「担い手育成の農業振興」


建設経済委員会視察報告書

視察日:平成19年2月1日(木)〜2月2日(金)

視察テーマ:総合交流施設を起点とした農業振興の事例調査

視察の背景と目的:光市農業地区の地域活性化には、農業振興地域の特長を活かしつつ、都市との交流促進を通じて、多様な農産物の生産振興と、高齢者や女性及び住民などの多様な担い手が活躍するむらづくりの創造と実践が必要。
ついては、こうした多様な担い手が活躍できる多機能な総合交流施設設置の取り組みと運営方法に関する事例を視察し、今後の農村地区における農業振興策の検討に資する。

視察先:
@広島県三次市君田村泉吉田311-3 道の駅「ふぉレスト君田」
 ・むらづくりの取り組みと農産物販売・加工施設を通した交流活動

A広島県世羅郡甲山町 交流施設「甲山いきいき村」
 ・施設内容(いきいき市場:野菜等農産物・農産加工品販売、農産物等加工実演体験コーナー、農村レストラン)
 ・地元農家等多様な担い手と施設との関わり方
 ・「こだわり農産物」認証制度と実績状況


●三次市君田町 
 旧君田村は、人口約2000人という小さな村であったが、平成16年4月1日に三次市と合併し今に至る。合併前、村の生き残りをかけ、またまちづくりの中でもっとも大切な人づくりに取り組んだ大きなプロジェクトがあった。昭和63年の泉源調査から9年余りの時を経過し、その成果として、道の駅「ふぉレスト君田」がオープンに至った。今後の光市のまちづくりの一環として、その取り組み経過が非常に参考になった。

●住民出資の第3セクター(株)君田21(森の泉)の概要
<概要>
会社名 : 株式会社君田トエンティワン【(株)君田21】
代表取締役 : 藤原清隆 (元君田村村長)
本 店 : 広島県三次市君田町東入君644-1
設 立 : 平成8年6月7日
業務内容 : 1) 浴場、売店、食堂、研修室、集会所、宿泊施設及びこれに付帯する施設の受託管理及び運営業務
2) 農林水畜産物の加工及び観光みやげ品の開発、加工、製造、販売
3) 公園、緑地及び庭園の受託管理
4) キャンプ場及び庭園の受託管理
5) 図書館、郷土資料館等文化施設の受託管理及び運営業務
6) 催事、各種パーティの企画及び運営業務
7) 農林業、畜産業、観光開発に関する情報の収集、伝達及び宣伝業務
8) 前各号に付帯する一切の業務

●経営組織
株式会社君田21は住民と町の共同出資による第3セクターの会社である。
1株の金額 10万円(額面株式)
発行株数  600株(資本金60,000千円)
 ○三次市 24,000千円      40%
 ○住民等 36,000千円 (240名)60%

  三次市  240株
  民間法人 50株
  商工会  3株
  住民   307株
役員構成  取締役8名  監査役2名

●経営状況(平成17年度)
常勤役員 常務取締役支配人
社員数 正社員14名 嘱託社員5名 パート50名 契約社員5名
君田町民雇用 49名(67%)
年商 450,822千円
経常利益 10,901千円
経済波及効果 300,000千円
株主配当 9期連続実施(平成17年度4%)

●経営理念
共に学び 共に成長し 共に栄え お客様に感動を与える
集客戦略 自分づくりを忘れず、周学上達で楽しく仕事をしよう
 ◎一人の社員が100名の人と気軽なネットワーク(ファン)をつくろう
 ◎社員すべてが営業マンとなろう
 ◎感謝のメッセージを書こう
 ◎親しき仲にも礼節を保とう(お客様・社員)

