光翔クラブ視察報告

平成13年1月23日〜25日

 堺  市 


堺市の概略

大阪府中西部,大阪湾にのぞみ,河泉丘陵に広がる市。 1889年市制。北西にゆるく傾斜する洪積台地が続き,さらに大和川の沖積平野にいたる。丘陵・台地部は先史時代から開け,大仙陵(仁徳天皇陵)をはじめ著名な古墳が多い。中心市街地の堺は南北朝時代,港都として重視され,特に 16世紀には遣明船,南蛮船の往来が盛んで,東洋のベニスといわれた。環濠都市を形成し,豪商による自治が行われ,茶道,連歌などの町人文化も栄えた。鉄砲鍛冶,包丁,緞通,醸造などの工業も盛んであった。その後一時衰えたが,明治以降,工業都市として再び発展。 1957年頃から臨海埋立て地が造成され,鉄鋼,石油化学,造船,火力発電,ガスなどの大工場が立地,阪神工業地帯の一中心地となった。大仙陵を中心とする百舌鳥(もず)古墳群(史跡)や大鳥神社,桜井神社(拝殿は国宝),南宗寺(庭園は史跡),大安寺などの古社寺,堺灯台(史跡),浜寺公園などがある。市域北西にある妙国寺のソテツは天然記念物に指定。宅地化が進み,中南部の丘陵地に泉北ニュータウンが建設され,市域をS字に泉北高速鉄道が通り,中心市街地に連絡。 JR阪和線,高速湾岸線,阪和自動車道などが通じる。

面積 136.77km2。人口 79 4318(2000)

 

調査項目−堺市行財政改革

1 堺市行財政見直しに関する基本方針(昭和61年)

  1行財政見直しの必要性

堺市ではかつて昭和48年の第一次オイルショック後財政健全化のため昭和495月「堺市財政健全化審議会」を設置し、3名の専門委員を中心に約1年5ケ月に亘って、検討を加えた結果、翌昭和5010月に「財政健全化のための方策について」答申がなされ、以後答申内容の具現化の努力がなされた。

この結果、昭和52年度において単年度収支黒字に転じ、昭和55年度には累積赤字を解消するに至ったものである。

この堺市財政健全化審議会答申は、国に先駆けて実施した行財政の見直しであり、行財政運営の指針として機能してきた意義は大きい。

ところが答申後10年を経過した59年後半は社会、経済環境の著しい変化の中とあって、国、地方を通じた厳しい財政状況の中で、堺市財政は黒字基調を維持しているとはりものの、財政構造は決して楽観を許さない状況にあった。

すなわち、昭和59年度においては、実質収支では黒字基調を維持したものの、その額は、逐次下降傾向にあり、とりわけ同年度は、単年度収支では赤字となってしまい、以後、国庫補助負担率の一律引下げによる影響、市税の伸びに多くを期待できないこと及び地方交付税の減額傾向による歳入構造の一層の悪化が懸念されるなど財政構造は楽観を許さず、経常収支比率も89.8%で、市財政の弾力的かつ健全な運営を行うための限界値といわれている75%をおおきく上回っているばかりでなく、昭和55年以降漸増傾向にあることは、財政運営上危険信号が点灯した。一方、高学歴化、生活水準の向上、余暇時間の増大等による市民の価値観の多様化、資源エネルギーの制約、環境の保全、高齢化社会の到来等により行政に対する需要は年々増大し、かつ複雑多様化してきた。

こうした背反する条件のもとで行政がその機能の維持向上辛図るために、行財政の見直しは不可欠であり、このため、答申を基本としながらその後の社会、経済情勢の変化を考慮し、思い切った無駄の排除と財政運営の健全性をさまたげる要因を取り除き、立ち遅れている都市基盤の整備をはじめ、地域経済の振興、社会資本の充実によって地域社会の活性化及び住民福祉の向上を図らねばならない。

こうした背景の元、見直し作業に入った。

  2見直しの視点

答申を実施に移してきた過程及び答申後現在にいたる間の高齢化、情報化、国際化といったこれまでに経験したことのない社会、経済環境の著しい変化に機敏に対応しうるためには、基本的に次の2点が重要である。

