こう志会・市民クラブ・公明党
合同行政視察報告書

日時  平成16年2月12日(木)〜13日(金)

視  察  先

2月12日
総務省自治行政局市町村課
住基カードの可能性について
担当者 総務省自治行政局市町村課
    総務事務官 海老 敬子様

2月13日
柏市立西原小学校
情報ネットワークについて
担当者 柏市立西原小学校
    校長 大竹 鉄弥様

つくば市立竹園東小学校
地域イントラネットを使った教育について
担当者 つくば市立竹園東小学校
    校長 高根沢 英典様


1.住基カードの可能性について−総務省自治行政局市町村課



1)住民基本台帳法と住民基本台帳ネットワーク
住民基本台帳法は国及び地方公共団体の行政の合理化に資するために、市町村において住民に関する記録を正確かつ統一的に行う住民基本台帳の制度を定めるよう規定している。住民基本台帳に記載すべき住民に関する記録については様々あるが、そのうち、いわゆる本人確認情報(氏名、住所、生年月日、性別の基本4情報と住民票コードとこれらの変更情報)をネットワーク化したものが住民基本台帳ネットワークである。
2)住民基本台帳カード
その情報を内蔵したカードが住民基本台帳カードであり、全国どこでもネット上で本人確認の手段となる。更に写真をつけた住基カードは身分証明書としても利用できる。
現在国や地方公共団体のいては多くの事務において、住基カードは本人確認の手段として利用できる。
具体的には 住民基本台帳ネットワークシステムの端末に設置されたICカードリーダ/ライタに住民基本台帳カードを差し込み、住民の方がパスワードを打ち込むことにより、本人確認情報(4情報(氏名・生年月日・性別・住所)、住民票コード等)の検索ができ、これにより、住民基本台帳カードを持っている方が本人であることが明らかになり、行政機関への本人確認情報の提供(例えば、パスポートセンターにおいて本人確認情報を利用する場合)や、住民票の写しの広域交付の際の本人確認に使うことができる。
3)住民基本台帳カードの利点
これによって住民は役所まで行って住民票の写しの交付を受ける必要がなくなり、手数料も含めて大きな軽減になると同時に、行政においては事務の効率化が図られ、ひいては職員の削減も可能になる。
将来的に行政手続きの多くがインターネットで可能になるとすれば、その効果は計り知れない。

(参考)
住民基本台帳法
第五節 住民基本台帳カード 
(住民基本台帳カードの交付) 
第三十条の四十四  住民基本台帳に記録されている者は、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長に対し、自己に係る住民基本台帳カード(その者に係る住民票に記載された氏名及び住民票コードその他政令で定める事項が記録されたカードをいう。以下同じ。)の交付を求めることができる。 
2  住民基本台帳カードの交付を受けようとする者は、政令で定めるところにより、その交付を受けようとする旨その他総務省令で定める事項を記載した交付申請書を、その者が記録されている住民基本台帳を備える市町村の市町村長に提出しなければならない。 
3  市町村長は、前項の交付申請書の提出があつた場合には、その者に対し、政令で定めるところにより、住民基本台帳カードを交付しなければならない。 
4  住民基本台帳カードの様式その他必要な事項は、総務省令で定める。 
5  住民基本台帳カードの交付を受けている者は、住民基本台帳カードを紛失したときは、直ちに、その旨を当該住民基本台帳カードを交付した市町村長に届け出なければならない。 
6  住民基本台帳カードの交付を受けている者は、転出をする場合その他の政令で定める場合には、政令で定めるところにより、当該住民基本台帳カードを、当該住民基本台帳カードを交付した市町村長に返納しなければならない。 
7  前各項に定めるもののほか、住民基本台帳カードの再交付を受けようとする場合及び第二項の交付申請書に記載した事項につき異動があつた場合における手続に関する事項その他住民基本台帳カードに関し必要な事項は、政令で定める。 
8  市町村長その他の市町村の執行機関は、住民基本台帳カードを、条例の定めるところにより、条例に規定する目的のために利用することができる。 