●その他
・職員の意見を聞く体制づくり(社員との意見交換)
・地域にしがらみのない職員(嫌なことも言える上司として必要)
・休館日は、ボランティアの日に(日頃できないことをやる)
・働くことに生きがいを感じること
・情熱を持ち続けることが、活性化に繋がる
・一人3役(19年4月から、70名体制)
・客の減る9月頃に、格安チケット販売
・遠く離れた故郷出身者が広報員に(話題にしてもらい、1割減のチケット購入)
・男女共同参画社会の一環として、リーダーには半分以上が女性登用

●感想
視察を終えて、経営者に「組織は人なり」この言葉に尽きるといってもいいほどの熱意を感じた。
第3セクターの大きな問題点は、公務員気質の体制が残りつつ、民間活力が育たない点であろうか。ここには、その特異体質を何とか打開して、自分たちの施設を自分たちで作り上げようとする意識改革に大きな力を注いだように感じた。
 また、温泉施設だけでなく、複合的な施設を有し、数日滞在しても楽しめるような魅力があるからこそ、人はわざわざこの地を目指して来る。
今までのような、行政主導の3セクではなく、行政の役割と住民の役割をしっかりと意識付けたような参考例と感じる。
 光市において、泉源を活用した温浴施設を計画中であるが、健康づくり・高齢者の居場所づくり・人と人との交流場所として計画されている。しかし、何よりも大切なことは、市民の雇用の場として、さらには市民参加型の意識向上が図れる案を参考にし、年次的な経営方針が出されるよう、光市にあった具体案を提案していきたい。


◆世羅郡甲山町
山陰と山陽を結ぶ銀山街道が通り、中国山地の南側中央に位置する世羅町。この町は平安時代から農産物の供給基地、大田庄として拓けた世羅台地にあり、世羅郡内の人々は、共通の歴史、共通の暮らしを色濃く育んできた歴史を持っている。
 そして、平成16年10月1日、世羅郡の甲山、世羅、世羅西の三町は強く結び付き、人口19,800人の新「世羅町」を誕生させた。
 穏やかな気候と風土に恵まれたこの台地は、春夏秋冬、四季折々の装いを見せ、この魅力を求めて、年間130万人の人々が世羅の地を訪れる。さらに、この地が持つ並外れた個性とエネルギーは、多彩なこだわりの農産物を多様な形で生産供給することを可能にしてきた。

◆「協同組合甲山いきいき村」概要
 この施設は、地域の人々や周辺都市に住む人々のために、いろいろな情報の提供をしたり、地域特産品の販売や加工等を通して都市と農村の交流を図るための拠点施設として計画されたもので、旧甲山町が1996年3月から施設の建設に着手し、同年11月にオープンした。
 また、この施設は、国道184号線沿いにあり、道路通行者のためにトイレ休憩やくつろぎの場所としても利用が可能で、人に優しい施設作りに配慮されている。

(構造)鉄筋コンクリート2階建(一部地下1階)
(規模)敷地面積2001u 第2駐車場1263.75u
    駐車場 普通車35台 大型バス2台 身障者用1台

(内容)
◎主な産品と価格
 季節の野菜、特産の梨をはじめとする果物、米、山菜、漬物、みそ、菓子、お惣菜、木工品、ハーブ、花き(生花、鉢花、花苗)、畜産物、木工品(価格は生産者が設定している。)

◎ふるさと産品展示販売コーナー(いきいき市場)
新鮮な朝どり野菜をはじめ農産加工品、土産品等、地域の特産品がズラリと揃ったいきいき夢バザール。

◎ハーブ工房・農産物等加工実演・実習・体験コーナー
地元でとれた農産物やハーブ等を使っての加工実演が見学できる。また、心豊かなカントリーライフを楽しめる田舎名人になるための、さまざまな実演や手作り体験ができる。(ハーブクラフト、フラワーアレンジメント、草木染め、豆腐づくり、漬物づくり、そばづくり等の体験)

◎ふるさと情報コーナー
最新の情報機器が備えられ、世羅町をはじめ周辺地域の文化や歴史、観光等の知りたい情報や道路交通情報などをビデオプロジェクター、内照式パネル、テレビ放送で楽しめる。

