人間の男に恋焦がれた人魚姫は

海の魔女に懇願し

愛する人間の男と同じ人間になりました

しかし、人間となる誓約に

海一番美声の人魚姫の声を奪ってゆきました



人魚姫は人間の男の目の前に現れました

夢が叶ったのです

人間の男に愛され、愛したいと欲す人魚姫ですが

海の魔女との誓約で

その美しい音色を奏でる声は二度と紡ぐことはありませんでした

人魚姫が人間となったのに

人間の男は、最後には人魚姫を売りさばき裏切ってしまいました


愛する人間の男のために

自慢の美しい声としなやかな尾を失い

友達と家族と別れた人魚姫は

それでも、幸せだったのでしょうか


いや


本当に、幸せだったのでしょうか?

























M T I R


































「依頼人、どうして此処に!!?」

吹き荒れる風がえらく強い。
の長く黒い髪は、奏でるように揺れいでいた。
ゴウゴウという風の音に沿って、依頼人―山田は口を開いた。




「【幻の錬金術師】よ。君たちには誠に申し訳ないと思っているが………




契約は破棄だ。」






「そんな!!!勝手すぎるわ!!!!
理由を云いなさい!!!それじゃないと納得いかないわ!!!!!」

が声を張り上げて、腕を振った。
蛮が相手でも同じコトをいうだろう。
途中で契約破棄など、特別何かあったときにしか云わないものだ。
しかし、今はそんなかんじではない。

の顔が怒りに満ちていた。


「君らが上海側のマフィアに捕まると私の立場が危ないのでな。
このことも考えておいて、爆弾をしかけておいた。」

瞬間に、頭が真っ白になった気がした。




バ ク ダ ン

コ ノ フ ネ ニ ?




まだ乗客が何千、何万という数がいるというのに?

関係ない人がこんなにもいるのに?

たかが、私たち、奪還屋、運び屋のために?



権力の高いヤツに限る私利私欲な理由。
吐き気がした。
の怒気は更に増していた。



「な、何ですって!!?」

「悪く思わんでくれ。」

「テメェー!!!ジジイ、フザケンじゃねーぞ!!!」

「ば、ん…」

隣りを見ると たちとは全く関係ない蛮が自分同様怒鳴っていた。
蛮は今にも山田に食ってかかりそうな勢いだった。
山田は、下顎髭をひしゃくげって2人を見下ろした。



「イイだろぅ?皆仲良く死ねるのだから。
むしろ私に感謝してほしいものだよ。
あぁ、ちなみに私に攻撃しない方がイイ。
このボタンを押してしまうよ。」

握られているのは、きっと爆弾のスイッチ。
たちの能力を恐れているからだろう。
しかし、最後の最後まで何て汚い。

悔しい。
私は、こんなクズさえたった一発すら殴りさえできない。
怒りを超えて涙が の視界を揺れさせた。



「このブタチャンマン」

「ブ、ブタ……………………………………」

「な、何かね(ピクピク)」







「 後 で 覚 え て ろ 」





その瞬間、辺りの空間がガラっと変わり悪寒のような恐ろしい空間に変わった。
空間いや、原子一つ一つからピリ、ピリと肌に伝わってきている。
その鋭い殺気は、蛮が放っている。
例えるなら、蛇に睨まれた蛙。

『邪眼』一体、何なのだろう。
ふと、そういう思考が の頭に過ぎった。

恐怖で山田の顔から汗が落ちた。
が、ヤツには爆弾のスイッチという
強い味方がいる。
これさえあれば奪還屋の蛮も何でも屋の も手出しは不可能。

自分が殺される確立はゼロに等しい。



「は、はははははははは!!!!!
生憎、チンピラの顔を覚える知能は持っておらんのでな。
では、諸君さらばだ。」

山田の恐怖で裏声った高笑いは、夜の闇に吸い込まれて、気味の悪い高笑いと
ペリコプターのエンジン音と波の音と風の音がその場に残った。



「クソ、あのブタチャンマンが!!!!!」

怒りが収まらない蛮は、拳を思い切り船に叩きつけた。
ふと、後ろを向くと が泣いていた。



「泣くな、まだ終わったワケじゃねぇ。」

「……ひっ………っく………で、でもっ……あたしたち………せいで
………か…けい……な…人………」

泣いている所為で言葉は切れ切れだったが、 が云いたいことは
厭でも分かった。
蛮は、あやすように頭を撫でた。



「お前のせいじゃねぇよ。
悪いのは、あのブタチャンマンじゃねぇか。
何でもかんでも自分独りが悪いなんて考えんな。」

「…」

「それによ、お前には仲間がいるじゃねぇか。」







無事!!?」

「……卑、弥…呼、……赤屍!!!」

後ろから来た卑弥呼と赤屍に気づくと は悲鳴に似た声を上げた。
でも、それは何処か嬉声に聴こえた。
マフィアのおかげで船の崩壊音が酷かったが、 の声は幸いにも届いていた。



