環境民生委員会視察報告

(作成 磯部 登志恵)


1、視察日程
平成17年10月4日(火)〜10月6日(木)まで
北海道滝川市・岩見沢市・札幌市



視察概要と感想

○北海道滝川市訪問概要
滝川市は、北海道のほぼ中央部、石狩川と空知川に挟まれた平野部に広がっている。土地はおおむね平坦で、ゆるやかな丘陵地帯となっている。人口46,858人のまちであるが、ここには子供の成長等に細かい配慮がなされているこども療育センターがある。全国的にも珍しい言語聴覚士を配置し、子供の芽を摘むことなく、しっかり成長を見守る体制がうかがえる。今回はおっぱい都市宣言のまち光市が、少しでも子育て支援策に取り入れられないかという目的で、滝川市のこども療育センターを視察地に選んだ。

○滝川市こども療育センターの内容
昭和51年、言語障害児学級に幼児ことばの教室併用開始から始まり、今に至るが、平成5年、学校法人今野学園より土地、建物の寄付を受け、同年改修工事を行い、こども療育センターとして開所の運びとなった。

*施設の目的
 子どもの発達状況に応じて、保護者や関係機関と連携を図りながら、日常生活における基本的な動作及び集団生活への適応等に関する支援を行ない、家庭や地域で健やかに育っていくことを目的とする。

*業務内容
・ことばの教室
 ことばの遅れ、発音の誤り、吃音、口蓋裂、難聴等を持つ子どもに対して、コミュニケーションに必要なことばや発達を促すように支援を行なっている。

・ひだまり指導室
 発達の弱さやつまづきのある子どもを対象に、グループや個別で支援を行なっている。遠足・七夕・そり遊び・ひな祭りなど季節ごとの行事も行なう。

・のびのび訓練室
 運動発達の遅れや脳性まひ等の肢体不自由児への支援を個別で行なう他、幼児を対象にグループで支援も行なっている。

・相談
 保護者からの日常的な相談や、来所による発達相談を行う。

*スタッフ
 所長(兼務)、保育士2名、理学療法士1名、言語聴覚士2名(嘱託1名)他

*対象
 滝川市及び雨竜町に住所を有している児童。

*施設の概要(児童デイサービス)
 設置主体:滝川市
 運営主体:滝川市
 定員:20名(トータルで75名くらいの子どもたちが通っている)
 実施地域:滝川市・雨竜町
 営業日及び時間:月曜〜金曜 8:30〜17:00まで
  (国民の祝日に関する法律に規定する休日及び、12月31日から翌年1月5日までを除く)

*運営費
 道・国からの支援も含め、年間約3500万円の運営費が当てられているが、その内市からの持ち出しが2000万円。


○統括
 こどもの発達障害に対する認識や相談は、親として決して見のがしてはいけない問題である。幼児期での発見と的確な指導で完治するこどもや、少しでも快復する現状があるのだ。しかしながら、多くの親が自分の子供の障害を認めたくないというじれんまが、随所に伺えるといわれる。その壁を乗り越えて、一緒にこどもの成長を見守り、学校へそして社会へ送り出すことの重要さと難しさを感じてしまう。
  この施設に感心するところは、専門的なスタッフが充実していることである。特に言語聴覚士をおき、それぞれのスタッフがそれぞれの立場で、こども達への指導に関する連携をとる体制づくりを整えていることに関しては、かなりうらやましい環境である。全体的に見れば、利用するこども達は少ない人数であるが、こどもに対する支援がどれだけ予算に反映されているかが伺える。 また関係機関との連携システムであるが、この療育センターを中心に滝川市における全ての関係機関が連絡調整を取っている。保健センタ−、子育て支援センター、医療機関、福祉課、学校、保育所、幼稚園、教育委員会、児童相談所、各福祉関連の支援センター、いわゆる滝川市に生まれてきた子どもたちに係わる全ての機関が一元化されているのだ。
  光市においては、「ことばの教室」が昭和56年に小学部に、また同59年には幼児部が光井小学校に設置されている。残念ながらまだまだ体制が初歩的な段階で、発達に障害があるこどもへの手助けが不十分である。特に専門的な資格の採用等に関しては、ほとんど認識されていないのが現実だろう。 小学校でのことばの教室等、特別教室としての認識があまりにも良くない現実から脱皮し、こどもや親に対して両方への手助けとして重要な位置づけが必要だ。 現在、行政が委託事業として行っている障害児サポートに、民間活力を取り入れ、高い壁が乗り越えられるような環境づくりを早急に取り入れたい。特に教育現場と福祉現場の連携は、必要不可欠である。この壁をまずは取り払う努力をお願いし、おっぱい都市宣言のまちにふさわしい支援策として位置づけていきたい。



