光翔クラブ行政視察報告

  平成12年1月25日〜27日

水俣市

1.市勢

水俣市は、九州の西南、熊本県の最南端に位置しており、北は芦北郡津奈木町、南は鹿児島県出水市及び大口市に隣接している。また、北西には不知火海に面した風光明媚なリアス式海岸が30qにわたり続いており、天草の島々をはるかに望む景勝の地である。全市域の75%が森林原野であるが、安山岩質が大部分で、土壌は肥沃であるという。また、東から西へ流れる水俣川は、源流から河口まで水俣市のみを流れており、その河口に広がる平坦地約4%、470haに商店・事務所、工場のほとんどが立地し、人口の約65%が居住し、市街地を形成している。

水俣市の歴史は古く、旧石器時代をはじめ、縄文・弥生・古墳時代の遺跡も数多く発見されおり、江戸時代までは、肥後と薩摩の国境として重要な役割を果たしていた。

明治2241日、市町村制の実施に伴い水俣村が誕生し、明治418月にチッソ株式会社の前身である日本窒素肥料株式会社が設立され、これを機に従来の農漁村集落から工業都市へと発展してきた。大正元年12月に水俣町となり、昭和244月には市制を施行され、水俣市となった。水俣市の人口は、明治22年の村制施行時は、12,040人であったが、チッソの発展とともに人口も増加し、昭和24年の市制施行時には、42,137人となり、さらに昭和3191日には久木野村と合併し、50,461人となり、県南の中心都市となった。

しかし、昭和31年に水俣病が公式確認され、その後基幹産業であるチッソが、折からの業界不況と石油化学工業への転換を余儀なくされたため、規模縮小、操業短縮、従業貝の配置転換など合理化が進み、人口も昭和35年には49,342人、昭和40年には45,577人、昭和50年には36,782人、昭和60年には36,520人、平成2年には34,594人、平成612月末には、33,671人と大幅に減少し、過疎化・高齢化が進み、高齢化率は、24.02%と県下11市の中で一番高くなっている。

工業製品としては・液晶材料、ファインケミカルなどの化学工業製品やIC、電器製品、合板などがあり、農産物としては・甘夏、デコポン、茶、玉ねぎなどが基幹作物となっている。

 

2.ISO14001

@ISOとはなにか

ISO14001については、会派内で知識に温度差があったので、基礎部分から説明を受けた。水俣市ISO環境マネジメントシステム(IS014001)を水俣市役所は1999(H11)223目に取得したが、そもそも【ISO環境マネジメントシステム(1SO14001)】とは何か。

T)IS0とは1947年設立のスイスに本部を置く国際標準化機構ネジやフィルム感度、品質などの分野で国際標準化であり、日本では「日本工業標準調査会(JISQ)」が加盟している

U)IS0は環境分野の国際規格の番号を14000台に振り分け(IS014000シリーズ)、そのうち14001EMS=環境マネジメントシステムである

V)環境マネジメントシステムは、環境方針に基づいて、計画(Plan)→実施及ぴ運用(Do)→点検及ぴ是正処置(Check)→トップによる見直し(Action)を繰り返し、また、責任者等の組織推進体制を明確にし、環境負荷の最少化を進めていく。

A目的

水俣市役所が率先し、環境モデル都市づくり、省エネ・二酸化炭素の削減、省資源・リサイクルなどに取り組む

BISO取得の効果

T)水俣市が世界の環境モデル都市に向け、自他共に認められる大きなステップ

U)地域イメージの向上。(2000年の環境自治体会議の開催等の活用〉

V)庁舎の電気料・用紙代の節約など、省エネ・省資源による経費の節減。

W)環境に関する職員の意識改革と具体行動の進展。

X)システムの導入により、行政の合理化、改革の進展。

Y)水俣市が環境ISOを取得することにより、市民意識の向上と具体行動への波及。

Z)市内中小企業への環境IS0取得への支援。

CISO14001取得について、特に重要なこと

環境方針に基づいて、計画(Plan)→実施及び運用(Do)→点検及び是正処置(Check)→トップによる見直し(Action)を繰り返すことにある。

それでは水俣市の市長の言う環境方針とは一体何か。特に重要な点を3つ挙げた。

◎環境モデル都市づくりを推進。

a)水俣病の教訓を胸に、水俣病(問題)に取り組み共存し、水俣湾埋立地及び周辺地区の環境再生復元を後世に伝えていく場にしていき、また大気や水質などの汚染の防止と予防に努め、野生動植物などを保護保全していく。

b)人だけでない多くの生命の基盤である海・山川の保全・回復に努め、市民共有の財産として次の世代にこれを守り継承していく。

c)環境負荷の少ない暮らしづくり、環境に配慮した産業への転換を促していく。

◎地球温硬化防止に向け省エネルギーを推進し、庁舎及び出先機関におけるエネルギーの使用を削減、さらに率先して二酸化炭索の排出を削減に協力し、地球温暖化の防止に貢献する。