4)住基ネットの独自利用について
(住民基本台帳法30条44の8項)
 市町村長その他の市町村の執行機関は、住民基本台帳カードを、条例の定めるところにより、条例に規定する目的のために利用することができる。 
@ICカード標準システムについて
住基カードには全国の市町村において利用ニーズが高く、共通的に利用することが容易なサービスを標準的なソフトとして、簡単なチューニングで利用できるよう設定している。
6つのサービスを紹介する。
・証明書書自動交付サービス
・申請書自動作成サービス
・成人保健サービス
・救急活動支援サービス
・避難者情報サービス
・公共施設サービス

A岩手県水沢市の住基カードの独自利用
水沢市では、標準システムの他、
・図書予約サービス
・水沢病院再来予約サービス
・スポーツ施設等予約サービス
を実施している。

水沢市住民基本台帳カード利用条例
http://www.city.mizusawa.iwate.jp/htm/soshiki/soumu/reiki/honbun/ac10507371.html
取得日 2004/02/20 09:23:00
○水沢市住民基本台帳カード利用条例
平成15年6月30日
条例第12号
(趣旨)
第1条 この条例は、住民基本台帳法(昭和42年法律第81号。以下「法」という。)第30条の44第1項の規定に基づき交付された住民基本台帳カード(以下「住民基本台帳カード」という。)の利用を通じて住民サービスの向上を図るため、法第30条の44第8項の規定に基づき住民基本台帳カードの利用目的、利用手続等について、必要な事項を定めるものとする。
(利用目的)
第2条 法第30条の44第8項の規定に基づき条例に規定する目的は、別表に定めるサービス(以下「複合型サービス」という。)を住民に提供することとする。
2 市長は、市長、教育委員会、選挙管理委員会、農業委員会及び水道事業の管理者の権限を行う市長(以下「市長等」という。)以外の者が複合型サービスを提供する場合は、そのサービスを提供する者と利用手続、個人情報の保護等について、協定を締結しなければならない。
(利用手続)
第3条 住民基本台帳カードの交付を受けている者は、複合型サービスを利用しようとする場合には、規則で定めるところにより、市長に当該住民基本台帳カードを提出して、複合型サービスの利用申請を行わなければならない。
2 市長は、前項に規定する申請があった場合には、規則で定めるところにより、その者の住民基本台帳カードに複合型サービスを利用するために必要な機能及び情報を記録しなければならない。
3 前2項に定めるもののほか、住民基本台帳カードを利用して複合型サービスを受ける場合における手続に関する事項は、規則で定める。
(個人情報の保護)
第4条 市長等及び第2条第2項の規定に基づき協定を締結した者は、複合型サービスを提供するために住民基本台帳カードに記録された個人情報及び複合型サービスを提供するシステムにおいて保有する個人情報の漏えい、滅失及びき損の防止その他当該個人情報の適切な管理のために必要な措置を講じなければならない。
附 則
この条例は、平成15年8月25日から施行する。

別表(第2条関係) 

サービス項目
サービス内容
印鑑登録証明書交付サービス
申請書により印鑑登録証明書の交付を受けること。
証明書等自動交付サービス,
自動交付機(水沢市自動交付機の設置に関する規則(平成12年水沢市規則第18号)第1条に規定する自動交付機をいう。)を利用して住民票の一部の写し及び印鑑登録証明書の交付を受けること。
申請書等自動作成サービス
インターネット等を利用して申請書等を自動的に作成すること。
成人保健サービス 
インターネット等を利用して検診結果の照会等を行うこと。
救急支援サービス
救急医療サービス等を受けるために、住民基本台帳カードに登録した情報を提供すること。
公共施設予約サービス
インターネット等を利用して公共施設の予約等を行うこと。
図書検索予約サービス
インターネット等を利用して水沢市立図書館の図書の予約等を行うこと。
水沢病院再来予約サービス
インターネット等を利用して水沢市国民健康保険総合水沢病院の再来予約等を行うこと。

B富山県福光町の住基カードの独自利用
・思いでネットふくみつ
みんなの夢や作品を住基カードを利用して、福光町のホームページに残していくサービス
5)その他
@住基カードに対する特別交付税措置(平成15年度)
交付枚数×1000円