○北海道岩見沢市訪問概要

  岩見沢市は人口83,360人のまちで、道の中心部、石狩平野の東側の穀倉地帯に位置する。札幌40q圏内にあり、交通条件と自然環境に恵まれた、空知地方における行政・産業経済・教育文化などの中核。06年3月27日に北村・栗沢町を編入合併の予定。 当地には、岩見沢市立総合病院(中島保明院長・484床)があるが、17年度自治体立優良病院に選ばれ、総務大臣表彰を受けた。本年度は20回目で全国3病院が対象。全国自治体病院開設者協議会会長、全国自治体病院協議会会長の推薦から、経営の健全性、経営努力の状況や、地域医療に果たしている役割を総合的に判断し選考されるもの。特に、経営の健全性、経営努力の状況については、合併後二つの自治体病院を抱える光総合病院の中期計画の参考にさせていただきたいと視察地に選んだ。

○岩見沢市立総合病院視察の感想

  岩見沢市立総合病院は、第二次保健医療圏(4市6町1村、圏内人口約20万人)の地域センター病院としての役割を持つ。さらに平成4年以降の経営改善の取り組みとして、主なものをあげてみる。

★収益確保のための方策
@時間外患者受け入れ体制の確立(24時間体制)
Aベッド再編(全病床を混合ベッドとして使用)⇒各診療科の連携必要
B人間ドッグ受け入れの拡大(市民健康センターとの連携)
C午後の診療回数の増加
D訪問看護の実施
E医療費減額査定の見直し
F新看護体系への移行(2.5:1)⇒目標は2:1
G服薬指導の開始

★費用節減のための方策
@医師の給与見直し(初任給の引き下げ)
A医員の管理職手当の削減
B研修医師の嘱託医制度の導入(H7年)
C診療手当(特殊勤務手当の見直し)
Dレセプト業務の全面委託
E薬剤の購入所管の見直し
F薬剤の種類の削減(後発品は全体の3%)
G節水弁使用による節水および節電

★当院における今後の課題
@外来患者数の削減⇒地域連携
A入院患者の在院日数の削減と病床稼働率の維持⇒地域連携
B医薬分業の実現⇒土地・公平性
CIT化の促進⇒オーダリング、電子カルテ
D病院機能評価の受審⇒法廷医師数(現在12名医師不足)、全館禁煙、etc.