◎ふれあい交流・休憩・農村レストラン「そば茶屋いきいき」
香りとくつろぎの空間で心ふれあう楽しいひとときを過ごせ、そば茶屋いきいきで、地元の食材をふんだんに使った、そばが味わえる。

(総事業費) 3億6千万円 *事業主体 世羅町

(財源) 農村資源活用農業構造改善事業補助金(127,546千円)・一般単独事業費(165,448千円)一般公共事業債(2,500千円)・過疎債(51,600千円)・一般財源(12,906千円)

(営業時間)午前8時〜午後5時 *定休日なし (レストランのみ 毎週月曜日定休)

(管理運営)世羅町が、協同組合甲山いきいき村を指定管理者として契約委託。

・施設の管理運営を受託(人件費・協同管理費)
・スタッフ体制(受託責任者・常勤10・臨時)

協同組合甲山いきいき村の構成メンバー
・この組合は、次の団体役員及び甲山いきいき村登録会員(町外)並びに賛助会員をもって構成する。
@ 甲山いきいき市場生産組合
A 甲山きのこ生産組合
B 甲山いきいき村おふくろの会
C 甲山ハーブの会
D 甲山国営開発団地花卉生産組合
E 世羅町畜産振興連絡協議会

・販売手数料(町内15%)(町外20%)
・出荷者収入(町内85%)(町外80%)
・有料施設の利用促進

◎甲山いきいき村会員出荷条件等  
・入会金 2000円
・年会費 1000円
・受託手数料 15%
・出荷農産物は地域のものに限る

☆現在、出荷会員数は395名!集落法人は13法人
☆集落法人のうち、年収1000万円を超える法人もある。
☆平成17年10月月間売上高記録達成(4016万円)
☆インショップ販売等(大丸・サティ等)も積極的に開設

◎『こだわり農産物』認定制度
甲山いきいき村では、畜産農家と野菜農家とが『土づくり協定』を結び、地元の有機資源を活用した土づくりを行い、よりおいしく、より安全で、より健康な農産物等を生産し、消費者に安心して提供できるよう心掛けている。
 また、環境保全型農業を推進しており、この度、『こだわり農産物』の認定制度が発足し、甲山いきいき村が定める基準にしたがって生産された農産物を次のように区分して認定している。

こだわり農産物『元気くん』 定義 とは、土づくりを6ヵ月(3年)以上行った農地で、化学肥料、農薬の使用を一般栽培より減らして生産された農産物。

認定シールの色
★シルバー(銀)
 土づくり6ヵ月以上
★ゴールド(金)
 土づくり3年以上

(基 準)
★土づくり
一般野菜は、1年あたり4トン/10aの堆肥を投入すること。米は、年間1トン/10aの堆肥を投入する。
★栽培面(資材)
有機率50%以上の有機肥料を使用し、農薬は慣行の1/3以下とする。


<感想>
 地元農家の担い手育成として、収益を確実に伴うサポートがなされている。兼業農家もあるが、高齢者の生きがいとして、さらに確実な仕事として収益が見込まれるような、やる気が起こる事業として確立されている。特に、年間を通してここの施設だけでは販売できない現状を打開するため、インショップを開設するための営業努力は、生産者のやる気をさらに植え付けるものとなっている。
地元に活力を与え、地元のみんなが参加し利用することは、まちづくりの活性化になる。さらに、周辺地域からの交流を促すことで、さらなる活力が生まれてくる。
 光市においても、農業生産者のみならず、漁業者の担い手育成、さらには高齢者の生きがいづくり事業として取り組むべき問題である。
そのための組織づくり、営業ルート等、確実な収益を伴う販売戦略、さらには観光戦略とうまくかみ合わせる等、うまくいけば山間地以上の効果がでるのではないだろうか。