社会福祉法人鼓ヶ浦整肢学園



 光市は、まだまだ発達障害等のこどもの療育環境が整備されていない。あまり大きく取り挙げられない問題だけに、「発達障害は、治る!」という事をもっと多くの人に理解していただき、何とか1人でも助けることができないか考えていた。
 このたび、山口県の担当課にこれらの問題に対する現状を聞きに伺い、近隣の周南市にある社会福祉法人鼓ヶ浦整肢学園が、県下でも非常に環境の整った施設であることを知り、少しでも参考にさせていただきたいと思い視察地に選んだ。

 社会福祉法人鼓ヶ浦整肢学園は、医療法による病院としての「鼓ヶ浦こども医療福祉センター」と、児童福祉法・身体障害者福祉法及び障害者自立支援法による「こばと園」「ひばり園」「つばさ園」「鼓澄苑」などの社会福祉施設としての機能を持っている。また、介護保険法に基づく事業も運営している。
 山口県立周南養護学校が隣接し、小学部・中学部・高等部が設置され、入園児が通学している。
このように、乳幼児から高齢者まで含めた医療・福祉・教育を一体化して、地域の多様なニーズに対応する総合的な療育・支援を目指して事業を行なっている。

:医療  
小児の疾患を中心に専門的医療を行っている。また一般の方の治療も併せて行っている。
整形外科(小児整形外科・一般整形外科)・小児科(小児神経科・小児科)・内科(神経内科・内科)・リハビリテーション科

:機能訓練  
様々な機能の獲得や回復をはかる。理学療法・作業療法・言語療法

:看護
外来、こばと園・肢体不自由児施設、ひばり園・重症心身障害児施設

:臨床心理  
心理相談、心理検査、心理療法等により内面的な支援を行う。

:関連施設
身体障害者療護施設・鼓澄苑、身体障害者デイサービス、老人デイサービス、在宅介護支援センター・ケアセンターはぁと

:こばと園(肢体不自由児施設)・・定員40名
小児整形外科・小児神経科・内科・リハビリテーションによる医療を行うとともに、将来の社会的自立を目指して療育する施設。
原則として、18歳未満の児童が入園できる。

:ひばり園(重症心身障害児施設)・・定員60名
心身ともに重度の障害をもつ児童者のための医療福祉施設。従って医療的ケアのほか日常生活では全面に介助を要する児童(者)が対象となる。

:つばさ園(知的障害児通園施設)・・定員30名
子供の発達に応じた集団保育や個別指導をベースにし、小児科、小児神経科のスタッフや訓練部との連携を図りながら、運動・言語・感覚機能・身辺自立などの総合的な視点にたって療育を行う施設。就学前の幼児が対象となる。
児童指導員、保育士、介護福祉士のスタッフが協力し合い、子供たちの可能性を求め、遊びを通して子供の興味を広げ、社会性を育てる援助をしている。保護者と共に子供の成長を見守りながら、食事・排泄・着脱衣などの基本生活習慣を楽しく身につけるようそれぞれにあったステップでお手伝いする。

:あゆみ園(重症心身障害児・者通園施設)・・定員15名程度
周南4市3町に在住する在宅の重症心身障害児(者)の通所の方法で、日常生活動作等に係る援助、指導など必要な療育を行うことにより、個々のライフワークに沿った生活の質の向上、さらには家庭内自立を目指している。
日常的な活動として、個々の状態に応じた個別活動や集団レクリエーションなどを行っている。季節の移り変わりを感じることのできる行事や、創作活動、音楽活動にも取り組んでいる。周南4市3町を車椅子で乗降できるリフトバスを使用して、各家庭まで送迎している。

:地域療育室
施設は今、その専門的機能や技術を施設に入所している人たちだけでなく、広く地域社会へと開放している。地域療育室では、在宅療育に関する相談やその他様々な支援を行っている。地域で暮らす皆様が気軽に訪れ、何でも相談できるスタッフが揃っている。
・在宅療育、介護に関する相談(訪問・来園・電話)
・福祉サービスの利用に関する情報提供、連絡調整
 (各種施設の利用、ショートステイ、ホームヘルパーの派遣、 日曜生活用具給付など)
・専門スタッフ(保育士・臨床心理士・作業療法士・言語聴覚士など)による 相談、助言、療育指導 (学校・保育園・幼稚園への助言・相談)


感想
 この施設は、障害をもつ子ども達のトータル的な総合施設であり、療育部門も、専門的な職員が配置され、非常に環境整備が整っている。しかし、国の一方的な施策により、今年度は補助金が25%も削減されてしまう状況である。社会福祉法人は収益事業が行えないため、今後の施設運営に大きな不安と危機感を持っておられるとの話を聞いた。弱者を支援する立場の福祉施設は、何よりも働く人の質が大切であり、働く環境も重要な位置づけをもつ。 

 療育に関しては光市において、1歳6か月児健康診査等を受診し、要経過観察になった児及びその親を対象に、親子の適切なかかわり方等を学習することにより、児の発育発達を促すとともに、必要に応じて他の発達支援機関と連携・調整を行うことを目的とする「のびのび教室」が年12回開催されている。そこでは鼓ヶ浦整肢学園保育士等の指導も受けられる。
また、光井小学校では、早くからことばの教室が開催され、光井小学校の子どもが中心だが、就学前の子供も含め、的確な指導がなされている。そこには特別支援コーディネーターの資格を持つ指導者も配置されている。しかし、現状は市内1ヶ所にすぎないため、通えない子どもの受け皿は皆無に等しい。
 このような環境から見ても、光市では身近な支援が薄く、今後は指導者の育成にも力を入れ、常に専門知識をもつ指導者に、各地域で指導してもらえる環境整備が必要だ。
 さらに、障害をもつ子どもの学童保育・市立の学校施設との連携が取られる環境整備にも着目してもらいたい。光市ではNPO法人の虹のかけ橋が、レスパイト事業として学童保育も行なっているが、まだまだ需要と供給のバランスは取れていないのではないだろうか。
先進的な周南市においては、特別支援の教育計画が公立の幼稚園・保育園、小学校において立てられるという。さらに、県では今年度から5歳児検診のフォローを新規に取り入れ、少しでも発達障害の子どもを支援していこうと指導している。
障害をもった子ども達は特別な子どもではなく、普通の視線で助け合い支えあうことが重要であり、日常的に関わることができる環境づくりは、教育上不可欠ではないだろうか。人数的には少ないけれど、だからこそ目を背けてはいけない問題なのではないかと考える。おっぱい都市宣言が担う施策の中に、ぜひ取り入れて欲しい支援といえる。