寂しくなんてないよ
悲しくなんてないよ
羨ましくなんてないよ
イイ子だから、待ってるよ
泣かないよ
『ひとり』
此処は、忍者で有名な木の葉隠れの里。
空は快晴、雲ひとつなし。
この快晴に、一人の声が大きく響いた。
「今から、この間あった筆記テストを返す!
平均以下の者は、放課後ランニング10週だ!!」
木の葉の中忍忍者であり、アカデミーの先生であるうみのイルカだ。
今年のクラス担当は、一年生、つまり新米のアカデミー生だ。
イルカの云うことを訊いてクラスの生徒たちは「えぇー。」
子供特有の反応をし不満の声を上げた。
「えぇーじゃない!!いくぞ!
はい、 マチノ!」
イルカは、生徒たちの言葉を無視してテストを順々に返して行った。
「はい、次。 ハオン。」
・・・
「・・・ いなづき ハオン。」
・・・
しかし、教室の中に『 いなづき ハオン』の声は響かなかった。
イルカが目をこらしてよくよく見てみると、 ハオンハオンの席に誰も座っていなかった。
どうやら、また授業をサボっているらしい。
「せ、先生。」
みつあみがチャームポイントの学級委員の マチノが手を恐る恐る上げた。
「どうした?」っとイルカが マチノに尋ねた。
「 ハオンちゃん、また木の上にいますよ。」
マチノが、窓から見える木を指した。
木は、この木の葉隠れの里で一番でかい大木のてっぺんに
一人の少女が又借り座っていた。
「あの馬鹿は、いつもいつも・・・。」
ある意味問題児のナルトが大きく羽ばたいて、
安心していたが・・・今度はコイツだ・・・
イルカは大きくため息をついた。
「今日もいい天気だなぁ・・・。」
空は快晴、雲ひとつない清々しい空。
ハオンは、空を見上げてぼんやりしていた。
「 ハオン。」
自分の名前を呼ばれたと同時に、見覚えのある男が
ハオンの目の前に現れた。
「・・・あぁ、イルカ先生。おはようございます。」
現れたのは、ご立腹のイルカだった。
「おはようじゃないだろう、授業にいい加減に出ろ!!」
のんびりしている ハオンにイルカは怒鳴った。
「だって、もったいないですよ。」
ハオンは、瞳を閉じ腕を左右にいっぱいに伸ばし
「こんなに綺麗な天気なのに。」
ハオンの声は、広大な空に吸い込まれていった。
「いいか、このプリントをちゃんと
両親に見せること。いいな!以上、解散。」
ガヤガヤと教室中が一時生徒の声で賑やかになった。
その中、 ハオンは、じっとプリントに刷られている文字を見て
ぐしゃっとプリントを握り潰した。
「 ハオン。」
「何ですか先生?」
「ちゃ〜んと、さっきやったプリントをご両親に見せるんだぞ。」
念には念と思い、イルカはネチっこく云った。
ハオンは、握り潰したプリントを机の中奥深くつっこんだ。
「わかってますって。」
ニカっと ハオンは笑った。
「お前、元々頭いいんだから、ちゃんと授業でれば
来年には、中忍試験だって受けられる実力だぞ。
中忍になって各地の動物を保護するのがお前の夢なんだろ?」
イルカは、 ハオンのテスト用紙を ハオンの机の上に置いた。
問題数50問、配点2点、正答100点満点。
文句なしの解答用紙である。
「それなのに、授業を毎度毎度サボりやがって。
そんなんじゃぁ、皆に置いていかれるぞ。」
ハオンのことを思って云っているのに彼女は全く
イルカの云うことを訊いてくれない。
ハオンの実力は、10年に一度の逸材ぐらいなのに。
イルカは、教職者として彼女を忍びの世界で
通用するような立派な忍に育てたいと思っていた。
しかし、当の本人かこれでは何ともできない。
「でも、すっごく綺麗な空だったんですよ。
そういう日には、やっぱりおてんとうさんが恋しくなりますよ。」
「お前は、どこの老人だ。
いいか、とにかくお父さん、お母さんにサボリのことは
お話しするからな。ちゃんと渡すように。」
そういうとイルカは、教室を出た。
「お父さんと、お母さん・・・か。」
ハオンは、握り潰したプリントを広げ独り残された教室でポツリと呟いた。
プリントには、『授業参観』と書かれていた。
此処は、職員室。
ガラ
「遅かったじゃない。」
重い足で職員室に入ったイルカを見て、アンコが声をかけた。
「あぁ・・・ちょっとな。」
「また、 ハオンちゃんのことだろ?