(1)市財政を取巻く厳しい環境は、わが国経済の低成長の持続が予想される状況下でなお一層厳しくなるという想定のもとに、民間企業における経営努力を参考として、社会、経済情勢に適応して、最小の経費で最大の効果を挙げることに、よりいっそう努め、財政構造硬直化の現状からの脱却が今後の行政執行の前提として不可欠であること。

()価値観の多様化、社会の複雑化の中で21世紀へ向けての新しい行政需要に対応しうる柔軟性、機敏性とともに、情勢の変化によって適合しなくなった古いものをスクラップしていく機能が大切であるほか、各種施策を総合的に調整していくシステムが求められていること。

この様な基本的かつ客観的な問題点を踏まえて、状況の変化に適応せしめるための行財政の見直しを行うにあたってのチェックポイントとして次の諸点を考慮する。

(1)行政の機能がガバナーとしてのそれから、オーガナイザーとしてのそれに変貌している客観情勢を踏まえ、地域社会をより住みよいものとするために、公共と民間(個人及び団体)のそれぞれが果たすべき役割を明らかにすること。

このことによって、行政の守備範囲が明確化されるとともに、公共と民間の協同、協調の推進(第三セクターを含む。)が可能となるばかりでなく、公的分野での民間活力の導入にも通じることとなる。

(2)さらに、公的分野における国・府・市間の適切な機能分担によって国・府による過度の関与の是正が図られ、画一から多様へという社会的背景に対応するという地方自治の特性を生かすことができる。

(3)多様化する行政需要に対応していくためには、議会制民主主義を基調としながら市民の知恵とエネルギーを結集するための市民参加システムの確立が重要である。

(4)厳しい財政環境と資源エネルギーの制約のもとにあって、最小の経費で最大の効果をあげることは何よりも大切で、人件費を含めたあらゆる事務・事業費の効率性の追求が必要である。以上の諸点は、これからの行政を執行していくうえにおい下不可欠なものではあるが、これらを実現していくためには、基本的に組織における庶務機能の一層の充実と職員の意識の改革が前提として必要である。

 

  3各論

こういった基本的な考え方の元に、各論を展開している。

各論は次のような構成になっている。

  1これからの行政のあり方

(1)民間と公共の役割分担

@基本的な考え方

A行政サービスの供給形態の新しい視点

B新しい行政サービスの供給形態としての事務事業の外部委託

C外部委託に当たっての契約事務をめぐる問題

D公共事業への民間活力導入の新しい手法への対応

E国と地方との機能分担について

(2)市民参加の促進

(3)新しい行政課題への対応のために

(4)経費の効率化

@事務事業費の効率化

A補助金の整理について

B財務管理の適正化

(5)その他の事務事業の見直し

@広域事業の推進

A行政指導について

B福祉施策のあり方

C国民健康保険制度について

(6)公共施設の設置及び管理運営

@将来の財政負担を考慮しての対応

A公共施設の複合化

B公共施設の管理運営

 2自主財源の確保について

(1)自主財源の拡充

@地方税制度改革の必要性

A税収の確保について

B受益者負担の適正化について

(2)依存財源

@財政節度の確立について

A地方交付税について

 3給与その他の人事管理について

(1)給与の適正化

(2)職員の定数管理

@人事管理上の問題

A職種間のアンバランスの問題

(3)任用制度

(4)職員の意識改革

 4組織管理について

(1)組織及び附属機関

@行政の総合性を図るために

A庶務機能の充実

B出張所の統廃合

C附属機関の見直し

(2)外郭団体の機能の見直し

 5事務の改善について

(1)事務の管理

(2)事務の機械化

(3)文書管理システム

@複写機及びOA機器の発達普及といった状況下での新しい文書管理システムの開発

A冊子、パンフレット等の保存体制の確立

B条例、規則と社会情勢及び事務処理の実体との間にギャップがないかどうかの見直しと要綱の標準化

 

以上のような形で各論は展開されているのであるが、注目すべきはこれからの行政のあり方として民間と公共の役割分担の重要性を次のように指摘していることである。

「公共サ一ビスの供給は、行政の基本的な責任といえるが、それは決して行政だけが担う課題ではない。都市には、いわゆる市民・企業をはじめ市民団体等多様な公共サービスの担い手があり、また行政が直接に供給するよりも、これらの担い手が供給した方が効果的な分野も少なくない。従って、担い手の特性にふさわしい公共サービスの供給形態の選択こそ、より高い質の公共サービスを供給するために大切な要件であり、この供給形態の選択を行うことが、これからの行政の担うべき役割である。」

