「放課後こども教室の可能性」


視察地:東京都世田谷区視察

*視察内容:放課後子どもクラブ(新BOP事業)の取り組みについて

 平成19年度から実施される予定の放課後子ども教室に向けて、全国では様々な取り組みを始めようとしている。その中で、早くから放課後の子どもの居場所作りにとり組んでいる自治体もある。16年度から3ヵ年事業として行われた地域子ども教室は、18年度で終了する。この事業も一部の公民館活動の延長線上での取り組みであるので、全国を見ても内容は様々であった。  その中でも、特に世田谷は早くから多くの区民の協力と理解を得て、学校側が主体となり、児童家庭課と連携を取りながら、放課後の子ども達の育成に効果を挙げておられる。現状は、とにかく学校開放から始まり、学校が主体となった放課後の子どもの居場所作り、従来からある学童保育とを一緒にして取り組む必要性を感じている。今後の方向性と、光市なりの運営方法に参考になることを期待する。

1 新BOPのねらい

 区では、世田谷区地域保健福祉審議会の答申や子どもを取り巻く環境整備プラン等を踏まえ、平成7年度から実施してきたBOP(のびのび世田谷ボップ=放課後の遊び場対策)を基礎として、学童クラブ機能も併せ持った新たな仕組み「新BOP」を、平成11年度から段階的に導入してきた。平成17年4月からは、区立小学校全64校で新BOPを実施している。
BOPと学童クラブは、設置目的や運営内容に多少の違いはあるものの、放課後における小学生の健全育成を図るということは共通しており、両方に登録し参加している子どもたちも見られる。
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 新BOPの主なねらい・特色は次のとおり。
(1)子どもたちの幅広い遊び・異年齢児交流の促進を図る。
(2)学童クラブ機能を区立全小学校に拡充し、定員枠を原則として設けない。
(3)夕方6時まで実施し、夏休み等の長期休業期間も運営するなど、運営   時間を拡充する。
(4)学校内で運営することで、学童クラブへの通所時の交通事故等の不安を軽減する。
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 新BOPは、全ての小学生の放課後の過ごし方をより豊かにしていこうというもの。

2 新BOPの内容

機能内容

BOP

新BOP内学童クラブ

対 象

当該小学校の1〜6年生の希望者

保護者が就労や病気等により放課後家庭で面倒を見られない等、所定の入会基準を満たす小学校1〜3年生

実施日

日曜・祝日・休日・年末年始(12月29日〜1月3日)を除く、月〜土曜日

日曜・祝日・休日・年末年始(12月29日〜1月3日)を除く、月〜土曜日

時 間

下校時〜(原則夏季5時・冬季4時半。学校休業日は8時30分〜。各学校により異なる場合があります。)

下校時〜午後6時(学校休業日は8時30分〜午後6時)

定 員

原則として設けない

原則として設けない

おやつ

なし

あり(月額2,000円。申請により免除になる場合があります。)

出欠確認等

児童名簿による確認

児童名簿による確認と連絡帳


【所管】
新BOPは区が実施運営している。児童課と地域・学校連携課が共同で運営にあたっている。
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【運営体制】
・事務局長(非常勤職員:月20日、16時間勤務)のほか、参加児童数・施設状況等に応じて
・児童指導職員(常勤職員:週5日、18時間勤務)
・新BOP指導員(非常勤職員:教員、保育士等の資格のある者:月20日、1日6時間勤務)
・臨時職員を配置し運営している。 (特に、要配慮児童のいる場合、指導員・臨時職員を加配する。
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【施設整備】
 新BOPのスペースは普通教室2つ程度を標準とするが、実施校の既存施設(BOP室・学童クラブ室)を有効活用するほか、学校と協議し、必要なスペースを確保している。
 学童クラブ機能に対応するスペース(新BOP室2室のいずれか)には、厨房・水まわり施設・冷暖房などの設備を設けている。
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【活動場所】
 新BOP室のほか、校庭・体育館で活動するとともに、雨の日や参加児童数が多い日などは、学校と調整しながら、特別教室等の利用も図れるようにしている。 --------------------------------------------------------------

【イベントの実施】
 学校ごとにイベントを実施している。校庭・体育館を利用した活動的なイベントや、映画会等の室内イベントなど、新BOPの参加児童全員が楽しめるよう、様々なイベントを考えている。1年生から6年生までの児童がひとつのイベントに参加することによって異学年交流を促進するとともに、様々な体験を通して児童の主体性・リーダーシップ等を養う。
児童館や保護者・地域と連携し、幅広い活動を展開している。
・イベント例
 歓迎会、スポーツ大会、ぬいもの、ミステリーツアー、お話会、伝承遊び、木工作、囲碁将棋、夕涼み会、水遊び、絞り染め、お別れ会等。
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【広報紙の発行】
 新BOPの活動の様子や、毎月の予定・保護者へのお知らせ等を掲載した「新BOPだより」を原則として毎月発行している。 
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【その他】
 PTA・学童クラブ保護者・遊び場開放運営委員会・青少年委員等地域関係者・学校・行政が参加する「新BOP連絡協議会」を設置し、円滑な運営と内容の充実を図っている。

 

<感想>

 光市においては、なかなか教育委員会の壁が問題になっているが、世田谷では、学校サイドが主体となって運営し、学童保育部分とうまく関わりながら、一緒に行われていると言う点に大いに注目したい。

 子どもの安全対策においても、授業が終わっても学校の敷地内で自由に放課後を選んで過ごせるというのは、保護者・学校関係者にとってもありがたいことではないのだろうか。さらに、現場の指導者・学校の先生・保護者との連携は欠かせない点だ。現場では、指導員と保護者との個人面談があり、指導員と学校の先生との連携も非常に濃い。

 さらに、保護者からの情報は、健全育成のために活用する情報として限定して使えるとし、現場の指導者は保護者とのキャッチボールがしっかりと出来ている。

 これらのことを見てみると、光市においては、かなり遅れているように感じるが、19年度を踏まえ、モデル的にも世田谷の行なっている新BOP事業を取り入れていただき、学童保育との連携を強化していってもらいたい。これこそ、少子化対策の一翼を担うものとなるだろう。