◎役所で使用する資源の消費を削減し、リサイクルを推進する

 

D庁内での取り組み

平成10年  

4月 水俣市ISO環境管理システム準備委員会発足

6月 市長、市議会で「認証取得」を宣言

10月 日本環境認証機構と審査登録契約

内部環境監査委員会設置

11月 職員研修会(全職員、協力団体)

12月 初動審査

平成11年 

1月 職員研修(課長以上)

2月 本審査

平成11年2月23日 ISO14001取得

 

E経費

審査登録費 2,980,000

研修費他   937,000

 

F力点

T)省資源・省エネだけを目指すなら、ISOは必要ない。

先述したように、ISOの最も重要な点は、環境方針に基づいて、計画(Plan)→実施及び運用(Do)→点検及び是正処置(Check)→トップによる見直し(Action)を繰り返すことにある。それ故に単なる数値目標だけでなく、環境に関して具体的な計画がなければISOは必要ないという。

U)導入決定はトップダウンで、計画策定はボトムアップで。

水俣市では、各課が複数年度で達成しようとする目的を定めて、各年度ごとに目標を定めている。それはトップダウンではなく、職員の意識改革とともにボトムアップでなければ、この取り組みは無意味であるということであろう。

 

G感想

水俣市の総合計画を見ると、「環境」にその力点が置かれている。過去の不幸な問題の解決を都市づくりの一つに組み込み、市民もそれに応えているような気がする。7つの基幹プロジェクトのうち4つが、環境をテーマにしたプロジェクトである。

ISOの取り組みにおいても各課が様々なアイデアを計画のうちに取り込んでいる。多少紹介してみると、環境課は「水俣病語り部」により水俣病の教訓を伝えることを目的とし、「我が家のISO」認証普及、あるいは学校版ISO認証制度の普及にも取り組み、環境に配慮したものづくりをすすめる「環境マイスター」の認定、環境に配慮した店づくりをすすめるエコショップ認定制度にも、ユニークさを見せている。例えばエコショップ認定制度はゴミ減量女性連絡協議会を形成する16団体が、申請のあった店舗を調査して、決定するそうであり、認定後も定期的に調査を継続するようである。

ISO14001は3年間有効であるが、審査のたびに、審査費用が必要である。しかしながらISOの結果として出てくる省エネでこのくらいの費用は捻出できるようである。     

3.分別収集

  水俣市は、ゴミ処理施設として、昭和55年供用開始の岡山不燃物処理、平成2年供用開始の水俣清掃センターを持つ。清掃センター建設当時は「燃えるもの」と「燃えないもの」の2種類分別しか行っていなかった。

ところが平成4年に燃えないゴミとして収集したものの中に中身の残ったガスボンベが入っており、その爆発により施設の修理費に何千万円もの費用がかかったということであった。

この事件をきっかけに、行政、市民サイド双方にゴミの出し方についての議論が広まってきた。

その結果同年7月に役所内に「ごみ対策検討委員会」が設置された。そこでは水俣病という悲惨な体験を有する水俣市だからこそ、環境を大切にしたまちづくりが基本姿勢であると考え、何でも捨てる、何でも燃やすといった姿勢から、循環型社会、リサイクル型社会への転換を図ることが重要であるとの結論に達した。

そしてa)リサイクル社会の構築の必要性b)ゴミ問題は市民と行政が一体となって取り組む問題

c)そのためには高度な分別収集を行うべきという3点を対策委員会は市長に報告した。

平成5年3月にはモデル地区を設定し、分別収集を始めるとともに、各地区への300回に及ぶ説明会・指導で僅か半年後には全市で実施するに至ったという。

 

@分別の方法

収集は大別すると5分類

T)資源ゴミ(月1回)

ビン類(7分類)、空き缶(2分類)、ペットボトル、金属類(2分類)、紙類(3分類)、布類

U)埋め立てゴミ(月1回)

V)有害ゴミ(月1回)

