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2007.5.29
室積海岸の現地見学・説明会の報告
早長百選会(室積海岸の安全と自然環境を守る会)
会長 大町和昭
 5月26日、光市の主催で海岸研究の第一人者である、なぎさ総合研究室長の宇多高明先生を招き、午前中は室積海岸の現地見学会、午後4時から「なぎさ」研修会が室積公民館で開かれた。午前、午後とも約200名の参加があり、延べ6時間にわたり説明や意見交換が行われた。
 宇多先生の豊富な知識と経験をベースとした分かりやすい話、そして何よりも先生の波と砂に対する熱意を感じ、今後への期待が高まった。

 長時間の話を聞いた中で、皆さんが特に関心のありそうな先生の話を抜粋して報告します。

どうして今のような海岸になったのか

 戦前は島田川の砂が室積海岸に流れてきていたので、砂浜は少しずつ前進し今より広かった。光海軍工廠用地の埋め立て、新日鉄・武田薬品の工場拡張、大水無瀬島と小水無瀬島間の防波堤などにより、島田川からの砂が来なくなった。このため、台風や季節風の高波により砂が侵食されても、自然による砂の補充がないため砂浜が痩せ細ってきた。
 対策として、15年前より人口的な養浜(ようひん:大量の砂を投入して海浜の改良と維持を図ること)が行われることになった。

毎年のように土砂を入れているのは何故か

 自然の波により、松原地区の砂が削り取られ、その砂が戸仲漁港へ移動する。その量は年4,000〜5,000m3(ダンプ800〜1,000台分)もあり、削られた量に見合った砂を毎年入れる必要がある。入れた砂は弓なりの室積海岸(ポケットビーチ)の中を移動するだけで、象鼻ケ岬の外へ流れて行くことは絶対にない。既に一定量の砂は投入されているので、砂の溜まった戸仲漁港を浚渫(しゅんせつ:水深を深くするため水底の土砂などを取り除くこと)し、その砂を松原地区に運ぶ方法(サンドリサイクル)が行われている。

今後どうしたらよいのか。具体案はあるのか

 皆さんは「昔のようなゆるやかで段差のない砂浜を取り戻せないのか」と思っている。そして、自然環境を残し、近隣の住民の安全を守る方法がないのか知りたがっている。
 過去の技術では解明できなかったが、現在では必要なデータが揃えば完璧にコンピュータで砂の移動を計算でき、技術的に自然に近い砂浜を取り戻すことが可能である。
 以下に、3つの具体案を示すが、「案3」が構造物を必要とせず一番良い方法である。
 案1 サンドサイクル  
 今までと同じように戸仲に溜まった砂を運んで侵食箇所に入れる。
 欠点:戸仲漁港の浚渫(しゅんせつ)の予算が毎年必要となる。
 案2 突堤+養浜
 
突堤(とってい:海へ長く突き出した堤防のようなコンクリート建造物)を何箇所か造り、砂の移動を防止する。
 欠点:景観が少し損なわれる。
 案3 安定汀線
 安定汀線(あんていていせん)を予測し、これに平行して砂を入れ砂浜を広くする。
 砂は島田川より運び、戸仲漁港を少し改善する必要がある。

  ※安定汀線とは、波の影響をうけ砂浜が自然な形になりたがっている状態の海岸線のこと。

おわりに
 意見交換の中で「10年は待てないだろう。1年で技術的な答えは出る」と断言していた。
 故郷の浜を良くし、後世に残すためには少し時間がかかるが、後戻りできないような失敗だけは避けたい。実現するためには、国・県との調整など沢山のハードルがあり、短時間では難しいと思うが、市民の皆さんで議論を深め『室積海岸を守ろう』という意思統一が得られないと前に進まないことも強調していた。

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