○統括

  環境民生委員会の所管は、福祉関係・病院関係が主な管轄である。その中でも、光市においては合併により二つの自治体病院運営をどのようにしていくかが、急務の課題となっている。
  岩見沢市立総合病院は、今年度中に計画される中期計画に少しでも役に立つ情報等を伺える最適な病院であると知り、今回の視察地とした。 視察後特に感じたことは、経営努力の重点は、医師の給与等の減額であろう。なかなかメスを入れられない医師給与や手当に、積極的な改善策を提示され、それに職員一同が健全経営のための努力を惜しまないという姿勢を強く感じた。 トップに立つものこそ、職員の痛みを感じることのできるリーダーでなければならない。だからこそ、先頭を切って改革されていることに、口だけでなく行動が伴うリーダーに、一丸となって取り組めているのではないだろうか。
  現在の光総合病院においては、企業管理者の元、多くの改革のメスが入れられ、着実な努力が実りつつある。たとえば地域医療連携の充実、紹介率の向上、医師をはじめとする職員の質の向上等などがあげられるだろう。 しかしながら、自治体病院として運営するにあたり、企業管理者はもちろんであるが、開設者である市長の考えが、医療分野にどれだけ目を向けてもらえるかがキーポイントとなるような気がする。なぜなら、不採算部門を担うべく役割を持つ自治体病院に、一般会計から繰り入れられる予算が、どう反映されるかで、かなり運営が左右されるからである。
  次回の議会では、病院の中期計画に向けた議論が厳しく交わされるであろう。今回の視察内容を参考資料として、より市民に安心安全な自治体病院としての役割を果たせる光市なりの運営方向に意見していきたい。



○北海道札幌市訪問概要
札幌市は、明治2年の開拓使設置以来130年、北海道開拓の拠点として発展し続け、今や人口187万人(北海道の人口の約3割)を擁する全国5番目の都市に成長している。大正11年の市制施行以来、近隣町村との度重なる合併・編入によって、市域・人口を拡大してきた札幌市は、昭和45年には人口が100万人を突破し、2年後の昭和47年に政令指定都市へ移行している。規模が違いすぎて、すべてが全く比較にならないが、ごみ問題に関してはの課題はどこも同じではないだろうか。 今春、指定管理者制度が条例化された光市において、環境問題に関して管理運営をNPO法人に委託している札幌市の様子を少しでも参考にできないかということで視察地に選んだ。  

○環境り・ふれんずの感想
 リサイクルプラザ宮の沢は「NPO法人 環境り・ふれんず」、 (2004.2.特定非営利活動法人化)が受託して管理・運営している。年間、市からの委託費としては2400万円。施設は生涯学習課の管轄にある。<開館時間>10:00〜18:00<休館日>毎週月曜日(祝日と重なる場合は翌日)、年末年始(12月29日〜1月3日)<主な交通機関>地下鉄東西線宮の沢駅直結という、非常に便利で人の流れが多い場所での活動として、主だったものをあげてみる。

@リサイクルプラザの家具・自転車等展示提供について
リサイクルプラザでは、市民が大型ごみとして出した木製家具等の中でリサイクルできるものを修理・整備して、札幌市市民に抽選販売をしている。
● リサイクルプラザの展示品は市民が大型ごみ収集センターに出したもの。資源の有効活用を図るため、大型ゴミとして出される不用品の中でリサイクル出来る物をリサイクルプラザ発寒工房で再生している。(※工房への立ち入りは出来ない)
●市民から家具・自転車等直接引取りは行っていない。
通常大型ごみはプレスパッカー車がその場で破砕して収集するが、大型ごみ収集センターに「リサイクルに」と指定して収集を依頼したものは、専用のコンテナ車が収集します。その中からリサイクル可能なものを選別し修理整備したものを、リサイクルプラザで抽選販売している。

Aふれあいコーナー
このコーナーではリサイクルを生活に取り入れる第一歩として、身近なテーマからごみ減量を考える催しや、楽しいリサイクル手芸・工作の体験教室、ミニ講座、各種リサイクル相談などを随時開催する。手がける、作る、考える、語り合うといったコミュニケーションの中で、楽しみながら循環型社会をめざす。 ふれあい&相談コーナーの催しについては毎月のカレンダーに記載されている。

B受付カウンター
受付カウンターを設置し、担当者が市民の質問や意見を受けている。家具等の申し込み方法やごみ問題、リサイクルについての情報交換など気軽に声をかけられる。