あの子も頭イイクセに変な気起こすわよね。」
アンコは、ズズっと熱いお茶を啜った。
どうやら、また好物の団子をたらふく食ったらしい。
アンコの机の上にある皿の上には、竹の串が何十本もおいてあった。
「何であんなことするんだ?」
イルカは、机に座り頭を抱えた。
「さぁ。家庭で何かあったんじゃない?
虐待とか・・・喧嘩とか・・・。
訊いてみるのが、一番と思うけどな。」
「私もそうした方がいいと思うわ。」
紅も話しに割り込んで来た。
「それに、まだ6歳だし。
親離れできてないってこともあると思うし。
私の担当するクラスにもそぅいう子いたわよ。」
あぁそういえば、以前イルカが担当したクラスにも
親離れができていない生徒がいた。
イルカは、突然立ち上がった。
「どうしたの?」
「俺、ちょっと ハオンの家に行ってくる。」
そう云って、イルカは夜の闇に紛れていった。
外は、満月の美しい夜。
幾千の星が飛び交う広大な黒色の空。
活気付いている里も、夜になれば昼間が嘘のように静かになる。
その中に、一つの影が生えていた。
「えっと・・・たしか・・・この辺りだったよな。」
一つのメモ書きを手にし、イルカは辺りをキョロキョロと見渡した。
幸運にも、今夜は満月なので明かりの心配はいらないのでよかった。
メモ書きに書いてあるのは、 ハオンの家の住所。
行こうと思っていたが、住所が解からなかったら意味がない。
殴り書きだが、だいたいこの辺りということはわかった。
「あ、此処だ。」
やっとこさして、 ハオンの家にイルカは辿り着いた。
しかし、着いたのはいいが様子が辺りとは違った。
明かりが、一つも点いていなかったのだ。
「あれ・・・おかしいな。
明かりが落ちるには、まだ早いはずなんだが・・・。」
念のためにベルを鳴らすが、返事もなければ明かり一つもなかった。
っというか、いるはずの ハオンがいないのがひっかかった。
「 ハオン、いないのか?
ハオン!」
ドンドンと玄関のドアを叩いたが、 ハオンの透明なソプラノの声は
さっきと同じように帰って来なかった。
「おんやぁ、誰だい?こんな時間に。」
「あ、貴方は?」
ハオンの代わりに帰っていた声は、おばさんの声だった。
おばさんは、丸々太っていて大ぶりの派手なイヤリングをつけているのが
印象的だった。
「アタシかい?
アタシは、隣りのソノさ。アンタは誰だい?
見たところ・・・忍者のようだけど。」
ジロジロとソノと名乗るおばさんは、イルカの忍び装束を下から上まで見た。
「俺は、アカデミーの教員のイルカです。
いなづき ハオンさんのクラス担当で、両親にお話しに」
「はぁ?アンタ、何馬鹿なこと云ってんだい!!
本当に、先生かい?」
イルカが全部しゃべる前に、ソノが大声で割り込んできた。
しかも、内容は自分が知らない内容。
イルカが驚くのも無理はない。
「どういうこと、ですか?」
「・・・その顔じゃ、本当に知らないみたいだねぇ。
いいよ、話してあげるよ。」
ソノが大きく息を吐き、満月をじっと見つめた。
アレは、そうさね、2年前だねぇ
他の国から、 いなづき家が引っ越してきたんだよ
父さんも母さんも忍びでねぇ、あぁ、そうさね、
『暗部』に入ってるって訊いたね
アタシは、最初『暗部』って訊いて凍りそうになったけど、
いなづきさんはそんなことなかったよ
すっごく優しくて、強くて、厳しい両親だったよ
よく仕事に行ってたけどね、毎日どちらか帰って
必ず、 ハオンちゃんを寂しくないようにさせてたねぇ
ほら、当時っちゃーいっても変わんないけど、あの子5歳だっただろ?
すっごく優しい忍びだったねぇ
ところがね、1年前大きな仕事があってねぇ
両親のどちらも、彼女の元には帰って来なかったよ
先生・・・云っている意味解かるかい?
ハオンちゃんの両親は、もぅこの世にはいないんだよ
半年以上前に、もぅ死んじまったんだよ
「・・・綺麗な満月。
お父さんもお母さんもきっと見てるよね。」
ハオンは、満月を見上げて云った。
こういう満月の日にはよく母親が団子をつくり
縁側で父親と食べ比べをしたものだ。
思い出すと ハオンの頬が自然と緩んだ。
「 ハオン!!!」
自分を呼ぶ声
お父さん、お母さん
違った
ハオンの目の前に現れたのは
「先生・・・。」
イルカだった。
「心配したぞ・・・家にも帰らずにこんなところにいて。」
「人を・・・待っているんです。」
「・・・ご両親、か?」
重々しい沈黙の中、イルカが云った。
「・・・えぇ。」
少し間をとって、 ハオンは頷いた。
「・・・。」
ハオンちゃん・・・
授業出てないんだろ
理由教えてやろうか
待ってんだよ
両親を
両親がねぇ、
死んだことを云いに云っても
あの子は・・・信じなかった
両親がまたこの
木の葉隠れの里に帰ってくるのを
彼女は、木に登り
昼も夜もずっとずっと待ってんだよ
あの木、里全体を見渡せるだろう?
