信じたいものがあった
夜が来て朝が来るように
信じたいものがあった
夏が過ぎ秋が過ぎ冬が来て、暖かな春が来るように
信じたいものがあった
どんなに打ち付けられても
どんなに踏みにじられても
優しさは、希望は、勇気は
いつも、いつも……いつだって――――――――――
紅 炎 の 末 裔
「痛ってーなぁ、本当にさ。」
形代と石王とのダブル戦闘で風子は、烈火と土門に比べ傷が深かった。
御自慢のスベスベの玉の肌をこうも傷つけられては、喧嘩好きな風子としてもいい感じはしない。
包帯を巻いても、深い傷は、すぐに包帯の白を朱に染めた。
「まぁ、おめぇなら大丈夫だろ。」
「ちょっとそれどういう意味さ。」
まぁ、烈火がそう云うのも無理ない。
風子は、【喧嘩最強】とも謳われる烈火そして土門さえも、持ち前の俊敏力を生かし同格の強さを持っている。
そして、ほんのそこらの中途半端なやわな精神力ではない。
こんなことと云っては、風子に失礼だが、大丈夫であろう。
活力に近いものを与えるために烈火が云ったことを、長年の腐れ縁の風子も流石に分かっていた。
しかし、此処が、いや今自分たちに起こっている戦闘は現実離れしぎる。
マネキンが好き勝手に動き回り、大男が身体に石を纏う。
まぁ、風子たち自身【魔道具】と云う現実では有り得ない道具を使っているので(烈火は除いて)
自分たちは夢の中にいるんだー!みたいなうろたえるようなことはないが。
何用があって、友人の柳と を此処に連れて来たんだろうか?
風子、いや三人とも其れに関しては、一致する疑問である。
誘拐…にしては、先ほどからの現実では信じられない戦闘。酷く度が過ぎている。
そう思うだけで、傷ついた痛みはズキズキと脳に信号を送る。
柳は何処にでもいる普通の女子高生だが、人の傷を癒す治癒の力を持っている。
しかし、その力は一変変わると化け物の類だ。
例え、人を癒すとても魅力的な力だとしても。
だが、それを知っているものは今の処、烈火たちだけだ。
形代……いや、願子に聴いてみてはどうだろうか?
願子は、小さな子供だろうが、いちを紅麗の幹部の一人だ。
手当てを一通り終わった風子は、願子に尋ねた。
「願子さ、柳と って子がどうして此処に連れてこられたか知ってる?」
「柳って子は、ちゆのちからがどーとかで…」
「「「 !!? 」」」
それを聴いて三人は心臓を強く鷲掴みされたかんじがして、機械のように一斉にお互いを見合った。
しかし、此処でどうこう話していても時間の無駄だ。
一刻も早く柳を救出し、紅麗本人に問い出した方がいい。
風子は のことも尋ねた。
「 は?」
「 って子はよく知らない。
でも、紅麗様が捕まえてこいって命令したみたいなのは本当だけど…。」
力に成れなかった…と願子は肩を落とした。
そんなことねぇよ!と烈火は願子を高く抱き上げ、ニカっと笑った。つられて願子もニカっと笑った。
願子は一時烈火に任せた風子は土門に口を開けた。
「何でだろう、もしかしてアレかな。」
「あぁ、遊園地のときのだろ」
『さあ、どうしてだろうね。生まれたときからの特質だからよくわかんない。』
『よくわかんない、物心ついたときにはもう使えてたしさ。
そういえば、花菱も使えるんだよね、炎!』
遊園地の水鏡との戦闘のときに が出した炎。
あの後、 がとても罰の悪そうな表情をしていたのを3人はよく覚えている。
『…えへへ、コレ……内緒、ね。』
『何だよ、 水臭せぇじゃねぇか!何で早く云わなかったんだよ!』
『馬鹿烈火、 はお前と違って繊細なんだよ!』
『何じゃとコノ風来坊!!』
『烈火くんね、其の炎で私に花火見せてくれたの!』
『この時期花火売ってたっけ?』
『コイツの親父花火師なんだぜ。しかも、すっげぇ面白い親父さんでよ、 も今度寄ってみろ!』
『へぇー、凄い!!』
『花火百連発だぜ!こんな技マジシャンでもできねぇぜ!
