愛情は底なし
幾等でも
幾等でも
ほしいと求めてしまうもの
『 愛情ベイビー 』
「 ちゃーん。」
アユ姉の元気な声が台所に響き渡った。
「はいはーい。アユ姉何か用?」
アユ姉が呼んだ直後台所の奥から がパタパタと足音を
鳴らしながら台所に入ってきた。
の着物のあちこちが濡れているのを見るからに
さっきまで洗濯をしていたんだなっと思った。
アユ姉は心の隅で悪いことしたわっと呟いた。
それでも は悪い顔一つせずせっせと気を利かして働いている。
アユ姉はそんな が大好きだった。
「コレ、見てぇな。」
そぅ云ったアユ姉の腕の中には、
髪は黒く、クリクリと真ん丸いビー玉のような黒い瞳、
プクっと膨らんだ頬にサクランボ色の唇、
なんとも愛執漂う赤ちゃんが納まっていた。
「か、可愛い〜〜〜っ!!!!
どうしたんですか、この赤ちゃん!?」
赤ちゃんを一瞬で見た はその可愛さにやられた。
赤ちゃんというのは、 やアユ姉だけでなく、見た人誰もがその可愛さに思わず
笑みを浮かべてしまう不思議な生物だ。
「可愛えぇやろ?
よー行く八百屋はんあるやろ?
あそこのおばちゃんがな、一泊ほど温泉旅行行きはるんて。」
アユ姉が赤ちゃんの柔らかい黒い髪をゆっくり撫でながら云った。
八百屋のおばちゃんといえば、
ほっちゃりした元気で活発で気前がよくて、非常に泪モロい人柄で
商店街うんぬんというより誰にでも好かれていた。
たしか、数ヶ月前そのおばちゃんに一児が授かったというのを訊いていた。
「で、この赤ちゃんを預かってと。」
「そぅいうことや。
ちゃん、私な今日仕事あんねん。
せやからこの子頼んでえぇ?」
「え!?!?
で、でも・・・御飯どうするつもりなんですか!?洗濯に洗物も!!!」
そぅなのだ。
食事、掃除、炊事、洗濯etcこの屯所で働くのは容易ではない。
アユ姉と が2人がかりでも夜には2人ともバタンキューになるぐらいだ。
一日でもやらなかったら、屯所は終わりだ。(ある意味)
「安心せぇや。
それは、私が全部やったるさかい。」
「それはアユ姉に悪いですよ!
仕事あるの」
が喋る途中でアユ姉の綺麗な手が の口全体を覆った。
「アンタは何でもかんでもギバりすぎや。
私にまかしてーな。」
「で、でも・・・。」
「何や?私のコト信じられへんゆーんか?」
「い、いや。
そんなコト・・・ない・・・で・・・す。」
アユ姉の押しに負けて が折れた。
アユ姉のコトを思って が云ったコトはちゃんとアユ姉にも伝わっていた。
アユ姉は嬉しそうな笑みを浮かべた。
「そやろ。私そこまで弱くあらへん。
心配してくれてありがとな。」
そぅ云って の頭を撫でた。
は照れくさそうにニヤっと歯を出した。
アユ姉は、 に赤ちゃんをそっと渡した。
「なら、頼むで。」
「はい、任せてください!」
は元気に返事をした。
の腕に収まっている赤ちゃんは自分が抱いているときとさほど変わらい表情だった。
それにも安心したアユ姉は、 がさっきまでやっていた
洗濯の続きでもしようと思い台所を出た。
「・・・あ!」
アユ姉が何かを思い出したように立ち止まった。
それに気づいた はすぐさまアユ姉に「どうしたんですか?」っと尋ねた。
しかし、アユ姉の顔は何かを企んだような表情だった。
「 ちゃん、一つ仕事頼んでえぇやろうか?」
「えぇ、かまいませんけど。」
アユ姉は、台所の隅に置いてあった一人分の食事を の前に持ってきて
「コレ、副長の朝飯や。」
「・・・ま、まさかぁ・・・」
「・・・なんでこうなるのかなぁ・・・。」
気づけば は、片手に赤ちゃん、もぅ片方には土方さんの食事と
赤ちゃんの食事を持って廊下を慎重に歩いていた。
「絶対駄目ですって!