この基本方針をまとめるに当たって、堺市行政見直し推進本部を設置し、三役、局長、公営企業の管理者を本部員に、本部に幹事会を設け、さらにその中に分科会を置き、会長に関係部次長、分科会委員に関係課長を配し、分科会では専門家がアドバイスして、方針案がまとめられた。この方針案は堺市各界の有識者で構成する堺市行財政見直し懇談会での意見を吸収していった。この方針が以後の堺市の行財政見直しの基本的な考え方となってきている。

 

2 堺市行財政見直し推進計画 平成7年

行財政見直し基本方針策定以来、給与水準の是正、職員配置の適正化、組織機構の簡素化、業務委託の推進等着実にその成果を挙げてきた。しかしながら、平成4年から5年にかけて、景気は依然として回復せず、税収の伸びは期待できない税収構造の変化が顕著になってきて、堺市の財政状況も厳しくなってきて、本格的な行財政改革の必要性が生じてきた。

そこで平成6年に行財政見直し担当職員3名が発令され、平成7年を初年度とするおおむね5年間の推進計画を策定に着手した。

内容は

T組織について

U定員管理の適正化について

V人事管理について

W事務・事業に見直しについて

X情報処理の高度化・効率化について

Y外郭団体の運営の効率化と活性化について

Z公共施設等の整備と管理運営について

[座資源の確保について

\受益者負担の適正化について

であり、9つの大項目の中に、81の中項目を各課のヒアリングの中から立てていった。

その内容は行財政見直しに関する基本方針より具体的で、総合計画の基本計画に対比されよう。

 

3 堺市行財政見直し実施計画 平成8年・9年

堺市行財政見直し推進計画を総合計画の基本計画に対比するとすれば、実施計画が必要となる。執行部はこれを内部資料として策定し、外部に出すことなく、進行管理資料として活用することとした。平成8年.9年版を策定し、現在継続実施中のものあるという。

 

4 新堺市行財政見直し実施計画 平成10年12月策定

議会も経済に低成長や、本格的に到来が間近である少子化高齢化社会、経済構造の多チャンネル化、あるいは構造自体の変化といった、これまでの自治体運営では対応できない様々な事態の到来を予測し、平成9年12月に行財政改革特別委員会を設置し、執行部とともに議論を開始した。そこで提出されたのが、前出の内部資料の堺市行財政見直し実施計画であった。そして翌年の5月まで7回の討議を経て、9月には行財政改革推進に向けての提言を市長に提出した。内容を検討してみると、原則的には平成7年の推進計画をおおむね諒としているが、注目すべきは、事務事業の整理統合、民間委託の推進、あるいは補助金の整理統合等、執行部の意図することを積極的に支援していく立場を明確にしていることである。さらに平成9年11月には自治省から地方自治・新時代に対応した地方公共団体の行政改革推進のために指針を受け、あるいはそれまでの改革の実績等も踏まえ、時代の要請に従い、改革の具体的な取り組み内容、実施時期を明確にするために、新堺市行財政見直し実施計画を策定したのである。これは平成10年度を初年度としておおむね5年間の計画であるが、平成12年度にははやくも改訂版を策定している。

 

5 堺市アウトソーシング推進計画 平成12年9月策定

新堺市行財政見直し実施計画において「数値目標の設定」を策定方針の中に明言したが、担当者の言うように、難しい面が多いとのことである。しかし事務事業の執行方法やコスト対効果の面から事業を見直すことは可能であるし、大いに効果的である。

そこで平成11年5月に制定した「堺市アウトソーシング推進要綱」に基づき「堺市アウトソーシング推進計画」をまとめた。

この計画では、行政運営の減量化、効率化に主眼目を置き、「市の職員が直接執行すべき事務」以外はすべての業務を以下の観点から検討対象とした。

@現業業務

A定型的業務

B施設の管理運営業務

C専門性の高い業務

Dその他イベントや講演会、研修会など

手法とすれば

@事務事業の民営化

A施設運営の公設民営化

B人材派遣の活用

Cボランティアの活用

DPFIの導入

等である。

 