「大変なの!!!山田がいきなり契約破棄だと云いだして…

この船に爆弾を仕掛けたって!!!!」


「何ですって!!?何でそんなこと!!!」

「大方、中国マフィアに接触したり、厘を開けられたりしたら、そういう設定に
していたんだろうよ。」

「蛮どうして此処に!!?」

「たしかに、私たちが捕まったりしたら御自分の立場が危ういでしょうしね。
意外に知恵の働く御方だ。
しかし、そこまで私たちをナメられているというのは、ゲセませんねぇ。」





タタタタタタタタタタ





「蛮ちゃーーーーーーーーーーーん!!!!」

続けて、相棒の銀次も来た。
あちこち傷が出来ていたが致命傷までいたっていなかった。
銀次は蛮を見つけると、いつものようにタレ銀に変身し
蛮の頭にのっかり再会を喜んだ。



「お前、この状況分かってんのか?」

「いやー、参ったよ、本当にさー。
あの後ブラブラしたら、赤屍さんに出会っちゃってさー。
もぅ大変大変。」

「私は銀次クンに出逢えて嬉しかったですよ。
クス 私たちもしかして
運命の赤い糸で繋がっているかもしれませんね。」

「そ、そそそそそそんな、カヅっちゃんじゃあるまいし………」

「銀次クン照れているのは、分かってますから。
何も云わずこの私の広い胸に
ダイブ・インしてきてください。
さぁ、さぁ、さぁさぁさぁ、さぁ!!!!!」

「遠慮しときます、本当に遠慮しときます!!!!!!」

「よかったなぁ、銀次。
素敵な御婿さん(?)ができてよ。」

「ばばばばっばばばばば、蛮ちゃん!!!?」

「クス 云わないでくださいよ、美堂クン。
銀次クンは照れ屋なもんですから、ねぇ?」

「って俺に振らないでくださいよ!!!!」




「何やってんの、アイツら。」

卑弥呼が蛮たちの方を向いて溜息を吐いた。
後少しの時間で爆発するこの豪華客船、卑弥呼には少し信じがたかった。



「ごめん、卑弥呼。」

「え?」

「私が、チンタラしてるからこんな悲惨なことになっ「あれ、 。」

「へ?」

「目赤くしちゃって…。
まさか、蛮に何か変なコトされたんじゃぁないでしょーねぇ!!!」

「え?卑弥呼、爆弾の、コト」

「爆弾しかけられたぐらいでどーしてアンタ独りが悪いコトしたみたいに
しょげるのよ。それより、どーして目ぇ赤いのよ!!!!」




何でもかんでも自分独りが悪いなんて考えんな




「アイツを庇うことないのよ、 !!!
ねぇ、何があったの!!?」




それによ、お前には仲間がいるじゃねぇか




「ううん、何でもない。何でもないよ。」

胸があたたかい。
カラカラに干からびた心が温かい水で潤されるように。
私は、もぅ、独りぼっちじゃない。
傍にいて、支えてくれる仲間がいる。





「あのね、卑弥呼…私ね








ドンドンドンドンドン











「「「「「!!!!!!?」」」」」

いきなり船が大きく揺れ、爆発した。
船の破片が飛び散ったが、流石裏業界の兵達見事に避けた。



「ちっ、もぅしやがったか、あのブタチャンマンが!!!!」

「蛮ちゃん、『M T I R』は!!?」

「馬鹿野朗、それどころじゃねぇ、逃げんだよ!!!!」

「え?」

そういうと状況が把握できている、蛮、 、卑弥呼、赤屍は
一斉に甲板へ向けて走り出した。少し遅れて、銀次も4人の後を追いながら走った。

此処は船でいうと地下の方だ。
このままスネイクバイトや腐食香などで壁を破壊することは不可能ではないが
爆弾による崩壊のせいで生き埋めになる可能性が高い、そうなれば
どうにかして甲板(もしくはそれに近いところ)まで行けばイイ。

















