最初見た目だけそっくりすぎて、ニコルと同じ性格と思ってたヤツらの
あの豆鉄砲くらった鳩の顔は何処に行っても拝める。

兄のニコルは、おっとりしたかんじの優しい人格で

妹のあたしは、元気で感情の激しい人格で

どう見たらあたしたちを双子だと思うんだろうね。

でも、あたしたちって双子なんだよね。


























 け た グ ラ ス

























「ちょっと、ディアッカ何処触ってんのよ!!」

バチーンという乾いた音が辺りに木霊する。
ちょうどその辺りを通りかかったニコルは、聞き覚えのある声というコトが
分かっているのもあって進める足を速めた。

其処には、ニコルの双子の妹の と、頬を擦っているディアッカの姿があった。
血の気の多い妹のコトだ、また何かやらかしたのだろう。
ニコルはすぐさまかけよった。



、どうかしたんですか?」

「ニコル聴いてってば、此のエロスマンがセクハラすんの!!
信じられる!!?」

烈火の如く怒り狂う が未だ頬を擦り続けるディアッカを強く指した。
たとえ妹がセクハラにあったとしても、いい感じはしない。
ニコルは、少し怒気を含んだ声でディアッカに尋ねた。



「本当ですか、ディアッカ?」

「しょ、しょーがねぇだろ!!
いかにも触ってくれっていう尻具合してたしよ!
純粋な青少年からしたら『グゥレイトォ!』みたいな。」

「「馬鹿じゃないの(んですか)?」」

「ふ、二人して馬鹿はねぇだろー。
男はな、色々と大変なんだぜ!!
『大変だねー』ぐらいの慰めはあってもいいだろ?」


「……………………………………………………………………大変ですね。」


「コノ野郎、長い沈黙は何だよ!!」

「っていうかさ、認めてるあたりからして馬鹿丸出し。」

がふふんとシニカルにディアッカを指差して笑った。
つられてニコルも笑った。


シュンというドアが開く音に3人は気づかずにぎゃーすか騒いでいた。
入ってきた男は、
ザフト軍エリートと謳われる赤服を着ており。
絹糸のような美しい銀髪。
アクアマリンの美しい水色。
美しい顔たち。
そして、こめかみの青筋が浮かびやすい人物。



「貴様ら、何をぎゃんぎゃん吼えている!!!煩いぞ、黙れ!!」

艦内でも、賛否両判、イザークだ。
イザークの声で3人の騒ぎは収まったが…



「イザークの其の声が一番煩いと思いますけど…。」

「同感。」

「何!!?」

「お前、カリカリすんなよ。しまいにゃハゲるぞ。」

ディアッカがそう云うと、ニコルも もしまいには自分から云い出した筈の
ディアッカが笑い出した。

確実に、イザークの頭の上に雷が落ちた瞬間であった。














あの後、3人はイザークの部屋に強制連行され、
絨毯に正座をさせられイザークに見下ろされている光景。
ディアッカと は、大層不服そうな顔をしていた。
ニコルはもちろん短気な妹の止め役として付いてきた。



「今から、貴様らにザフト軍の赤服というものを教えてやる。」

「へいへい、どーでもいいけど、俺腹減ってるんだけど。」

「私語は慎め!!!」

口を挟むディアッカにイザークは激しい言葉を降らせた。
ディアッカは「へいへい」とさっきより諦めに近い声を上げた。
いつもこの二人の口喧嘩はこんなかんじだ。
きっとイザークはカカア天下(?)の見本になれる人だ。
がそう思っている間にイザークは声を上げた。



「いいか、ザフトにおけるクルーゼ隊というものはだなぁ

『まーた始まったよ、イザークのクルーゼ隊赤服洗脳教育。』

『今日は最初っからやってるみたいですし、下手したら
このまま2時間は解放してもらえませんよ。』

『えー、反対。それよりさ、ピアノ弾きに行こうよ!』

『で、でもどうやって…。』

わやなコトを考える双子の妹にビックリする
ニコルをよそに は「まぁ、見ててよ」と云わんばかりににんまり笑った。

はいつも自分が考えないようなコトを思いつきそして行動する。
『ニコル、 のようになっちゃ駄目よ。』
と母親かはたまた親戚の人に云われた気がするが、ニコルは全く其れに
従おうとは思ってもみなかった。
自ら道を切り開き、何の保障も無いのにたくましく歩き続ける。
聞き分けの良いニコルは、そんな が羨ましくてしょうがなかった。