6 光市の行財政改革との比較

さて堺市の行財改革の歴史や手法を見てきたが、翻って光市はどうであろうか。

光市は平成8年に策定した「光市行政改革大綱」に基づき簡素で効率的な行政運営に努力してきたが、光の財政の硬直化は時とともに進み、これまで以上の改革が必要であるとの認識から新たな行政改革推進のための実施計画を、平成11年3月に新たな「光市行政改革大綱」を策定している。

具体的な方策としては以下のごとくである。

 1事務事業の見直し

(1)   受益者負担の適正化

(2)   経常経費の節減と自主財源の確保

(3)   財政健全化の確保

(4)   事務処理の迅速化・効率化

(5)   執務環境の整備

(6)   条例・規則の見直し

(7)   業務委託の推進及び見直し

(8)   補助金等の整理統合

(9)   広域的事務事業の推進

 2時代に即応した組織・機構の見直し

(1)   組織・機構の見直し

(2)   審議会等の合理化・効率化

 3定員管理及び給与の適正化

(1)   適正な定員管理

(2)   給与の適正化

 4効果的な行政運営の推進と職員の能力開発

(1)   職員の能力開発の推進

 5情報化の推進による市民サービスの向上

(1)   行政の情報化の推進

(2)   住民に対する行政サービスの向上

 6公共施設の設置及び運営管理

(1)   公共施設の管理運営

 

これを見ると項目立ては堺市とほとんど変わりないが、これは平成9年の11月に自治省より行財政改革推進に関する指針が出ており、それに沿ったためであろう。また平成11年12月には新たな「行革大綱」を受ける形で「財政健全化計画」が策定されている。その双方をあわせて、堺市の「行財政見直し実施計画」と比較してみると、内容は余りにも違う。一言でいえば光市のそれは未だに、基本計画の域を出ていない。即ち具体性にやや欠ける。さらに堺市は先述した、市がやるべきもの以外は、民間の力を導入しようとする強い意志があるが、光市には感じられない。

双方の実施計画を添付しておくので参照されたい。

 

 

大口町


大口町の概要

愛知県北西部にある町。 1962年町制。町名は太田村と小口村が合体して太口村が成立,太口を大口に変更したことによる。かつては米,ムギ,養蚕を中心とした純農村であったが,南部に隣接する小牧市に名神高速道路のインターチェンジができて以来,繊維,金属,機械などの工場が進出した。住宅地化も顕著。面積 13.58km2。人口1 9027(1995)

大口町は豊かなまちである。ここ数年経常収支比率が急速に上昇しているとはいえ、79.6%(平成10年)であり、公債費比率は5%である。財政力指数は経常収支比率の上昇とともに低下してはいるが、1.09で交付税不交付団体である。人口も緩やかな上昇を続けていたのであるが、ここに来て減少に転じる気配があるという。産業大分類別就業者比率を見ると、第3次産業の割合が徐々に伸びてきてはいるが、第1次産業5%、第2次産業50.8%、第3次産業44.2%となっている。どのような時代になっても「ものを作る」場所を有していることがその町の活力になることは間違いない。「ものを作る」場所がよその国に行ってしまい「ものを消費する」場所になっていきそうなこの国は本当にだいじょうぶなのか心配である。

 

調査項目−NPO活動促進条例

1 条例制定の経緯

このような町で「住民は風、行政は帆」をキャッチフレーズに、公約の一つにNPO活動の促進を掲げた酒井現町長が1999年当選を果たした。同年9月には有志職員によるNPOの勉強会が始まり、その中で先進地視察あるいは、講演会等を通じてNPOに対する認識を深めていった。同年12月に町長からNPOに対して税制面から支援できないとの質問があり、それを踏まえ法人税、住民税の減免免除を検討しはじめたところから、条例化は著についた。そして2000年6月議会において条例は可決され、「施行規則」「NPO活動推進委員会設置規則」とあわせて施行された。

 

2 NPOについて

ところでNPOについては歴史が浅い組織形態なので、実際の活動や経理内容を見ることはなかなか難しい。

奉仕を含む公益に関する活動をしているものは次のような個人団体が考えられる。

個人ボランティア

団体ボランティア

NPO

NPO法人

社団法人

財団法人

 

