あぁ 水っぽい独特の香り
あぁ 肌をネットリと取り巻く感覚
あぁ 生きとし生けるものに生命を孕む
あぁ 恵みの雨よ
あぁ 何て残酷な嘘
紅炎の末裔
あぁ 本当に厭だよ
この孤独を思わす灰色の視界
この身体を激しく打ち付ける液体
この鼓膜に響く音
この奈落を感じさす匂い
ザァーーー・・・
そうアレは、7歳だったかな。
まだ物心ついたばっかりばったからそんなに鮮明な記憶はない。
だけど、覚えているのは―――――――
ザァーーー・・・
サァ 今日カラ此処ガアナタノ御家ヨ。
母に手を繋がれやってきたのは、一つの4畳半の汚い小さなアパート。
御金ハ心配シナイデ。
チャント御金ハアゲルワ。
御腹ガ空イタラ何カ買イナサイ。
欲シイ玩具モ何デモ買イナサイ。
そう云って母は、貯金通帳と印鑑を畳に落とし、玄関へ足を向けた。
ジャァ、イイ子デイルノヨ。
私の額にキスする母から香る、煙草の匂いと
他の男と交じったときについた香水の匂い。
それは、別れの合図。
そのときは分からなかったけど、独りになるのが
淋しくて、とてつもなく厭で無意識の内に
母に裾を握り締めていた。
ナァニ?御金足リナイノ?
そう云った母はエルメスの財布を取り出し
5,6枚私に差し出した。
母の表情が怖いほど優しくて、綺麗で・・・そして怖くて
震える手でそれを受け取ろうとしたが
その後に待つセカイを考えると受け取れず、何も云わず泣いた。
―――――コノ糞ガキ!!!
ほら、始まった。
ヒステリックな女の甲高い声はキィーキィー激しさを増し
激しい中傷に激しい叱咤。
あんなか細い腕とは思えないほどの力強さ。
背中の肉が焼ける酷い匂い。
小さな身体には、いくつものアカイ聖痕。
その愛らしい唇からは赤い蜜。
その虚ろな眼からは、泪はもう出ない。
もう、泣くことさえ忘れた。
もう、悲鳴さえ出ない。
耳にこびり付いたあの静かな音が
唯一の子守唄だった。
行為が終わってから、いつものように男が迎えに来ていた。
そして・・・
・・・そし、て?
その先に何か、あった?
たしか・・・紺色の服を着た男がたくさん来て
近所の人たちが玄関の方に群がって
外には、母の男が紺色の服を着た男に囲まれていて
中には赤い海
その中には
ソノ中ニハ
ソノナカニハ
そのなかには――――――――
ピンポーン ピンポーン
「!!?」
インターホンの音と共に は、はっと目を覚ました。
熱は引いたが、先ほどの夢の所為で酷い吐き気と眩暈がする。
耳には、雨音。
不快は増した。
は、顔を思い切り覆った。
ピンポーン ピンポーン
再び鳴り響くインターホン。
今は夕方。
暇なヤツなんてそぅはいない。
しかし、このままシカトし続けていたら訪問者が困るだろうと思った
は、重い身体を起こし玄関へ引きずった。
夢が夢で胸はズンと重りが乗ったように重かった。
「・・・はい、 です。」
重々しく蚊の鳴き声のような小さな声。
できればセールスマンであってほしかった。
断ればすむコトだから。
早く、身体を休めたかった。
《こんにちわー。柳でーす。》
しかし、訪問者はセールスマンでなく柳だった。
予想は大幅にずれた。
柳が来るなんて思ってもみなかった。
その意外性の心境は、声にも現れていた。
「・・・やな、ぎちゃん?」
《あ! ちゃん!!
へへ、ビックリさせようと思ってアポなしで来たんだ!》
「・・・ごめん、遅くなっちゃって・・・。」
《そんなことどうだってイイよ!!!
ごめん、まだ治ってないのに無理して出て来てもらっちゃって・・・。》
「ううん、そんなコトないよ。
朝に比べたら、平気。」
嘘。
本当は全然平気じゃない。
それなのに、あえて嘘をついている自分が酷く情けなくて笑えた。
《・・・何か、あったの?》
「ううん。疲れてるだけだから、平気。」
せっかく柳が心配してくれているのにも関わらず嘘をつき続ける。
何で、あえてそんなことしてんだろう。
何で、こんなに素直じゃないんだろう。
何で、こんなに私は馬鹿なんだろう。
友人を騙してまで、悲劇のヒロインを演じたいワケじゃない。
同情してほしいわけでもない。
キライになってほしいわけでもない。
素直で
心に描いた
言葉が
肝心の言葉が出ない。
とても簡単で
とても難しいもの。
どうして、たった一言。
言葉に表せられないんだろう。
あぁ、どうして
こんなに私は、キモチを伝えるのが下手クソなんだろう。
情けないを通り越して、酷く悲しくなって涙が溢れてきた。
《・・・ ちゃん。》
あぁ、こりゃぁ嫌われちゃったなぁ。
本当に何で私って馬鹿なんだろう。
何でそういう風にしか、接しられないんだよ。
失望してもイイ
なじられてもイイ
怒ったって、どんな叱咤でもイイ
お願い・・・
行かないで
捨てないで
何回でも謝るから
嫌いにならないで
泣き声を堪えると同時に拳を強く、強く握った。
可能性の低い願いを願いながら。
《御飯一緒に食べよ!!!》
の瞳が大きく見開き、溜まった涙が頬を伝った。
「え・・・?」
《病気のときに独りで食べるって心細いしね!