「イザーク。」

「ん?何だ、 。」

「御腹痛い…。」

は御腹を押さえて苦しそうな顔つきでイザークを見上げた。
しかし、イザークは「はっ」と鼻で を笑った。



「はっ、どうせまたお得意の嘘だろ。
もぅ、騙されないからな!」

「何だ、生理かよ。」

「違うわよ、コノ変態!!!」

「この馬鹿者!!!どうして貴様はそういうイヤラシイコトばかり!!!」

本当に大丈夫なのだろうかとニコルは思わずにはいられなかった。
そう思っている矢先に、 はイザークの手を握った。


「イザーク…、このままだったらニコルまでこの御腹の痛みが移っちゃう…!!
だって、あたしたち双子だから…!!!」





(…いや、これはバレると思うんですけど……)






「……な、何だと!!?」





(引っかかるんですか、イザーク!!)



「あーーーー、御腹痛いーーー。
産まれるーーー、裂けるーーーー、えぐれるーーー!!!」

「ど、どうすればいいんだ!!」

バタバタと御腹を押さえて痛みを訴える を見てイザークはおろおろした。
ディアッカにいたっては、笑いころげている。


「ニコル大丈夫か!!!双子というものは大変なんだな!!!」

「えぇ、まだ移ってないみたいです。」
(大変なのは、貴方の頭だと思うんですけど。)

「ど、どうすればいいんだ!!!」

「僕にまかせてください。」

の傍へよりニコルは に手をとって微笑んだ。



「さぁ、 、ピアノ弾きに行きましょう。」

「うん。」

は何事もなかったかのように立ち上がり、ニコルと手を繋いで
イザークの部屋を後にした。
予想もしなかった行動に2人取り残されたイザークとディアッカは声すら出なかった。





数秒後






「何なんだ、あの双子は!!!」

「イザークが説教するからだろ?
いいかげんにしてくれよ、さっきから俺ってば云われまくりじゃん。」

「どういうコトだ?」

「いやぁ、 の尻をついちょっと触ってよ。それでよ」

「あー、もぅいい。ったく、何なんだ、この部隊は!!
赤を着ているならもっとしゃんとしろ、しゃんと!!!」

「オ、オイ!」




















「あははははははっはは!!
イザークのあの顔ったら…!!あはははははははは!!」

「絶対帰ったらイザークかんかんに怒ってますよ。」

「いいっていいって。」

「僕知りませんよ。」

そう云って二人で笑った。
しかし、 の顔がすぐに曇った。



「ニコル」

「はい?」

「……いつまで、一緒にピアノ弾けるかな?」

「何でそんなコト、云うんですか?」

「だって、戦争全然終わらなくて……、友達だって、死んじゃって…。」


「あたし、怖くて……。」

ザフトに来て、 の仲の良い友人の三分の一が戦死している。
毎日が怖い。
今度は誰の名前を聞くのだろうか。
いつ自分の名が呼ばれるのだろうか。



「怖いのは、皆一緒です。僕だって、怖いです。」


「でも、怖がってばっかりじゃ駄目です。
友人のコトを想うのは大切です。
しかしそればっかり考えていると、楽しいこの瞬間さえ分からなくなっちゃいますよ。
それってもったいないですよ。」

「…う、ん………有り難う、ニコル。」






ニコルがピアノを習いはじめて、ニコルに「楽しい?」って尋ねたら
「楽しいですよ、 もしますか?」と云われては興味本位でピアノを始めた。
最初は全く上手くいかず酷いときはすっぽかしたコトもあった。
しかし、ニコルの丁寧な指導のおかげで大分上手くなった。