NPOとボランティアの違いについては次のように書かれる場合が多い。

区分

NPO

ボランティア

組織・個人

組織

個人

収益と報酬の関係

収益を挙げるが非営利

有給スタッフを有する場合が多い

原則的に無報酬

収益を目的としない

目的との関係

評価・責任制

目的(社会的使命)達成を第一義とする(責任制)

自己実現や自己満足のための活動もある(自由性)

マネジメント

必要かつ重要(事業性)

個人としてみた場合は不要

グループの場合はNPOより比較的単純(非事業性)

収益活動の必要性

組織運営維持のため必要な場合が多い(有償性)

原則としてなし(無償性)

あっても付随的

 

しかしながら、1例を挙げると、子供の社会教育分野において、子供会やボーイスカウト、ガールスカウト、スポーツ少年団、あるいは全国的な組織は社団法人や財団法人組織となっているが、その支部はほとんどが法人格を有していないいわば団体ボランティアで目的達成を第一とし、組織維持のためにマネジメントが必要である。このようにNPOとボランティアの違いははっきりしていない。また収益とは一体何かと言った問題点も生じて来るであろう。このように未だはっきりとしていない点も多いが、NPOを有償ボランティアであると規定する人もいるように、ボランティアとは一体何かという議論を巻き起こした功績は大きい。

ボランティアは、使命達成より自己実現の方を優先しがちであるという指摘は間違いではないであろう。使命達成の最重要課題は「継続」である。そのために法人格を取得して、特定の人だけがやる活動を広く多くの人を集め、その人達に一定の対価を支払いながら、ミッションを達成していくといった、営利法人ではない、またボランティアだけではない人の生き方として第3の道を拓く可能性をNPOは秘めていることは間違いない。

 

3 条例制定の背景

さてこのようにまだその評価も定まっていないNPOについてその支援を町としては全国初めて条例化したのであろうか。先述したように町長の公約であったことが大きいが、有志で始めた勉強会で徐々にその有効性を感じたという。まず行政の役割が変化してきており、行政はサービスの主体者から、サービスを行う事業体のコーディネーターとしてその役割を変革していくべきだとの考え方がその根底に流れている。そして意識改革されつつある町民自らが「まちづくり」に参画して町を変えていく、あるいは変えていく支援者となるという「地域主権」という考え方が育ちつつあり、これを支援していくというのが町の立場であり、条例制定の背景である。

 

4 条例について

条例そのものはそんなに複雑ではない。

ポイントは第8条(助成等環境の整備)そして第9条(社会サービスにおける参入機会の提供)にある。要するにNPOが法人格を取得するまで、数年は援助をして、法人格を取得すれば町は様々な仕事をNPOに提供するという事であり、そのためには8種類の書面を添付して町にNPO登録をしなければならない。

 

5 NPO活動推進委員会

その登録に際してはNPO活動促進委員会で審査を受けなければならない。委員は7名で現にNPOで活動している人、企業経営者、大手企業のボランティアセンター勤務者、大学の先生、民生委員、子供に対するボランティア、地方紙記者であり、その会議録は会議終了後2週間以内にはほぼ全文ネット公開している。

課題は登録NPOが増加したとき、それに見合う仕事を町が与えることが出来るかということであろう。新規の仕事は優先して回すことが出来ようが、今の仕事を新規のNPOに回すということは相当の努力と勇気を要する。担当者もそこが気になるようであった。

 

 

【参考】NPO法:

1998.03.19の衆院本会議で成立 (毎日新聞)

 

 福祉やまちづくりなどに取り組む市民団体が法人格を得て活動しやすくするための「特定非営利活動促進法」(NPO法)が19日午後の衆院本会議で成立した。阪神大震災をきっかけに法制定の機運が高まり、1996年12月に議員立法で法案提出以来、市民団体との論議や各党との修正を積み重ねてようやく第一歩を踏み出す。

 法人格を得た市民団体に対する寄付金の所得控除をはじめとする優遇税制のあり方など今後の課題については同法付則で「施行日から3年以内に検討する」ことになっている。 

 


日進市


日進市の概要

愛知県名古屋市東部に接する市。 1994年市制。米作のほか野菜栽培が中心であるが農地の減少と兼業化が著しい。ゆるやかな起伏に富んだ丘陵地で,愛知用水からの上水供給もある。人口増加が著しく,宅地造成が盛ん。市内には,東郷町にまたがる愛知池(東郷ダム),御嶽山,岩崎城跡などがある。名古屋鉄道豊田線が通る。また,南東から北西に東名高速道路が通っている。