A導入に要する経費又は既存システム改修に要する経費の1/2を助成(3000万円を限度)


2.地域イントラネットを使った教育について つくば市竹園東小学校



1)視察の目的
つくば市教育委員会の「学びを変えるネットワーク 学校の枠を越えた学校間共同学習プロジェクト」が「第4回インターネット活用教育実践コンクール」で内閣総理大臣賞を受賞した。
光市は地域イントラネットが完備し、学校を含む公共施設においてはIT環境は全国的にもトップレベルにあると思っているが、その利用については「道未だ遠し」の感がある。つくば市の取り組みを参考にしたい。
2)つくば市の教育目標
つくば市の学校教育の目標は「明るく楽しい学校」である。そして現代の子どもたちの「生きる力」について具体的に@情報活用力Aコミュニケーション力B社会性C主体性D感性と規定して、学校教育においてそれらを涵養するために「確かな学力」を確保すると同時に4つの教育について子どもたちを支援する。すなわち@学校IT教育A国際理解教育B特別支援教育C心の教育である。
このようにつくば市ではIT教育を学校教育の大きな柱の一つとして捉えている。
3)「学びを変えるネットワーク」について
つくば市には53の小中学校があるが、生徒数が20人に満たない学校から800人の児童を有する小学校までその規模はまちまちである。
総合学習の時間が導入されて、広範囲な調査が必要な学習もあり、他校との協力がよりよい学習効果をもたらし、一方では教師の連携が専門的知識を共有することになる。
そこで市内の学校をグループウエアで結び、1000名の教師と18000人の児童生徒が気軽にコミュニケーションをとれる環境を整備することにより、従来の「学校」という枠にとらわれない広がりを持ち、かつお互いが刺激しあう「新しい学び方」を目指した。

4)子どもが変わる 先生が変わる 学校が変わる
この3つはつくば市の学校IT教育推進プログラムの「キーワード」であるが、「子どもが変わる」は、学校の枠という「内」からそれを越えた「外」へ主体的に働きかけることにより「学び方が変わる」であり、「先生が変わる」は子どもの個性を生かした一人一人の学びのサポート役となることで「教え方を変える」であり、「学校が変わる」は学校という枠を取り払い、様々な人と協力し合って、研究を進めていくことで、「学校の枠が変わる」であると考えられる。
5)IT教育戦術
上記のような戦略を持つつくば市の学校IT教育にはいくつかの優れた戦術がある。
@教育用グループウエア「スタディノート」
まとめる機能−これは例えば、外に出て調査活動をして、その結果をまずまとめる
発表機能−自分の研究を発表する、あるいは他の人の研究を参考にする共同掲示板、これはすべての生徒、先生が参加できる。
Aプレゼンテーション
グループウエアでまとめた成果をプロジェクターを利用して発表する。
BTV会議システム
研究の成果を他の学校と話し合うためのTV会議システム。実際に見学したがなかなか面白い
CCAI(computer assisted instruction)の活用
知識の完全習得学習を目指して作られたCAIを利用することで学力の基礎の定着を図る。一人一人の児童のつまずきに応じて学習コースが分岐する。
D校長研修
IT教育のリーダーシップを校長に期待する。
E学校IT教育推進委員会の設置
全国トップクラスのIT活用の研究
F人材バンク
市内の教師が人材バンクに登録し、メールやテレビ会議で質問に答える。