W)粗大ゴミ(月1回)

W)燃やすゴミ(週2回)

 

A収集の方法

T)300カ所のステーション設置

U)収集日の前日午後3時までに収集コンテナが配られる

V)その日の夕方または翌日午前8時半までに品目ごとに、市民自ら分別しコンテナの中に入れていく。ビンや缶の中身は洗い、キャップや注ぎ口ははずすよう指導。

W)当日は6台の収集車が品目ごとに計量し、地区ごとに集計

X)収集された資源ゴミはストック・処理し業者に売却

Y)売却益は排出量に応じて地区に還元される

*ステーションは50〜100世帯に一カ所を目安

*ステーション毎にリサイクル推進委員と補助者2,3人を選出

 

B効果

T)埋め立て処分場の延命化

U)地域のコミュニティの活性化

月1回の分別作業を共同で行うことにより、近所つき合いが復活したり、高齢者や障害を持つ人たち、勤務等の都合で時間内に出せない世帯のゴミを隣近所が手伝うことで助け合いの精神や地域の融和が促進された。これを「もやい直し」というらしい。

 

C感想

「水俣」、世界にある意味で大変有名なこの町を環境の町へ変身させようという努力は、市民・行政の両サイドからなされている。

昨年は5000人を超える視察を迎え、自信にあふれた担当者は「分別収集については市民の協力があったから、思ったほど大変ではなかった。段階的に分別を増やしていくところも多いが、その方が大変ではないか」と語っていた。

清掃センターの全従業員のうち、5名が環境課に属し、全体の管理を担当し、収集は(財)水俣振興公社へ全面委託し、32名が収集作業を担当している。また叶崎環境エンジニアリングへ燃焼委託、シルバー人材センターへも委託をしている。

水俣の資源ゴミは業者の間では「水俣ブランド」と呼ばれ、高値で取り引きされるという。市民のちょっとした協力がこうした結果を生む。

水俣市は第3次総合計画を平成8年に制定しているが、その基本計画の7つのプロジェクトの中に、「リサイクルのまちづくり」があるが、施策の展開例として

☆ゴミのリサイクルシステムの確立

☆生ゴミのコンポスト化の推進

☆再生品利用の促進

☆ガレージセール等の開催

を挙げている。

この分別収集の成果が、このようなまちづくりにも反映されたに違いない。

 

 

 

宇土市

1.市勢

熊本県のほぼ中央部、熊本市の南に隣接する宇土市は、農業と工業の調和のとれた都市として、また歴史と文化のかおりただようまちとして発展してきた。

現在の人口は37,000人ほどであるが、ここ10数年間はずっと増加しており、40,000人を突破するのも数年のうちと推測されている。今後は、住環境の整備や福祉の充実などの”やさしいまちづくり”に取り組むと共に、既存産業の育成・強化や企業誘致などを重点政策として、分権型社会における中核的な役割を担う都市を目指している。

市域は東西24.km、南北7.kmと東西方向に細長く、総面積は74.17平方kmで、北に熊本市と下益城郡富合町、東に城南町、南に松橋町と宇土郡不知火町・三角町とそれぞれ隣接している。

九州を南北に縦貫する国道3号線及び、ほぼそれに沿って走るJR鹿児島本線、宇土半島を東西にのびる国道57号線及びJR三角線の分岐点にあたり、県内における交通の要衝である。

昨年の台風18号襲来により、住居全壊36世帯、半壊188世帯さらに一部損壊6600世帯に及ぶ大きな被害を出し、厚生省の「災害救助法」が適応された。 

 

2.宇土マリーナ事業

@事業目的

宇土市の西部地区は、若者の流出、高齢化が高い過疎地であり、ここの活性化の中核施設として、あるいは海洋レクレーションの拠点として、青少年の健全育成、地域の福祉に貢献する施設として建設。

 

A建設経緯

平成 2年 有明海沿岸開発プロジェクト設置

平成 3年 マリーナ建設提言

第54回国体競技開催申し入れ(ヨット)

平成 4年 海洋開発調査特別委員会設置

平成 6年 海洋開発調査特別委員会において、マリーナ建設事業承認

平成 7年 宇土マリーナ建設工事着工

平成12年 マリーナ建設事業完了

B事業概要

・水域部 3.8ha  ・陸域部 5.5ha

・ボートヤード1.2ha  ・公 園 2.6ha

・ボート収容隻数 

陸200隻

海 33隻

・駐車台数 200台

 