「えぇーーーーーーーー!!!!!
そんな、何だよ、そいつ、ムカツクなー!!!」

状況を蛮から把握した銀次は不快を示した。
だろっと相棒の蛮は頷いた。



「御喋りもイイですが、予測できない崩壊なので
気をつけてください。」

目の前の障害物を細かく切り刻む赤屍が銀次に云う。
どうやら彼は、切り刻む相手が人間(特に銀次)でないのに不満そうだ。
銀次がそれに緊張した声で頷く。






ドン ドン ドン ドン






「あっ………」

運が悪いことに銀次の足場が綺麗に崩れ
銀次は吸い込まれるように下へ落ちていった。



「銀次ーーーーーーーーーーーー!!!!!!」







「ほーんと、君ってほっとけないタイプだよね。」

ちゃん!!!!」「「 !!!!!」」「 さん!」

間一髪、まさにその言葉どおりだった。
銀次が落ちたのを瞬時に見、そして救い上げた。

そして、傷だらけの銀次を見て顔を歪ませた。



「まっ、怪我させてその判断をにぶらしたのは私なんだけどね。ごめんね。


汝 癒しき妖精なり 「 、そんなボロボロの身体で魔法使っちゃ駄目!!!」

汝 汚れを知らぬ純粋なり  クテタリヤ アテクテタ

汝 「 !!!!」しなやかき乙女なり 

汝 下々に優しき足を下ろす者なり クテタリヤ アテクテタ

「優しいね、卑弥呼。でもね、私がそうしたいんだ。ごめんね。」


アレクレイム・レイアー(聖母マリアの息吹)」

暖かい光に包まれた銀次の傷が見る見るうちに消えていった。





「ふっかーーーーーーーーーーーーーーーーつっっ!!!!」

銀次はそう叫ぶとビチビチとその辺を動き回った。
銀次の治癒力と の治癒魔法も助け銀次は文字通り復活を遂げた。

「すごいすごい!!!!
宵爛軒ラーメンってこういうのもあるんだね!!!!」

「…宵爛軒…ラーメン。」




バコ




「ビックリさせんじゃねーよ、この馬鹿!!!

「蛮ちゃんいーたーいー。」




「あははははははっははははは!!!!

あはははは、はははははは!!!」

GBの2人が見上げるとそこには腹を抱え、
本当に腹の底から笑っている の姿だった。



」「 ちゃん」


「ごめんね、あはははは!!!悪気はないの、でもっ、ははははは!!!」




「馬鹿野朗、笑われたじゃねぇーか。」

蛮が恥ずかしくなり相棒の銀次を小突いた。



「へへ、へへへへへ」

「んだよ、気色悪ぃー。」

「蛮ちゃん、俺ね、思うんだ。」


「例えね、どんなに冷静に振舞おうと、こんな仕事しておうと、敵だろうと、




ちゃん、笑ったほうがイイよね。」


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁ。」




















、蛮、コッチよ!!!!」

「卑弥呼!!!」

「早くして、もぅもたないわ!!!」




「オイ」

「?」

「後で、ちゃんとした返事よこせよな。」

は、頬を朱に染め、コクンと大きく首を縦に振った。
それを見た蛮は、銀次と の先を行き、行く手を阻む崩れさる船の残骸を粉々に砕いていった。










「!!?」



「えーん、ママぁ、ママぁ…」





船の本格的な崩壊に独り残された女の子


泣いている

独りで

そこには何もないのに

唯、泣く




『えーん、えーん、えーん』


両親の名は呼んでいないが、

そう、あれは………、独りぼっちになった私だ…………











?」

、何してんの!!!?早くしないと!!!!」

ちゃん!!!!」

さん!!」

後ろから蛮と卑弥呼と雷くんと赤屍の声が聴こえたような気がした。

そして、ゆっくりと少女に近づき

泣く少女を思い切り抱きしめた。







「もぅ、大丈夫よ。今すぐ、ママの所に連れていってあげるね。」

「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」


救われたかったんだ、私はこういうかんじで

『大丈夫』と、云ってほしかったんだ

抱きしめて、掬いとってほしかったんだ

悲しみも恐怖もそして私自身も




足元から現実の音が聞こえる

ビキ、ビキビキと

大きな轟音を立てて

あぁ、どうしてかしら…

恐いなんて、想えない

寧ろ何故か幸せで











「雷くん」

「わっっ!!!!」

「この子、お母さんのところに連れて行ってあげて。」

「わ、分かった!!!!」



落ちる瞬間、 は蛮に微笑んで目を伏せた。






ーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

相棒銀次を振り払い
蛮が が落ちた大きな穴へ を追いかけに落ちた。
銀次も後を追いかけようとしたが、船の本格的な崩壊が迫り、
卑弥呼が銀次の身体を思い切り自分のところへ引っ張った。






ドーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン



「蛮ちゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!!」


銀次は大きく爆発炎上する豪華客船を波に揺られながら只、見ることしかできなかった。




コメント

お久しぶりUPでございます。
お待ちになっていた皆様、大変焦らしちゃいました、すんません。
赤屍氏、男女の国境を超え、ひそかなセクハラを云ってます(哀れ某G.A氏)
ダイブとかありえません(滝汗)
依頼人裏切っちゃいましたねー。まぁ、山田太郎さんですし。
さて、次で最終話、完結です!長かったです。
そして、これをきっかけに次のこのヒロインでの新連載もどんと同時更新予定。
ヒロイン好きにはたまらん(?)連載になると思います(たぶん)
もちろん蛮ちゃんでラブちんさせますよー、赤屍さんもヤヴァいですよー。