それに今日、私が夕食作るんだ!》
(・・・柳ちゃん・・・。)
《烈火くんもいるし、日本史の代理の立迫先生とその奥さんもいるんだよ!!》
(・・・貴女は・・・本当に。)
《きっと楽しいよ!それに、今日学校で面白いコトあったんだよ!!》
(何て、何て・・・。)
《 ちゃんに訊いてほしくて、さっきからムズムズしてるの!!
それに、 ちゃんに逢いたかったんだ!!!》
(優しくて、暖かい人・・・。)
自分を必要としてくれる人がいるというのが、
すごく嬉しくて嬉しくて・・・
涙が止まらなかった。
《 ちゃん?どうしたの?
やっぱりまだ熱下が
「食べる!!
ちょっと、待ってって、支度してくるから!!」
柳の言葉を遮って、 は涙を拭き
部屋のクローゼットへ駆け込んだ。
雨は小ぶりから大ぶりになってきている。
この時間帯はいつもは、明るいのだが雨の所為で
やけに暗い。
しかし、3人の会話はその暗さを吹っ飛ばすような明るさがあった。
「私、大勢で御飯食べるの初めて。」
「そうなの?」
「うん、ずっと独りで食べてたからさ。」
「じゃぁ、腕がなるわね。おじょうちゃん。」
「はい、お姉さん!」
「で、夕食のメニュー決まってるの?」
「うふふ、なーいーしょー。」
「できるまで内緒ってコトかい。
イイもーん、すぐに当ててやるからさ。」
「あらあら、それじゃあすぐにバレるわねぇ。
あ、あそこが私のい・・・
立迫先生の奥さん、博子の表情が
一瞬にして白くなり、買い物袋が水溜りに落ちる
瞬間と同時に悲鳴に似た声を上げた。
―――――――あなた!!!!!!」
「「!!?」」
そこには、小さな可愛らしい少年といかにもマッドな男が立迫先生を
おぶっていた。
悲鳴に気づいてか、マッドな男はコチラに気づき
いやらしい笑みを浮かべコチラへものづごい速さで向かってきた。
ゾクリと厭な悪寒が走った瞬間にコトは起こった。
マッドな男の身体から太い木の根が何本も突き抜け、
博子の身体に刺さった。
博子の身体から、そして木の根を伝って、血がその場に溢れた。
「いやああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
思い出した
あの赤い海の中には
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」
あの赤い海の中には
あのあかいうみのなかには
アノアカイウミノナカニハ
母がいた
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー!!!!!」
「「!!?」」
雨にも関わらず、 の感情の表す禍々しい巨大な炎。
マッドな男――木蓮に突っ込んでいった。
「ああぁぁぁ!!!!」
理性の切れた は、荒々しく大ぶりな攻撃をした。
木蓮と、小さくて可愛らしい少年――小金井がよけるのが速いというのもあるが
当たりも掠りもしない。
せっかくの攻撃もこれでは意味が無い。
「ねぇ、木蓮この子ってもしかして!!」
「もしかしてどころじゃねぇ。
紅麗が云っていた“炎術師の女”だ!!!」
雨によって炎の火力は予想以上に落ちているのを
確認した木蓮は、 の背後に回った。
「俺は、炎は嫌いだがぁ――――――
雨なら怖かねぇぜ!!!!」
「あぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」
大きな水溜りの中に木蓮によって倒され、 から生まれた炎は
あとかたもなく鎮火してしまった。
全力を出して抵抗しても、男と女の力差。
まず、勝てるわけがない。
それでも、 は抵抗を続けた。
「残念だったなぁ、今が雨じゃなかったら御自慢の炎が訊いてたのによぉ。」
「うぅぅっっ!!!ああぁぁぁっっ!!!!」
の前髪を鷲掴みし、木蓮は先ほどと同じように
いやらしい笑みで を見た。
それでも は屈せず、木蓮を鋭い瞳で睨み続けた。
「オマエは殺さねぇよ。
紅麗が無傷で連れてこいって命令なんでね。
ま、睡眠草でも嗅いで逢える夢でも見てな。」
「・・・ぁっ。」
木蓮の指輪から香る甘い匂いを嗅がされ、 の意識はすぐさま朦朧となった。
睡眠草が訊いてきたのを確認すると、木蓮は を手放した。
水溜りにうつ伏せになっても、起き上がれなかった。
瞼がとても重く、力が少しも入らなかった。
「 ちゃん、 ちゃん、
ちゃぁぁぁあん!!!!」
視界には、何かを叫んでいる柳の姿と赤い色
聴こえるのは、あの日と変わらない雨の音
年月は経っても、実はあの日から私は何も変わってなかったんだ
コメント
うわーーーー。最初っから見事なるダークです。
ってか暗すぎです。
っというか、私の経験(?)っぽいのも入ってますし(汗)
ってかなんなんですか、あの母親は!!?(怒)
児童相談所もしくは某M弁護士に訴えちゃりますよ!!!(怒)
まったくもー、なんなんですかね、本当に(怒)
ヲホホホホホホ、拉致るのスキですね、私vvvv
やっぱり、髪伸びるの早いですからねぇー(関係ありません)
うははー、次から紅麗サンぶち(たくさん)出すぞー!(キャイキャイ)