本当に、逢いたいんだろうねぇ・・・
『お父さんとお母さん帰ってきて』
「とにかく、家に帰ろう。
このままじゃ、お前が風邪を引くだろう。」
ハオンに手を差し伸べたが、 ハオンはイルカの手を取らず
イルカの方をじっと見つめた。
「 ハオン?」
「家なんて・・・帰りたくありません。」
強い、風が吹いた。
「呼んでも帰ってこない返事」
オトーサン・・・
オカーサン・・・
「おいしくても、ちっとも暖かくない料理」
ハオンチャン、オカーサンノ料理オイシイ?
ハオン、オトーサンノ自信作ダ
「もぅ、傷がつかない庭の木」
ハオン、見テロヨ
オトーサンノ手裏剣ヲ
「大きすぎるベッド」
ハオンチャン
ハオン
オヤスミ
「あんな、誰もいない家なんていたくよぉっっ・・・!!!」
ハオンは、大粒の涙を浮かべイルカに想いのスベテをぶつけた。
家にいたら
思い知らされる
両親の残り香
両親の思い出
両親の死
「お父さんとお母さんは帰ってくるんです、
また私を抱きしめてくれて、また私の名前を呼んでくれて、
また私の頭を撫でてくれます!!!
死んだなんて嘘だ!!!」
イルカが、 ハオンをギュっと思い切り抱きしめた。
「イルカ・・・先生・・・?」
「俺・・・ ハオンと同じように両親死んで独りぼっちだったんだ。
だから、生徒には絶対同じ経験させないって決めたのに・・・」
成績がよくても
自分を褒めてくれる人はもぅいない
親のいる友達が羨ましくて 羨ましくて
家に帰っても
暖かな声と暖かな料理はもぅない
訪れるのは、孤独
後ろを見ても
誰も自分を見にこない
授業参観はとっても大嫌いだった
誰カ
僕ヲ観テ
僕ノ存在ヲ認メテ
この悲しみを一番解かってるつもりだった
なのに
自分と同じ境遇の子を
護るどころか 傷つけてしまった
「ごめんなぁ・・・ごめんなぁ・・・ ハオン。
ずっとずっと気づかなくてごめんなぁ・・・。」
イルカは、 ハオンを更に思い切り抱きしめた。
涙を流し、イルカは自分が今までしてきたことを謝った。
ハオンは、それを訊き大声で泣いた。
今までの、悲しみをゼンブ涙と声に替えて
「先生ー、起きてください。」
イルカの身体をユサユサと ハオンが揺らす。
ハオンが着ているサイズのでかい青いエプロンは、
イルカのものであろう。
「んぅ・・・。」
イルカは、重い瞼をゆっくり開けた。
そこには、すっかり元気になった ハオンの姿。
「朝ご飯、できてますよ。」
「どうですか?」
「どうって・・・こんな黒こげ食えるかぁ!!!」
イルカの前に出されているのは、真っ黒こげこげの目玉焼き。
目玉焼きというより、炭だ。
「・・・すみません・・・張り切りすぎて。」
しゅんとなって、 ハオンは謝った。
パク
ハオンが顔を上げたときには、
失敗作の目玉焼きを食べているイルカ。
「・・・先生?」
「嘘だよ・・・うまいよ。」
ニカっと笑って、イルカは ハオンの頭を撫でた。
「・・・ありがとうございます!!!」
今まで見せたことのない笑顔で、 ハオンは太陽のように笑った。
「今日・・・一緒に手裏剣練習しような。」
ポリポリと頬を朱に染めてイルカが ハオンに云った。
それを訊いて ハオンは、更に笑顔になった。
「はいっ!!」
お父さんとお母さんが死んで
寂しいです
悲しいです
でも
悲しみに負けては駄目なんです
私には お父さん お母さんに貰った
“優しさ”があるんですから
もぅ 独りじゃないんです
そぅ 気づかせてくれたのは
「遅刻するぞ、行くぞ。」
イルカ先生 アナタです
にしき様に捧げる 相互記念ドリーム小説
相手:うみの イルカ
コメント
こんにちわ、にしきくん!
相互リンクありがとね!!
また逢えて本当に嬉しかったよ!!これからも、末永くよろしく。
シリアス一直線な作品でごめんよ、ってかイルカ先生がエセだぁ(涙)
ちなみに、ヒロインはイルカ先生に引き取って一緒に住んでるんよ☆