赤子の世話で手一杯で土方さんの御世話できないですよ!!」
「ゆっくり朝ご飯食べさせたらえぇやないのvvv
夫婦みたいでv赤ちゃんんもいるしなv」
「アユ姉っっ!!!!!!」
『夫婦』という単語で、 の顔は真っ赤に染まった。
(もぉ〜、アユ姉の所為で顔が真っ赤じゃないのよ。
帰ってきたら覚えておいてくださいよ。)
「ぁ〜。」
「あ〜ごめんね。
すぐ御飯にするからね。」
さっきからずっと頭をぐるぐる廻っている『夫婦』という
単語に葛藤していた は、赤ちゃんの声で現実に戻った。
赤ちゃんを安心させるように微笑みをかけた。
土方の部屋の前で食器類を置き、
軽く障子を2,3度叩いた。
「土方さん、朝ご飯持ってきましたよ。」
「・・・。」
返事は返ってこなかった。
他の人間なら何回も戸を叩くのだが
は、もぅ慣れたコトなのでそのまま障子をスルスルと開けた。
「失礼します。」
が思っていたように、土方はまだ夢の中にいた。
昨日も遅くまで仕事をしていたのだろう。
机の上に積みあがっている書類がそれを物語っている。
土方の寝床の傍に座り、 は土方の身体をゆっくり揺さぶった。
「土方さん。土方さんってば。」
「・・・あぁ?」
土方は伏せていた瞳を少し開いた。
今日は、総司の嫌がらせ(?)ではなくて、土方は少しほっとした。
「おはようございます、朝ご飯もってきましたよ。」
ニコっと は笑いかけた。
「・・・あぁ。」
土方は重い身体をゆっくり起こした。
そのときに、味噌汁の匂いが伝わってきた。
上に羽織る黒い薄着物を羽織り、 が朝ご飯を持ってくるのを待った。
「ぁ〜。」
「・・・!?」
土方は、 の腕の中にいる弱弱しい声の主を見て目を丸くした。
「何だコレは?」
「赤ちゃんです。」
「そんなんみりゃーわかる。」
「・・・男の子ですよ?」
「・・・誰も性別訊いてねぇ。
誰の子だって訊いてんだよ。」
「・・・誰の子供だど思いますか?」
「どぅやら人を怒らせたいらしいな。」
「冗談ですよ。八百屋さんのおばちゃんの子供です。
何でも、温泉旅行にいくらしく一日程預かってってくれって。」
は赤ちゃんの髪を優しくくしゃくしゃ撫でながら云った。
赤ちゃんはかまってもらっているのと思いの指をつかんだ。
その光景を見て土方は、いつもより低い声で
「・・・飯を食うぞ。」
「どうぞ。」
が淹れた御茶を差し出した。
の御茶は本当に美味しい。
あの鉄之助の淹れる御茶が少しうまくなったのも彼女の指導があったからだ。
「あぁ。」
「ぁ〜。」
「は〜いはい。どうぞ。」
赤ちゃんは「自分も〜。」っというように鳴いた。
は、そんな赤ちゃんが可愛くてしかたなくクスクスと笑い
離乳食をフーフーして赤ちゃんの口に運んだ。
赤ちゃんがそれをちまちま食べるのを見て
はまたクスクスと幸せそうに笑った。
「・・・歩クンに頼めばどうだ?」
「アユ姉は、仕事が入っているらしくて
あーーー、ちゃんと食べなきゃ駄目だってば。」
見ると赤ちゃんは離乳食の味に飽きたらしく
食べていなかった。
は「いい子だから食べようね。」っと頭を撫でた。
「・・・で?」
「アユ姉が私の仕事全部やる代わりに私が赤ちゃんの世話を
ってことで
あーーーー、それ私の指、指!!!!!(滝汗)」
赤ちゃんは自分に構ってもらえないのが楽しくないらしく
の指を咥えた。
それを見た は目を丸くして赤ちゃんの口から自分の指を離した。
「そぉいえば。山崎クンを見てないか?」
「さぁちょっとあーーーー!!!!
寝ちゃ駄目ーーー!!」
自分の胸の中で眠っている赤ちゃんの頬をペチペチと
触れた。赤ちゃんは眠たそうな瞼をゆっくり開けて
くぁっと大きな欠伸をした。
は赤ちゃんに「おはよv」っと額に唇を近づけた。
「・・・見てないのか?見たのか?」
「ったくこんなに口の周りにつけてから。」
赤ちゃんの口の周りについている
食べこぼしを指で拭き取った。
「(ブチっ)」
ゴトっっ!!!
土方が呑んでいた味噌汁が入っている御椀をその場に思い切り置いた。
コレには流石の もビックリそして注目。
幸いにも味噌汁は全部呑まれていたので、畳を汚すコトはなかった。
恐る恐るが土方に声をかけた。
「・・・ひ、土方・・・さん?」
「おめぇ、人の話し一つも訊いてねぇだろうが。」
ギロっと土方は を睨んだ。
声はいつもより低くドスが篭っていた。
どうやら完璧に怒ったみたいだ。
「ぅ・・・ぁぁああぁあぁん!!!!」
土方の殺気は赤ちゃんが怖くない筈がない。
目に大粒の泪を蓄え、大声で泣き出した。
は、赤ちゃんを土方から死角に隠しあやしはじめた。
「たしかに、そぅですケド・・・何も怒らなくてもいいじゃないですか!