俺たちTHE花火師やろうぜ!きっとMsマリックもビックリだぜ!』
『・・・』
『オイ、何で黙るんだよ!!!』
『えへへ、ファイヤーレッカマンの続きに ちゃん出すね!』
(((……何ですと…!!?)))
『えーーーー!!?本当に!!?柳ちゃんの絵本本当に面白いから楽しみ!!
しかも、あたしを出してもらえるなんて…何か照れるような、勿体ないような…』
『そんなことないよ!土門くんも風子ちゃんも出てるもん!』
『そうなの!!すごーい、皆有名人じゃん!』(((・・・)))
其のときの の笑顔がとても嬉しそうで同情ではないが、何か胸に込み上げる物があって
泣いてしまいたい衝動に駆られた。
運がいいのが悪いのか分からないが、其の日の夕方はとても優しく5人を照らし、5つの影を作った。
「大丈夫だ。仮に【炎】が目的でも、 は誰かを傷つけるために手なんて貸すかよ。」
風子の回想の途中に烈火の声が鼓膜に響いて、風子を現実に戻させた。
烈火と視線があったときに「な!」と烈火に送られた。
それもそうだ。 が好んで紅麗に手なんて貸すはずがない。
誰がどう考えても、紅麗は を(もちろん柳も)慈善活動には使うなんて考えられない。
愛情を特に欲しがる年齢で母親を亡くして、誰も信じられなく生きる希望は、自分の母親そっくりなマネキンを見て生前の母親を思い出し想うだけ。
目の前にいるけど、あの柔らかな優しい言葉はもう二度と聴くことはない。
目の前にいるけど、あの柔らかな優しい腕はもう二度と抱かれることはない。
もう、何も自分には無い。
もう、何も自分には残されてはいない。
だけど、母親そっくりなマネキンだけの存在が願子の生きる唯一の大きな希望だった。
いや、生きるたった一つの糧だったのだ。
其の気持ちを知っていながら、紅麗は小さな願子を戦闘をいう非道な世界へ引き入れた。
三人は、紅麗に対して確実な怒りを覚えた。
「そういえば、二人は何処にいるんだ?」
「馬鹿野郎腐乱犬、願子がそんなこと知る筈ないだろ。なあ、願子。」
「うん、風子の云う通り。願子知らない。」
「けどよォ、紅麗の野郎の面一発ぶん殴らねぇと気がすまねえ。」
「全くだね。」「当然だろーが。」
非道なことに対しては、三人は強い不愉快が有る。
紅麗とて例外ではない。
願子が止めたとしても、彼らを止めることは絶対無理だろう。
「しかし、少しでも姫たちの居場所が分かればいいんだけどなあ。」
「馬鹿烈火、そんなの風子ちゃんだって一緒だよ。」
「しかし、広っい屋敷だぜ。こんな屋敷建てんなら寄付でもしてほしいくらいだぜ。」
「まあ、ろっくなことしてないんだろうねえ。」
《…………花菱…》
「え?」
「?どーした、烈火?」
「腹でも減ったか馬鹿野郎。」
《…………花菱…花菱………花菱、………花菱》
「… !!?」
「オイ、烈火お前何処行くんだよ!!!」
「オイ花菱!!!」
「が、ががっが…願子置いて行かないで!!!!」
傍から見れば烈火は の居場所が予め知っている程的確に其処まで距離を縮めている。
でも、それは違うのである。
紅麗の屋敷に来たのは初めてだし。願子が居場所を教えたわけでもない。
かといって地図など持っているわけでもない。
何でか分からないけど分かるんだ。
呼んでるというより呼ばれてるっていうのじゃなくて。
自明に似た確信がある。
が此処にいるって。
バタァァァァァァ………………ァァァァァァァァァァン
「 !!!」
「は、なびし…?」
無音な闇から小さな声が灯った。
奇跡というしかない、 の声だった。
烈火の後を続いて、風子、土門そして願子が が監禁されていた部屋へ入ってきた。
「皆…、どうして……此処に…?」
「どうって、お前と柳を紅麗の野郎から取り戻しに来たんだよ。」
「よかったぜ、無事だったんだな。」
「……………………………………………………………………………………………良くない。」
の搾り出した小さな声で辺りは静かになった。
そして、 は現実を否定するように頭を抱えて喚いた。
「良くない……………………全然、何も…良くないよ!!!!皆、怪我、してる…!!傷ついてる…!!」
あたしが怪我させた。
あたしが傷つけた。
あたしの所為だ。
あたしが大切な人たちをこの手で!!!
