介護保険施設の運営その他の保険給付のために必要な事業、被保険者が利用する介護給付等対象サービス等のための費用に係る資金の貸付けその他の必要な事業を行うことができる。
 
大村市介護保険条例
第10条市は、法第18条第1号に規定する介護給付及び同条第2号に規定する予防給付のほか、介護に関する事業(介護を要する状態にある者に対する支援事業のほか、介護を要する状態にない高齢者等の社会参加のための事業等の予防的な事業を広く含むものとする。)を行うことができる。
(解説)
事業開始にあたって、本事業が介護保険法の範疇にはいるかどうか議論があったが、厚生労働省も「介護予防は制度を支える両輪。将来的には介護給付費を抑制する効果が期待できる」との見解を示している。
 
9.事業の独自性・他市の状況
現在、筋力トレーニング事業を実施しているのは、札幌市・北海道奈井江町、愛知県高浜市、大牟田市などであるが、虚弱な高齢者を対象としており、時間や期間を限定したグループ方式の実施がほとんどである。つまり、要介護度が軽い方や要介護者予備軍とも言える虚弱な高齢者に対し、「筋力リハビリ」を行って身体状況の向上を図ろうとするものである。
大村市の場合は、自立状態の高齢者を対象としており、元気なときからの介護予防を実践していくことにより、虚弱な高齢者の出現率を抑えるとともに、市民一人一人の介護予防や健康管理に対する意識を向上させることを目的としている。大村方式の場合は、他市の例と比較して即効性はないものの、将来的な事業効果としてはより大きな成果が期待できるものと考える。また、全額保険料を財源として、元気な第1号被保険者全員を対象とし、いつでも好きなときに参加できるような介護予防事業は、全国でもほとんど例がないものであり、介護保険料の使途として画期的なものであると考える。
(解説)
いわゆる「元気老人対策」の一環として本事業が計画実施された側面があるが、事実この面において、従来あった介護保険支払等に対するクレームが激減したという。やや遅れてスタートしたプール利用についても減免制度が適用され、この時は教育委員会との交渉も極めてスムースに運んだという。これはセンターでの実績があったためと、いわゆる「行政の壁」を取り払うための職員の努力の結果であると思われる。
またこの他にも、限りなく要支援に近い自立者への介護保険同様のサービスの実施、民間の温浴施設とのタイアップにより、個人・市・施設の3者がそれぞれ同等の負担で、民間施設を利用する高齢者リフレッシュ事業を計画するなど担当者の知恵の絞り方で、きめ細やかで且つ自治体への財政的負担の少ない事業を可能としている。