泣いちゃったじゃないですか!」
赤ちゃんをあやしつつ、 は土方に食って掛かった。
もちろん土方もあれだけでは終わらすつもりはなかった。
「俺が泣かしたって云いてぇのか、おまえは!」
「だって土方さんが怒ったからじゃないですか!」
「赤ん坊の世話もロクにできんクセに預かるからこぅなるんだろうが!!!
人の所為にする大口を叩けるなら自分の仕事できてからにしやがれ!!」
あの後、土方の部屋を飛び出した は、土方の部屋と反対側の
縁側に重々しく腰をおろしていた。
「・・・はぁ〜。」
はまだ流れ出す泪を着物の裾で拭きながら
さっきまでの自分の行動を反省していた。
土方に云われたように、自分は赤ちゃんの世話でいっぱいいっぱいで
主君である土方の世話などほっぽりだしていた。
土方にあぁいうコトを云われるのは当たり前だ。
しかし、今更どの面を下げて土方に逢えばいいのだろうか。
はまた深い溜息を吐いた。
「あれぇ? サンじゃないですかぁ?」
そこには、ひょこっと自分の顔を覗き込んでいる沖田だった。
「沖田さん・・・。」
「元気ないですねぇ。どうかしたんですか?」
「・・・ちょっと・・・。」
は沖田から視線を外した。
沖田は、 の隣に腰を落とし腕に抱いていた
サイゾーを地面に放してやった。
「赤ちゃん預かっているって訊いたんですケド
姿を見ないんですケドどぅしたんですか?」
「・・・土方さんの所に置いてきちゃいました。」
「じゃぁ、迎えに行ってあげればいいじゃないですか。」
「そ、それは・・・。」
一番痛いところをつかれ は、口をごもらせた。
すると沖田が、すまなそうに口に手をあてクスクスと
笑い始めた。
「クスクス 喧嘩しちゃったんですよね?」
「え?!どぅしてそれを?
お、沖田さんって西洋の魔術(エスパー)使えるんですか!?」
「あはは、やっぱり サンは面白いなぁ〜。
面白いケド違いますよ。
たまたまアナタたちの会話訊いちゃっただけです。」
「えっ!?!?!?」
あの自分のめちゃくちゃな言い分を訊かれたと思い
は顔を赤らめさせた。
「土方さんね、アナタが赤ちゃんに取られたって思ったんですよ。クスクス。」
思い出したかのように沖田はまた笑い出し出した。
それを訊いて は、全く実感が沸かなかった。
「そ、そんな大の大人が赤ちゃんに」
「男っていうのはそんなもんなんですよ。
好きな女性が他の誰かと一緒にいたり、一瞬でも気がいってたら嫉妬しちゃうんですよ。
例え相手が赤ちゃんでもね。」
「・・・失礼しま」
おそるおそる は、土方の部屋の障子を開けた。
そこには土方の隣ですやすやと寝入っている赤ちゃんの姿と赤ちゃんが
安心するようにと身体に手を添えて寝入っている土方の姿だった。
「・・・ぷっ。」
「・・・妬かなくても、私が好きなのは歳さんだけなんですよ。」
そぉ云うと は、土方の額に軽く触れるほどの口付けをした。
「!?」
寝ている筈の土方が の背中を掴んだ。
いきなりだったので は何が起こったのかわからなかった。
どうやら土方は、狸寝入りをしていたらしい。
「お・・・起きていらっしゃったんですか・・・?」
「あぁ。」
はさっきの自分の行動を思い出し、
顔を真っ赤にさせた。
居ずらいと思った は退室しようと足早に立ち上がった。
すると、土方が の腕を掴み
の唇に己の唇を重ねた。
口付けが終わった後、更に赤い顔をさせて状況が把握できていない
に土方が照れくさそうにぶっきら棒に云った。
「・・・あんなん今に分かったコトじゃねぇよ。」
愛情に欲張りなのは
私も
貴方も
同じ
雨:土方さんもぉ最高!!!
土:・・・俺ぁ稚児なんかに嫉妬しねぇぞ(怒)
雨:またまたぁ〜、絶対土方さんそぉいいつつも妬きますよ〜v
土:・・・コレ以上口開くとぶった切るぞ。
雨:ゴメンナサーイ!
■コメント■
「愛情ベイビー」でした!
私的のツボは、土方さんが赤ちゃんに妬くところ!
萌える萌える!!!(煩い)授業中かなりそれで萌えてましたvvv
それで最後のトコロ「そんなの今に分かったコトじゃねぇよ。」
云われてみてー(萌/そっちかよ!)
アユ姉意外に黒くなっちた(滝汗)