「一人で弾くのも好きだけど、
あたしは二人で弾くのが大好き。
何て云うんだろー、わーーーって世界が広がるというか…。」

「これですか?」

ニコルが3重のハーモニーを作った。
と合わせて5重のハーモニーだ。
「そうコレ」と は、嬉しそうに微笑んだ。



「ニコル、あたし高いファの音届かないの!
次のフレーズカヴァー宜しく!」

「ちょ、いきなり云わないでくださいよ!!」

「っていっても、普通に間に合ってんじゃん。」

は、高い音苦手ですもんね。」

「あ、笑うなー。あたしだっていつかできるようになるよーっだ!」

「楽しみにしてます。」

「笑いながら云うなって。」

「ニコルは一人で弾くのと二人で弾くのどっちが好き?」

「僕も二人で弾くのが大好きです。」

「ずっとずっと一緒に弾こうね。」

「はい。」








でも、二人長くは続かなかった。
ニコルは、ストライクと戦闘中のアスランの救援に行き二度と帰らなかった。

あの日、自分の身体が千切れそうになる程の痛みをかんじた。

半身がもげるような激しい痛み。

きゅうっと胸を握り潰されそうになった切ない痛み。

あたしは、すぐに「あぁ、ニコルが死んだんだな」って思った。

双子って変なコトまで分かっちゃうんだよね。

昔、ニコルがひざを擦り剥いたときにあたしのひざも痛んだコトは頭の隅に残っていた。







イザークがあたしの部屋に来て、「すまない」と謝り続けた。

「イザークは、悪くないよ」とあたしはイザークを抱きしめた。

あの後、アスラン、ディアッカも行方不明だと云う話しを聴いた。

次々と消えてゆく戦友を聴き続けるイザークが辛くない筈はない。

強く、いられる筈なんてない。

其の夜は、二人で声を押し殺して泣いた。




















月が綺麗に地上に差し込む夜。

ニコルと一緒にピアノを弾いていた部屋は、月が優しく明かりを灯していてくれた。
ピアノの蓋を開け、人差し指を冷たい鍵盤に降ろした。
ポーンというドの音が空間に響いた。
ニコルが「僕も混ぜてくださいよ」といつものように
ドアを開けて入ってくる幻影を見た。

きっと悪い夢だ。
ニコルが死んだなんて。

ほら、ピアノを弾いていれば、きっと彼は来てくれる。


細い指が鍵盤を流れるように綺麗な音を生み出した。
ニコルといつも一緒に弾いていたピアノ曲。




「あたし、高いファの音間に、合わないの、知ってるでしょ……?」


ニコルのカヴァーのところに来た。

ニコルはきっと来てくれる。
いつもの笑顔で「仕方ないですね」っと優しくカヴァーしてくれる。













曲は、止まった…。
















「何で…、何で…ッッ!!!!」

一度も届かなかった筈の高いファに指が届いていたのだ。
ふいに、昔ニコルが に話していたコトを思い出した。


『僕たちは、二人で一人なんですよ。
あ、クサイセリフなんて云わないでください。』



「ニコル……ニ、コル……………




『僕には、僕のいいところがあります。
には、 のいいところがあります。
だから、双子って一つになったら、百にも千にもなるんです。』



ニコル…、ッコル…………ニコルゥゥゥゥ…





『僕は、いなくなるけど…いつも の傍にいます。
嬉しいときも、楽しいときも、辛いときも、泣きたいときも。

だから、僕が死んでも悲しまないでください。
ずっと傍にいるから。』





お兄ちゃーーーー………んッッッ!!!!」




欠けたグラスなんて、元に戻る筈なんて無いのに、
どうして貴方はそんな残酷なコトを云うの?




コメント
ニコル追悼っぽいようで追悼でないかんじでした。
何か微妙です、はい。
双子は私のイメェジなので信じないでください。
ニコルの生ピアノ演奏聴いてみたいですねぇ(何故かズラ口調)
ディアッカは、『グゥレイト!』を云わせたかったんです!!
次は了解を云わせたい(…)
単純なイザ様大好きです。