3.情報ネットワークについて−柏市立西原小学校



1)柏市の「教育の情報化」
柏市の教育事業計画の中で主要計画の一つに「教育の情報化」がある。その目標は次の2つに集約される。
@コンピューター利用教育
授業の改善にコンピューターを利用する。コンピューターを使うための授業ではなく、授業のために道具としてコンピューターを利用する。
A情報活用能力を育てる
・情報活用の実践
子ども自身が、自分の考えをまとめるために情報を収集する。それを整理して考えをまとめる。そしてそれを他の人に伝える。
・情報の科学的な理解
情報活用の実践から、帰納的に情報の概念、モデリング、シミュレーション、システムデザイン等を理解させる。
・情報社会へ参画する態度
ウェブ上でも、社会性を身につけることが最重要課題であることが明確になってきている現在、情報モラル、エチケット等を指導する。
2)NPO「柏インターネットユニオン」(KIU)
柏市の情報教育の大きな特徴はNPO「柏インターネットユニオン」(KIU)との連携である。
@KIU設立の経緯
KIUは地域インターネット運営の任意団体として、財団法人モラロジー研究所・学校法人廣池学園によって平成9年5月に設立され、柏市周辺を中心にネットワーク運用および教育支援活動を展開してきた。
主として小・中・高等学校、近隣センター、公民館、図書館等の生涯学習活動にかかわる公共性の高い組織を対象に、インターネット接続を提供するとともに、インターネット利用に関する啓発・普及、接続技術および利用技術に関する研究・開発など、コンピュータ利用環境の整備に関する支援活動を行ってきた。
これらの活動をより一層強化・充実するとともに、活動を安定化し責任のあるサービスを提供するために平成13年3月に特定非営利活動法人(NPO)の認証を千葉県より受け、現在は、財団法人モラロジー研究所・学校法人廣池学園(麗澤大学・麗澤高等学校)の支援を受けながら活動している。
AKIUの主な事業内容
・KIU接続組織に対し、安全かつ安定的なネットワーク基盤の提供
・ネットワークを利用した教育技術の開発及び普及
・生涯学習団体のインターネット活用に関する支援
・インターネットの利用に関する調査研究
・ネットワークの運用に関する技術開発
・「学校インターネットの高速接続プロジェクト」(のぞみ・やまびこ・マックスプロジェクト)における柏地域NOCを円滑な運用
・ネットデイ活動により校内LAN整備の支援
・リースバックなどのPCを再生し、教育機関での再利用のお手伝い

B学校教育部会
KIUの組織の中の学校教育部会が学校教育には最も関係が深い。
学校教育部会は、柏インターネットユニオンによるネットワークの基盤整備、運用の上で、学校教育活動におけるインターネット利用の推進に寄与することを目的としています。その活動は、柏市およびその周辺の教職員を会員とする「KIUインターネット教育研究会」(通称「カタクリ」)の運営を中心としており、現在575名(平成13年5月)がこの研究会に参加している。
KIUの活動中でユニークなのは、ネットデイ活動とKIUパソコンリサイクル工房であろう。
Cネットデイ活動
ボランティアの力を借りて校内LANを整備する活動をネットデイと言い、公的に校内LAN整備を予算化できない学校でも、ネットワークを活用したいという熱意があればボランティアの協力で校内LANを構築することができる。KIUでは主に、麗澤大学の情報系ゼミの学生の協力を得てネットワーク構築工事を行っており、平成12年度は柏市内の5つの学校でネットデイを開催した。
KIUパソコンリサイクル工房
KIUではNPOであることの利点を生かして、企業・団体などより中古パソコンやレンタルバックパソコンの寄贈を受け、これを再生して学校などで利用してもらう、PC再利用プログラムを平成13年度より開始しており、麗澤大学の学生を中心にボランティアの手によって行われている。

3)デジタルコンテンツ活用システム
17000を超える教育用画像素材(デジタルコンテンツ)を教育利用に限り著作権フリーで校内ランの中で活用できるシステムである。これにより教師が素材を授業に活用できる。また教師が作成した素材もシステムの中に簡単に組み込める。

4)感想
柏市の大きな利点は、何といってもKIUの存在であろう。また麗澤大学の全面的な協力により、パソコンに強い学生がボランティアとして活動していることも大きい。ソフトウエアセンター、コンピューターカレッジが市内にあることは、こういう活動が出来る可能性があるということだ。
デジタルコンテンツは大変便利なものであるが、これを教師が利用するときには、前もっての準備が重要であり、教師がコンテンツに使われてはいけないということを教育委員会は強調されていた。これは重要な指摘で、コンピューターを使うことが目的ではなく、道具としての利用が子どもたちに大きな夢を与えてるのである。