「大丈夫だって、風子ちゃん喧嘩してるからこれぐらいなら慣れてるよ。」
風子が烈火と土門に首を縦に振って云う。
もちろん烈火も土門もほぼ毎日が喧嘩三昧だ、これくらいはどうでもない。
でも、今回は全く持って別だ。
「いいよ…っ…、そんなに傷ついてまで、怪我してまで…っ!
助けてくれなくてもいいよ…っ!!見捨ててもいいよ…!!!」
『 、お前の所為で佐古下 柳は不幸になる。』
紅麗……紅麗の云う通りだ。
皆、皆、あたしの所為。
あたしの所為であたしの大切な人たちが沢山不幸になる。
もしかしたら、嫌われるかもしれない。
もしかしたら、死ぬかもしれない。
もしかしたら、また…独りぼっちになるかもしれない。
それなら、最初から、逢わなければ良かった。
そうしたら、皆もっともっと幸せだったに違いない。
そうしたら、孤独なんて恐怖、知ることもなかったのに。
この世に私にとって愛しい人たちなんて―――――――
「………………………………えっ?」
一瞬のうちに は三人に抱き締められた。
紅麗と違って本当に温かい心地。
温かいのは、厭。
きつく寄りすがって、求めてしまう。
温かくて…優しくて、泣いてしまう。
「あのね、 。よく聴いて。」
「私たちが、 を助けるために、同情とか哀れみで此処まで来たと思わないで。
同情とか憐れみなら、こんなに傷ついてまでは来ない。すぐに帰ってるから。めんどくさいしね。」
「………」
「私たちは、 が柳が、…友達が連れて行かれたんで、取り返したいから此処まで来たんだよ。」
「………」
「私は、私たちはね、 のこと大好きだよ。」
「……私っも…大好き…っでも、……分からないの…ッッ!!」
信じたいものがあった
夜が来て朝が来るように
「あのね、 」
信じたいものがあった
夏が過ぎ秋が過ぎ冬が来て、暖かな春が来るように
「信じられないなら、ずっと傍にいてあげる。信じてもらえるまで、安心できるまで居てあげるから。
だけど、私たちは誰一人同情とか憐れみで傍にいるんじゃない。
大好きだから、傍に居て色々と分かり合いたいから知りたいから傍にいるんだ。」
信じたいものがあった
どんなに打ち付けられても
どんなに踏みにじられても
優しさは、希望は、勇気は
いつも、いつも……いつだって――――――――――
「大好きな友達を取り返したい、それが私たちの此処まで来た理由じゃあ、駄目なのかい?」
降り注ぐから。
「うっ…うう……っぁあ……ッッ!
あああああああああああああああああああああああああ!!!!」
もう独りじゃない。
振り返れば、同じ視線と背丈で友達が傍にいるから。
▼コメント
久しぶりの紅炎の末裔更新です。
さて、第一部終了まで後2,3話です。
監禁とかどうしましょう、萌えちゃいますよね!(変・態)