Cごみ分別情報・リサイクル情報コーナー
*ごみ減量・リサイクル・リフォーム教室等のビデオ貸し出し
札幌市のごみ政策や、リサイクルに関する講習ビデオ、リフォーム作品の作り方などのビデオの貸し出しをしている。

*リサイクル関連ビデオ・図書閲覧・貸出し
 ごみ問題についてもっと知りたいという方、子どもさんの自由研究にも役立つ。 図書やビデオがリサイクルプラザにて見ることもでき、ビデオの外部貸出しも行っている。

*リサイクル関係図書貸し出し
リサイクルプラザでは、「ちえりあ」1Fメディアプラザ内にある図書コーナーに リサイクル関連図書を提供して、外部貸し出しを行っている。

*リサイクル作品のレシピ・情報紙等の提供
リフォーム作品の作り方、講習会マニュアル、情報紙「ごみニュケーションさっぽろ」などの郵送サービスを行っている。

*ごみゼロウェブギャラリー
リサイクルプラザ内に展示してある、リサイクルアート作品をここで紹介している。併せて図書やビデオ、リサイクルアートの紹介。

D牛乳パック回収ボックス
牛乳の1リットルパック1枚でトイレットペーパー10メートルに再生利用できる。リサイクルプラザに、「牛乳パック回収ボックス」を設置し、洗って開き乾かしたものを持ってきてもらう。
Eエコキッズスクール
リサイクルプラザでは、子どもたちに、ものを大切にしてごみにしない心と分別する習慣を育てるための、楽しいプログラムを用意している。要望に応じて出張教室もできる。内容は紙しばい、分別ゲームなどで、対象は札幌市内の保育園・幼稚園などの年長クラス、1教室30名程度。なお、小学生のごみ分別ゲーム、学習指導も行っている。

その他、リターナブルびん、新聞、雑誌、紙・酒パック、廃食用油など資源の拠点回収(無料回収)、修理したいけど場所がない・道具がない、DIYに挑戦してみたいけどキットを買っても作る場所がないと困っている方に、二十四軒サテライトを『市民工作室』として開放している。さらに、[市民交流広場]においては、ごみ減量とリサイクルを楽しみながら体験できる企画が沢山用意されている。
      
○統括
年間2400万円の委託費でこれだけ中身の濃い活動、啓発をしてもらえるのは、環境問題に真剣に取り組もうとしておられる人の力!と言うに尽きる。行政発信では、決してできない努力であろう。しかし、これだけの活動とスタッフを抱えての運営費としては、かなり安価である。スタッフの皆さんからは、自分たちのまちを、自分たちの力で何とかしなければいけない、環境問題に取り組まなければならないという熱い思いを感じた。
  様々な取り組みの中でも特に目をひいたのは、有名な絵本作家の宮西達也さんの絵本だった。宮西さんは地球の未来を担う子どもたちに、大人たちは何を伝え、何を残せるのか?私たちのできることは何だろう?子どもにも大人にも熱く指示される作品を次々と創り出している方だ。 宮西さんに講演の協力をお願いした理由は、「いつも参加してくださる方は、どんな時にも参加してくださるが、結局同じ人ばかりとのコミュニケーションになる。今まで参加したことのない人にも参加してもらえる企画、輪を広げていかなければ本当の啓発にならない」ということだった。その通りである。 どこの行政のイベント等でも、お世話をする人はほとんど一緒で、参加される方もそんなには変わらないのが現状なのではないだろうか。それこそ、業務をこなす発想から、一歩前進する方法がないか前向きに挑戦する努力、これこそ民間活力、市民活力といえるだろう。
  まだまだやりたいことはたくさんあると言われる中で、光市においてはまだまだ札幌市にような行政から独立した活動が行えるNPO法人が育っていない現実がある。小さな芽は育っているが、大きく育てようとする環境も必要不可欠である。素材や資質をもたれた方は多いだけに、その活力を発揮する体制作りが、光市における早急な課題といえるのではないだろうか。