・建物

管理棟 1380u   443、000千円

修理庫  295u    58、500千円

艇 庫  305u    44、000千円

 

・防波堤工事 510m  1、500、000千円

 

総事業費:5、480、000千円

 

・財源構成

地域総合整備事業債 75%

熊本国体整備事業補助 25%

 

C感想

施設自体は、光市にある県施設、スポーツ交流村に比べて、宿泊施設がないのでやや物足りないが、公園を2.6ha確保してあり、様々な活用を想定している。まずは「道の駅」に指定してもらいたいようである。また給油施設を備えているので、ヨットやボートへの給油等を通じての「海の駅」構想にも興味を示している。

興味深かったのは、その運営方式である。施設そのものは、地総債と国体補助金でまかない、地総債についてはその54%が交付税措置がされるということで、一般会計からの持ち出しはそれほど大きくないという。そして運営については、地元漁協に全面委託。委託といっても補助金や委託料の支払いはいっさいないということだ。PFIの思想を一部であるが、取り入れた運営方式は参考になる。漁協は地元企業と米国の水門メーカーとの合弁会社に再委託するという。

近くには県営のマリーナがあり競合するが、経費の節減を通して、係留料を格安にし、一日も早く黒字にもっていきたいという。

またこういう施設については、漁業補償が付き物であるが、漁協が運営主体であるので、他の漁協を説得していっさいの補償をしなかったそうである。

 

久山町

1.町勢

久山町は、福岡市の東方13qに隣接し、鞍手郡に境する犬鳴連山の麓に位置する。東は若宮町、北は古賀市、新宮町に、南は篠栗町,粕屋町に隣接し、粕屋町のほぼ中央にあたる。

面積は37.43平方キロ、人口は約7600人。面積の3分の2は山林原野であり、犬鳴山系に源をなす猪野川、久原川とが水量豊に博多湾に注いでいる。

 

2.バリューセンタートリアス久山

@大型商業施設「トリアス久山」建設に至る経緯

平成7年度

下山田地権者会より、当該地区の土地利用転換について請願書が議会提出される。これを受けて議会は請願書を採択し、町長に意見書提出。

 

平成8年度

庁内に「久山町におけるプロジェクト調査研究会」を設置し、バリューセンターについて研究会を以後8回開催。商工会に「バリューセンターの誘致構想調査研究報告書」について説明。下山田地権者組合よりバリューセンター開発推進要望書を町長に提出。これを受けて久山町は国土計画利用見直し作業に着手。まず、農村活性化土地利用構想策定調査に着手し、農振用農地除外手続きを開始。トリアス現地測量を完了。

福岡市内、糟屋郡内各町と商工会に出店計画をトリアスより提出。

久山町国土利用計画審議会へ久山町第2次国土利用計画案を諮問。トリアスより大店法3条申請。

 

平成9年度

6月定例会にて久山町第2次国土利用計画案議決。トリアスより5条申請。大型商業施設の立地に関する基本協定書をトリアスと締結。農村活性化土地利用構想を県が認定。農用地除外許可。都市計画法29条による開発許可並びに農用地転用許可。造成工事着工。

 

平成10年度

建築承認。起工式。開発行為に関する工事完了公告。

 

平成11年4月23日 バリューセンタートリアスグランドオープン

 

以上の経緯を見て分かるように、久山町をその大部分が市街化調整区域に指定されており、特にセンター建設場所は農振用農地であったのその解除には苦労があったという。まさにトリアスと町が一体となっての作業であった。しかし町当局は最初から、財政負担及び人的負担はしないということをトリアス側に通告。トリアスもそれを了承したという。県も久山町の活性化のために、相当の援助をしたようだ。トリアス側地元商工会を有利な条件で出店させたり、出きる限り地元業者を利用するなど配慮をした。

結果として、大きな問題もなく、バリューセンターはオープンした。業績は順調のようだ。

センターオープンにより、固定資産税や市民税他様々な収入増が年間約3億円あるようであり、それに対しての町の直接的な投資は800万である。水道や下水道の増設分までトリアス側が負担したという。

 

A感想

とにかく大きい商業施設であるが、トリアスの社長の平山氏の個人的な資質や人脈なしにはこの施設は語れない。大型施設のない久山町と、大都会の福岡市、北九州市を背後に持ち、周りに比べて地下の低さに魅力を持ったディベロッパーの思惑が一致した結果であると感じた。かえって過疎地であるが故の開発であるように感じられた。