面積 34.90km2。人口67521 (2000)

 

調査項目−エコドーム

平成12年9月の一般質問(光翔クラブ 市川)の一部である。

「さてリサイクルに関して今住民の大きな要望の一つは、ゴミを家庭内にストックする期間の短縮であります。名古屋のベッドタウンとして成長を続ける日進市は、昨年11月に資源ゴミ回収ステーション「エコドーム」を完成させました。ここでは休館日の月曜以外は資源ゴミをいつでも持ち込め、平日で約300人、土日には500人が訪れるそうであります。20品目以上を受け入れている資源ゴミが、月50トンの予想をはるかに上回り、200トンにもなるそうであります。このドームにはシルバー人材センター直営の子供服やおもちゃのリサイクルショップもあり、本のリサイクルもしています。管理棟の屋根には太陽光パネルがあり、室内のミニ水族館では市内の川でとれた魚が泳いでいるそうです。

まさしく環境学習の館であり、そして市民のニーズを積極的に取り入れた館でもあります。こういう施設こそ優先度の高い事業ではないでしょうか。お考えをお聞きしておきます。」

 

1 施設の概要

実際に見学をしての感想は施設自体の発想は素晴らしく、利用者も大変多く(平日500台〜600台、休日800台〜900台、年末1000台超)、また見学者の絶えることはないそうであるが、ゴミの減量には直接役立てるには課題も多そうである。

概要は別表の通りであるが、当市は名古屋のベッドタウンとして、この数年間は毎年人口が2000人ずつ増えるという我が国においても人口の増加率トップクラスであるという特異な都市で、マンション等の建築が急増し、家庭内に滞留するゴミの解消と分別あるいはリサイクルという時代の要請に沿ったシンボル的存在としての事業である。事業費の合計は7800万円とそう大きくはなく、それに社会福祉施設等施設整備事業費補助金約4250万円、太陽光発電新エネルギー財団より209万円、太陽光発電建設1000万円は市内企業からの寄付を受け、一般財源は2340万円である。社会福祉施設等施設整備事業費補助金は介護保険関連の補助金であるが、運営をシルバー人材センターに業務委託することで、高齢者の健康増進のための基盤整備事業の補助金メニューに適合したそうである。

 

2 施設の利用状況

平成11年11月オープンして、1年が経過するが、当初は月平均約70トンを回収していたが、現在は210トンから220トンに達している。その90%が紙類、衣類であり、ビンや缶類は自治会のステーションが多いという。ここでは早くもペットボトルはもちろんのこと白トレーやその他のプラスチックを回収している。近くに中間処理業者が存在していることが大きい。このプラスチック類は中間処理して、福山市のNKKへ高炉の還元処理剤としてリサイクルされているという。

ここの施設は環境教育も視点にいてれており、視察中にノートを片手に見学をしていた中学生に行き会った。7キロワットではあるが、太陽光発電装置も設置されている。また分別に対する意識高揚策として、ゴミ減量に挑戦する家庭を「ファミリー登録」(1544世帯/24317世帯)して初級、中級、上級それぞれのメニューに挑戦し、達成した家庭には認定シールや簡単な副賞をプレゼントしているという。挑戦内容は光市がやっている環境家計簿に類似している。

 

3 今後の課題

さてエコドームがゴミ減量にどのくらい貢献しているのであろうか。担当者の言うとおり数字的には貢献しているとは言えない。これには先述した人口が増加しているという要因も大きいし、基本的には、家庭にある滞留ゴミをエコドームに移しただけであるから総量は変化がない。また利用している世帯は自治体のステーション使用に比べたらはるかに少ないであろうし、これだけではゴミ減量や分別に大きな効果があるとは思えない。本当に効果が出るのは碧南市や水俣市が取り組んでいる自治会を巻き込んだ分別収集であろう。ここのところは担当者も良く承知しており、新しい住民が増えている日進市ではそういう分別は難しいとの認識の元、将来的にはこういうドームを数カ所建設し、住民の意識を改革していくという方針である。

自治会を巻き込んだ分別を進めるにしても、そのシンボルとしての、あるいは学習機関としてこういう施設は有用であろう。